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Q.初めてヴィンテージ・シンセサイザーを買うのですが、何が必要ですか?

A 

家で単に音が聞ければいい場合

国産のシンセはたいていヘッドホン端子があるので、そこにヘッドホンをさせば音はモニターできます。海外製、特にヴィンテージものにはヘッドホン端子がないほうが普通だったりもします。その場合は小型のミキサーなどを買いましょう。

ライブで使う場合

 キーボードアンプ。シンセを直接PHONE - PHONEのケーブルで接続して大きな音が出せるアンプです。しかしライブハウスなどでは"DI"という小さな機械を使ってPAコンソールに直接送ってしまうことが多いため、キーボードアンプを持ち込む人はあまりいません。お気に入りのDIを自分で買って持ち込む人はまれにいます。ちなみにDIとはシンセなどのアンバランス出力の音源をバランス出力に変換して遠くまでケーブルを引き回してもノイズが乗りにくい状態にしてくれる装置のことです。ディーアイといいますが、ダイレクトボックスという時もあります。
サウンドハウスのDI

自宅でレコーディングの場合

 レコーディングはPCか専用のレコーダーを使われると思いますが、レコーダーがあればケーブル以外は必要ありません。室内でケーブルを長く引き回すなら前述のDIがあったほうがいいです。DIをかませた場合はそのDIの出力をキャノン - キャノンのケーブルを使ってマイク入力にさします。
 PCの場合も基本的には何も必要ありません。問題はPCからの音を何から出すかなんですが、家にあるステレオコンポに直接つなぐ手もなくはないです。おそらくそうしても音は出ます。家庭用のステレオコンポにもLINE INであるとかAUX INなんていう端子が用意されていて、そこにつなげばシンセサイザーの音が出ますが、基本的に受け手の機械にインプットのレベルを調整できるものはほとんどないと思います。したがってシンセサイザー側のマスターボリュームで調整することになりますが、これは音響的にもベストとはいえませんし、頼りない感じがします。
 こんな時には安くてもいいからミキサーを買うべきです。
 今ではミキサーもずいぶんと安くなり、1万円以内のものでさえそこそこの音が出ますので、こういうものをもっておいても損はありません(友達がシンセを持ってきても一緒に鳴らすことが出来ますしね!)。ミキサーがあれば複数の機材を一度に鳴らすことも出来るほか、EQ付きのミキサーを買えばシンセサイザーでは補完できない音色の調整がミキサー側で可能になります。
安めのミキサー一覧(サウンドハウス)

オーディオ・ケーブル
 
 買うときには端子の形状と長さを買う前に確かめておいてください。通常、シンセサイザー側の出力端子は「PHONE」と呼ばれている標準プラグであることが多いですが、中には他のものもあります。
 ケーブルはギター用として売られているものでかまいませんが、厳密に言えばキーボード用として売られているもののほうが音がいいかもしれません。音質は値段にだいたい比例しますが、安くてもいいものも結構あります。この話は奥が深いのでここではしません。Canareのギターケーブル(GS6)はキーボードに使っても普通にいいです。

キーボード・スタンド

 最期に付け加えますが、鍵盤のあるシンセサイザーの場合、置く台についても考えた方がいいと思います。キーボードスタンドを買う場合、Ultimateのスタンドのように真ん中に軸のあるタイプを家で使う場合には足下に機材が置けないと言う欠点があります。狭い部屋にとって鍵盤の下のデッドスペースは貴重です。下にものが置けそうなスタンドを置くのがいいでしょう。エレクタ(金属製のパイプで組むラック)やスチール棚をスタンド代わりにしている人も結構います。高さも結構変えられるのでこのほうがうまくレイアウトできるかもしれません。ドイツのK&M製のものが個人的にはお薦めです。国産より作りは雑ですが、しっかりしています。

Q.ヴィンテージではないですが、現行のアナログ・シンセサイザーを買おうと思っています。こういうシンセサイザーはヴィンテージと比べてどうなんですか?

