ARP ODYSSEYの詳細については「バイヤーズガイド」に書いてしまったのでそちらをご覧いただくとして、ここでは機能的な部分に絞って紹介していきたいと思います。
 本来、この製品はライバル会社であったMoog Music Inc.社のヒット作minimoogの対抗商品として開発されましたが、実はminimoogとは全く違うアプローチから挑戦を挑んでいます。そこが魅力なのですが、どうも市場価値や知名度はminimoogほどではないようです。
 音色的にも出てくるものはminimoogとは明らかに違います。全体的にはもっとシャープな印象があり、「太い」というよりは「ハリのある」という形容詞が似合います。とはいえベースに使っても心地よく鳴りますし、特にパルス波の音がなんともいえず絶妙なネバリを持っています。音色のバリエーションでいえばminimoogなどの比ではありません。モジュレーション系も豊富で、様々な音色が出てきますから、用途は様々です。どんな設定でも使える音が出てくるあたりは、さすが代表作といえます。


機能解説解説
Voltage Controlled Oscillator
(VCO)
VCOは2オシレーター仕様で、ピッチはなんと20Hzから2kHzまで可変式です。ファインピッチもあるのでチューニングは可能ですが、基準音がないためチューナーは必須です。大半のシンセサイザーがオクターブの切り替えスイッチで音の高さの調整をする中、あえて可変式にしているあたりが面白いところです。演奏中に自由にピッチをいじってしまうのもありです。凄い変化が起こります。
さらに特徴的なのはオデッセイの最大の特徴でもあるオシレーターシンクでしょう。2つのオシレーターのピッチを強制的に合わせる際、そのお互いのピッチをわざとずらすことによって新しい倍音が生まれます。このオデッセイの効果は今でもいろんなシンセのプリセットでシミュレーションされていて、明らかにオデッセイとわかるような音色名がついているものです。
もうひとつ、オデッセイは基本的にモノフォニック仕様ですが、2つ鍵盤を同時に押さえると2つのオシレーターに別個の鍵盤のピッチが割り当てられるという構造になっています。オシレーターシンクをかけながら鍵盤を2つ押さえるのも効果として面白いでしょう。
Voltage Controlled Filter
(VCF)
VCFはオーソドックスなローパスフィルターにレゾナンスのないハイパスフィルターが付いています。機能的には特徴がありませんが、シャープなVCOの音に対して効きのいい良質で太いキャラクターといえます。初期のバージョンはMoogの特許を侵害したラダーフィルターが搭載されていますが、その後の自社開発のフィルターに交換してからも、音色的には非常にすばらしいものがあります。またキーボードのCVをモジュレーション信号としても使用できるなど、モジュレーションのアサインの自由度はかなりのものです。
Voltage Controlled Amplifier
(VCA)
特に書くことはありません。地味です。SNがちょっと悪いかも。「VCA GAIN」というボリュームがあり、これが何をやるものなのかは分かっていますが、何に使えばいいのか、いまだに不明です。このボリュームをあげると音が止まらなくなる、というものです。わざわざそんなボリュームをどうして付けたのでしょうか?
Envelope Generator
(EG)
エンベロープはARタイプとADSRタイプの2つが付いています。どちらをVCAに送るかも選べるスイッチがあります。Odysseyにはマスターボリュームがないので、EGをどれくらいの量でVCAに送るかを決めるボリュームがマスターボリュームの役目を果たしています(なんじゃそれ)
Noise Generator ノイズジェネレーターには一般的なホワイトの他にピンクノイズも付いています。Odysseyが効果音が得意といわれる理由はここにあるかもしれません。
Low Frequency Oscillator
(LFO)
LFOはVCO、VCFに送ることが出来るほか、キーボードのトリガー信号としてもアサインできます。鍵盤を押さなくても周期的に音を出すことが出来ます。
Sample & Hold
(S&H)
Odysseyには立派なサンプル&ホールドが付いています。
Audio Mixer 2つのVCOとノイズをミックスするミキサーですが、VCOの波形(のこぎり波とパルス波)はこのミキサー部分で切り替えるようになっています。全部あげきると気持ちいい飽和感があり、アナログならではの音色が作れます。
Transpose Switch パネル左にある特徴的なスイッチで、グラグラ感が心許ないかんじです。2オクターブ前後します。
Pitch Bend これだけ回転式のボリュームを使っていますが、変化の幅はあまり広くありません。後期のモデルではPPCと呼ばれる指の押す圧力でモジュレーションのかかり具合が変えられるパッドが代わりに付きます。