日本のテレビで本格的にUFOを最初に扱ったのは日本テレビのディレクターだった矢追純一氏で、かの伝説的な深夜番組『11PM』で定期的に特集を組んでいた。それまでUFOは紙媒体での情報が大半だったが、動画の衝撃度はそれよりはるかに大きかった。
その後2時間の特別番組として矢追純一UFOスペシャルは発展していく。UFO研究家の間では彼の番組はすでに信じられていない事実をあたかも真実のように扱っているとして賛否両論だったが、僕はそれなりに日本のUFO信者に満足してもらえる番組を作っていたんじゃないかと思う。エンターテインメントとしての要素も残さなければ番組として存続できないことは理解できるし、その中でいい落としどころを見つけていたと思う。
その後、UFOの番組が少なくなったのにはいろんな理由があるのだろうが、かつてのオウム事件以来「オカルト」に対する自粛ムードが各メディアに普及し、それにともなって視聴者の興味も薄れてしまったのかもしれない。
今UFOの番組を見たいと思ったら、CSだ。ディスカバリーチャンネルやナショナル・ジオグラフィック・チャンネル、そして時々ヒストリー・チャンネルでもUFO番組を流している。どれもアメリカで制作された番組だが、アメリカは日本なんかよりはるかにUFO問題に対する関心が高く、ネタも豊富だ。よって番組も数多く作られている。
しかしチャンネルによってその取り扱いが随分と違うことは注意深く見れば気づくことができる。まずナショナル・ジオグラフィック・チャンネルはもともと会社が老舗のネイチャー雑誌だったこともあり、UFO問題を「自然現象の一部」として取り上げているふしがある。肯定も否定もしないが、事実を事実としてとらえるフェアな番組作りには好感が持てる。内容も深いところまで突っ込んだ取材をしているし、時々「それって肯定してるってこと?」と思わせる時もある。
ところがディスカバリーチャンネルはこの方針とは全く逆だ。最初から「そんなのあるわけがない」という結論ありきの番組づくりになっていて、否定論者の言っていることがさも正しいと言わんばかりの証拠を集めてくる。
ま、それはまだいい。
問題は信じていないくせにしょっちゅうUFO番組を作っていることだ。その手のテーマに人気があることは彼らにも分かっている。しかも番組宣伝はあたかもUFOは実在したと期待させるような文句を並べ、視聴者の関心を誘っているのだが、実際に見てみると煽るどころか全否定に近い。それに内容はうすっぺらい。編集には金がかかっているけど、それだけだ。
たとえば1940年代にニューメキシコ州のロズウェルという町で起きたUFO墜落事件(みんな知ってるのかな?)についてはV2ロケットに猿を乗せた実験の見間違いなど、すっかり手垢にまみれた否定論を一通り述べた挙げ句、UFO信者の集会で盛り上がる人々の様子を流し、小馬鹿にしたような文言で紹介。肯定論者の話を聞いたあと「そういう彼らも現場にはいなかった」ときたもんだ。
そしてほんの少しだけ番組の最後で「そうは言っても100人以上の証言者が一人残らず記憶違いか嘘をついているとは考えられない」というような意味深なコメントとともに「up to you」どう考えるかは君次第だと締めくくるのだ。
ロズウェル事件を全肯定している人はどうかと思うし、あやしい情報も腐るほどあるのだが、説明の付かない議題も数多くある。その存在には触れることなく否定派にとって最もやっかいな壁でもあった「100人以上の証言者」の検証をまったくせずにそんな一言でまとめあげてられてしまっては「偏向」といわれてもしょうがないとは言えないだろうか。
テレビというものは作り手の偏った考えが番組に反映されることは周知の事実だけれども、ディスカバリーチャンネルはUFO番組でももう少しおいしい思いをしたいのなら、センセーショナルなあおり文句ばかりを言うのではなく、もう少しナショナル・ジオグラフィック・チャンネルのニュートラルなスタンスを見習ってもいいのではないかと思う。
しかし今日暑いですね。