A.近年のアナログ・シンセ・ブームはヴィンテージ回帰という部分と、アナログの技術を最新の技術に融合させてものがあります。とにかく本当のアナログ・シンセの音は、やはりデジタルでは完全に再現できないという部分が再評価されているんだと思います。現行のアナログ・シンセは70年代や80年代のアナログ・シンセが持っているフィーリングや機能を完全に再現しようとしたものや、それらをリスペクトしながらも全く新しいアナログ・シンセを創りだそうとしたものがありますが、現在メーカーが手にできる電子パーツの多くは30年前のものより小型で高性能で壊れにくいものがほとんどです。つまり小さくて安定していて価格も安くなってます。ですが、古いパーツにしかなかった音の質感、不安定さから生まれる味わいに関しては少々失われているということは否定できません。ですが、デジタルの持つ冷たさからは見事に開放されており、アナログ特有の粘り、暴れたモジュレーションのフィーリングは健在です。ヴィンテージの質感ばかりがいいシンセの条件でないことは言うまでもありませんが、ヴィンテージっぽい質感がいいと感じることも多いのは確かです。
 
 現行品には音響特性という面ではヴィンテージの何倍も優れた製品があります。ヴィンテージの風合いを持った製品もあり実用性という面で進化した機能を持っています。またそのままMIDIやUSBで動かせられるものも多く、小型で軽い機材が増えています。ヴィンテージは何かと重くて持ち運びに手間のかかるものが多く、チューニングもしょっちゅうやらないといけない不安定な機種が多いです。故障したときもやっかいで、KORGやROLANDなどの製品でも古いものはメーカーも修理を受けてくれません。

Q.ヴィンテージ・シンセはどこで買えばいいですか?

A.販売店でいえば有名なのは東京・原宿の駅前、竹下通りの?野家の上にあるFIVE G、あるいは東京・渋谷のタワレコの斜め向かいにあるえちごやミュージックは専門のプロショップとして有名です。
 FIVE Gさんは比較的広めの店舗スペースで明るい窓があり開放感があります。所狭しと新旧とりまぜたシンセサイザーばかりがディスプレイされていて、店内でリペアもやっています。
 えちごやさんも古くからあるお店ですが、現在の店舗はビルの一室でやってらっしゃる感じです。始めて行った方は入りづらい雰囲気もありますがなんてことはありません。時々掘り出し物もあるので行ってみるといいですよ。


ヴィンテージ・シンセサイザーは故障の確率が高いので、自社でリペアマンを揃えてサポートしてくれるなら少々高くてもいいんじゃないかと個人的に思います。半年の保証期間を付けてくれる店なんかもあります。他にもショップはたくさんありますが、売りっぱなしの店では慎重に買うかどうか考えてください。とにかくヴィンテージ・シンセを買って何年も壊れずに無事で動き続けるなんてことはないと思っていたほうがいいでしょう。かならず修理するときが来ますのでその時のこと考えておくべきです。

 それでもサポートはいらないから安くゲットしたいという方はヤフオクが断然おすすめ。知り合いからもらったけど使い方が分からないから壊れているかどうかもわかりません、みたいな人が出品しているケースもあります。こういう場合も含め、出品者の多くは素人さんなので、機能の全部が動作するか確認していないケースも多く、完動品とうたいながらも実際には機能の一部が動かなかったなどのトラブルも数多くあります。しかし店で売られていることを考えれば価格はヘタをすれば半額以下、しかも数も多いです。うまく買えばとんでもなくいい掘り出し物に出会えます。

Q.ヴィンテージ・シンセの修理はいくらくらいかかるものですか?

A.僕もあちこちに修理を出した経験がないのであくまで人から聴いた情報や自分の体験を元に話すしかないのですが、だいたいどこでも技術料プラス修理パーツ代という計算のようです。技術料は当然ものによって違ってくるのでしょうが、だいたい7000〜15000円程度。パーツ代はピンキリですが、トランジスタやコンデンサを交換する程度なら数百円〜数千円で済み、当時は定番でありながら現在では製造されていないICなどが壊れた場合は1個10000円なんてこともあります。Prophet 5の鍵盤はPPGなどいくつかの製品に採用されているOEM品ですが、接触不良や固着といった持病があります。これを修復するキットもヨーロッパなどで販売されていますが業者さんに交換してもらえば15000円〜25000円くらいはかかります。
 ちなみに修理期間はお店によってさまざまです。1週間でやってくれたこともありますし2ヶ月くらい待たされたことも過去にありました。修理屋さんは預かったシンセサイザーをまず故障箇所を確認しながら何が壊れているのかを目で見てそしてあやしそうな部分を測定しながら壊れているパーツを探し出していきます。時には複数の部品が壊れていることもあり、特定に時間がかかることもあります。また修理部品の在庫がない場合は他のもので代用したり、どこからか入手したり、壊れた同機種から抜いてきたり、いろいろやらなければいけないことがあるわけです。
 海外ではヴィンテージのシンセサイザーの補修パーツを扱っている店がインターネットでたくさん見つかります。手に入れたシンセサイザーの名前で検索をかけると、改造キットやパーツ、メンテナンス・マニュアルなどを持っているサイトに出会えるかも知れません。
 たとえばPPG WAVE 2.3の場合、内部のOSを書き換え、MIDIシステムエクスクルーシヴ情報を出力できるようにしたアップグレードROMを独自に制作して販売しているメーカーや、ユーザーが集まるメーリングリストもあります。こういうところから修理の頼める海外のリペアマンの連絡先がわかる場合もあります。しかし海外にまで修理を頼まなければいけないような機種はごく一部の特殊なものだけで、殆どのケースは国内で対応できるでしょう。最近ではクリエーター・ゼロさんやオープンエアースタジオさん、ステディワークスさんえちごやミュージックさんのように修理だけでも請け負ってくれる業者さんも存在します。KORGの古い製品でしたらコルテックさんも対応してくれています。別の場所で前述しましたが、KORG、ROLAND、YAMAHAなど、現在もあるメーカーでは修理部品保有期間を過ぎた製品は積極的に修理を受けてくれません。80年代の機種などは相談してみる価値はありますが、殆どの場合修理を断られると思います。
 ヴィンテージ・シンセイザーを専門に販売する店の中には自社でリペア技術者を揃えているところもありますが、そういう販売店では自分の店で買ってくれたシンセサイザーの修理しか受けてくれないということもあります。

Q.ソフト・シンセと本物ってそんなに違いますか?

A.ノーともイエスともいえます。
 現在までにアナログ・モデリング技術によってソフト・シンセとして生まれ変わったシンセサイザーとしては、TB-303、Prophet 5、PPG WAVE、DX-7など数えればきりがないほどありますが、どれも単品で聴き比べた場合「見分けが付かない」というほどに似ているといえば少し言い過ぎといえます。しかしその特徴は本当によく捉えていて、どれもそれっぽい音色が得られます。そのそっくりさには誰もが感心できることと思います。比べなければわからないレベルです。
 あれほど似ているのであれば、オケの中でこっそり使う分には本物だかどうだかわからないような使い方は十分にできるでしょうし、音色によっては本物を使うのがばからしいくらいいい結果が生まれることもあるでしょう。しかし、考え方を変えれば、本物が持っている生々しさ、ひずみ方、そしてフィジカルなインターフェイスから生まれる感覚的なフレージングなどはやはり本物でないとどうしても生まれてこないのは当然ともいえます。
 たとえばPPGを例にとって挙げると、PPG WAVE2.V(ソフト・シンセ)と本物PPG WAV2.3は驚くほど音色が似ています。それもそのはず、オシレーターに使われているアルゴリズムをそのままソフトに移植しているのです。
 じゃ、そっくりそのまんまかといえば、実はそんなことは全然ありません。PPGのオシレーターは確かにデジタルですが、それをアナログに変換しているA/Dコンバーター、その信号を増幅しているオペアンプやフィルターなどは絶妙な電子回路で構成されていて、そのニュアンスはプロ・オーディオの耳に耐えうる繊細さを残しています。またキーが高くなるとエイリアシングノイズがモロにきこえますし、短音で弾いたときと和音で弾いたときのひずみ感が違ったり、鍵盤の微妙な接触抵抗で音色が変わったり、電源を入れた直後と1時間後でもずいぶんと聞こえ方が変化するのは楽器としてPPGが「生きている」ほかになりません。このようなニュアンスをソフト・シンセは未だ体現できていないのが正直なところであり、そこが重要と考えるかとるに足らない差と考えるかは個人によって違うわけです。
 ソフトシンセばかりで打ち込んだ曲にハードウエアシンセの音を入れると、その音だけが前に出てすごい存在感になって聞こえることが良くあります。それを一度でも経験するとやっぱりハードってすごいなと考えることになると思いますけどね。
 現にProphet 5のモデリング版Pro52がPro53にバージョンアップした際も、「よりいい音になった」とうたっています。つまりソフト・シンセにはまだまだ改良すべき要素が多分に隠されていて、本物に近づく努力が必要だということをこの事実が示しているとも言えるのです。そういう意味でソフトシンセの世界はまだまだ発展途上だとも言えます。
 とはいえ近年ではiPadのアプリなどでもデジタル・ソフト・シンセが出てくるようになりましたが、なかなかいい音のするものがあります。ソフトにはソフトの良さがあるので最近は差別なくチェックしてます。

Q.外国製のシンセサイザーを買ったところ、電圧が117Vとなっています。そのまま100Vのコンセントに差して問題ありませんか?

A.どこかのサイトに書かれていた情報をそのまま引用させてもらうと、国内の100V環境でさえ場所によって90Vのところもあれば105Vのところもあるので、117Vくらいの電圧であれば100Vでいうところの誤差の範囲。なので100Vで使えます、ということです。しかしこう書いておきながら、この情報はあまり正確とは言えません。
 動くか動かないかでいえば、117Vの製品を100Vで動作させたとしても、殆どの場合はとりあえずは動くでしょう。でもシンセサイザーは楽器だということを忘れないでください。117Vの機器を117Vで動作させた時と100Vで動作させて時の音に違いがないなんて保証はどこにもないのです。たいていの場合117Vで動作させてほうがつややかで歪みの少ない音がするはずです。
 例えば海外仕様のNord Leadを100Vで動作させた場合、SNが悪く、歪みっぽい、頼りない音が出ます(最近のClavia製品は100V仕様で販売されているため大丈夫)。機種によってはハムノイズが出たりもします。マイコンを内蔵しているシンセサイザーでは動かなかったり、誤動作をしたり、最悪の場合は回路をいためることにもなりかねません。日本製は比較的電圧の変動にたえうる製品が多いのですが、やはり電圧はちゃんと確認して正しいものを供給するべきです。

 またこういうたとえ話でよく国内でも「90Vくらいまで下がっているところもある」という話を耳にしますが、正直なところ、僕は未だにそんなに電気事情の悪い場所に遭遇したことはありません。たいてい100〜104Vくらいの間でうろうろしていることが多いです。ちょっと下がることを考えて102〜103Vに設定されていることのほうが多いです。たぶん90Vまで下がっている場所でシンセやアンプを鳴らしてもあまりいい音が出ないと思います。

 皆さんの持っている機種が何ボルトで動作するのかはたいていリアパネルの電源ケーブルの刺さっているあたりに印刷されているはずです。「Power Rating 120V〜」と書かれていれば120Vで動作すると言うことです。115V、117V、120Vなど、似た電圧で書かれているものは基本的に「117V動作」としてまとめて考えてさしつかえありません。なんで微妙に書き方が違うのかは実は僕もよくわかっていませんが、アメリカ国内でも混在しているようです。中には100〜240Vなどと書かれているものがありますが、これなら100でも117でも動作します。間違っても100Vの機器に117Vを入れないでください。よく電圧が高いほうが音がいいなんていいますが、それは機器に合わない電圧を入れてもいいという話ではないからです。100Vには100V、117Vには117Vが原則です。いたずらに電圧を上げてもいい音になったりはしません。

 ちなみに117V仕様の製品を持っている場合は「ステップアップトランス」というものを買います。日本国内の電圧は100Vですが、これは世界の中で最も低い電圧を使っています。海外製品を使う場合は電圧を「上げる」方向にもっていく必要があるわけです。それが「ステップアップトランス」です。ステップアップトランスを壁コンセントに差し込むと、ステップアップトランスの差し込み口からは117Vが取り出せます。
 よく海外旅行用品の売り場で見かけるあれかな? と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、日本の海外旅行用品売り場で売られている物は、100V用の電気製品を海外で使うためのものですから、それは「ステップダウントランス」です。ステップアップトランスはそういう店で売っていないため、ちょっとした特別な場所で買う必要があります。
 当然、ビンテージ・シンセの専門店ではステップアップトランスを販売していますが、そこそこいい製品を置いていたりして、4000円〜10000円くらいの商品が在庫としてあります。しかし東京近郊に住んでいる方であれば秋葉原に行ったり、大阪にお住まいの方なら日本橋の電気街に行けばもうちょっと選択肢があり、安価なステップアップトランスも入手できます。
 特に秋葉原には電源トランスの専門店が何軒かあり、当然ステップアップトランスも各種取りそろえています。通常は110V前後にアップさせるものか、240V程度にアップさせる物かがあり、電圧可変式の「スライダック」などはもっと高価です。
 どれにしていいか迷うくらいいろんなトランスが置いてある店では、お店の人に相談すると「何に使うの?」と質問され、「シンセサイザー」というとちょっと困った顔をされることがよくあります。それはシンセのためにステップアップトランスを探しに来ている人は全体から見ればごく少数派だからです。でもオーディオに良く使われている物ということで伝えると、なるほどとばかりにいろいろ教えてくれるはずです。平均3500円前後で安い物なら2000円台でもあります。値段は扱える電流の大きさによって違いがあります。シンセサイザー1台だけなら300VAどころか100VAも必要ありません。秋葉原の専門店は駅前の高架下のごちゃごちゃしたパーツ屋さんの並びにもあります。
 ただし、あまりヘンなものを買うと、音に影響が出ないとも限りません。性能のいいトランスは当然いい音を出してくれますので、財布の中身とも相談してグレードを決めてみてください。

最後に僕のお薦めのトランス屋さんをいくつか紹介しておきます。

ノグチトランス(秋葉原)オリジナル製品の品質が高いです。
春日無線変圧器(秋葉原)老舗の店です。
サウンドハウス(通販専門)専門店ではないですがいろいろ売っています。

Electro Harmonix EHU-600は楽器用として販売されているステップアップトランスです。高いですがものはいいです。

Q.僕のシンセサイザーは持ち運びのケースがないのですが、ハードケースを作るといくらくらいかかりますか?

A.最近の鍵盤ものはサイズがどれも似ているため、汎用のケースに入ってしまうことがよくあります。SKBやGATORなどの海外メーカーが安価でいいケースを作っていますので、まずはそういうものでサイズの合うものがないか探してみるべきです。汎用ケースであればオリジナルケースよりも遙かに安い値段で手に入ります。
 しかしビンテージものには各機種が思い思いのサイズに作られていて規格に合わないものが多いため、汎用のケースには入らないことがままあります。
 新品のハードケースの場合、オーダーで作ってもらえば小型の物で3〜6万円、61鍵盤のもので、4〜12万円くらいでしょうか(すごくおおざっぱな金額を言っています)。もっとかかる場合もありえますが、たまに持ち出す程度なら汎用のソフトケースという手もあります。
 また、お持ちのシンセがMinimoogのようにそこそこ人気のある有名な機種でしたら、ケースだけ中古で出る場合もあります。ケースが中古で入ってきたら教えてくれるよう予約を受け付けてくれる店もあるようです(どこまで信用できるかは不明)。中古なら1万円台で買えるかも知れませんが、状態のいいものは期待できないうえに競争率も高いです(ケースの寿命は案外短い)。
 カスタムオーダーのケース屋さんで有名なのは国内ではアルモアDuplexなどですが、Pulseさんも結構おすすめ。小さなメーカーでも少し安い値段で作ってくれるところもあるようですから、楽器屋さんに相談してみるのもいいかも知れません。いずれにしてもカスタムオーダーの場合、シンセの採寸をしなければならないでしょう。
 最近はメーカーが持ち運びに耐えられる段ボールよりも強度の高い樹脂製ケースを作ってくれるメーカーもあります。自分たちの自動車に乗せてちょっと離れた場所まで運ぶようでしたらこういう簡易型のケースで十分かも知れません。値段も通常のハードケースよりは安いでしょう。

Q.MIDIの付いていないシンセサイザーをMIDIで動かすにはどうすればいいですか?

「CV IN / GATE IN(もしくはTRIG IN)」が付いていれば、MIDI to CVコンバーターを買うことでCubaseなどで動かすことができます。ただ、そのようなインプット端子はポリフォニック・シンセサイザー(和音が出るシンセ)には付いていない物がほとんどです。ポリフォニックの場合、構造上中に同じシンセサイザーが何台も入っています。CV/GATEは一度に1音しか送受信できませんから、5音ポリフォニックなら5つのCV/GATEインプットが必要になり、複雑になります。このような理由から、ポリフォニックはMIDIコントロールは難しくなっています。<BR>
ただしRolandのJuno 60やJupiter 8などが採用している「DCB」端子のあるシンセサイザーではポリフォニックのコントロールが可能です。DCBはローランドの一部の製品にしか付いていない、和音でシーケンサーから演奏させることができる規格ですが、MIDIとDCBを変換する装置があればMIDIで動きます。Kenton社から発売されていた Pro4というイギリス製のMIDI to CVコンバーターには標準でMIDI to DCB機能が搭載されていました(残念ながらPro-4はラインナップからはずれてしまいました。しかし現行機種のPRO-2000 MKIIにDCBオプションを買い足せばDCB機器が動かせます。またPRO-DCBというDCB専用インターフェイスもあります)。値段的に見てもやや高級な機種ですが、ピッチの安定性や機能性においてKenton製品はおすすめできます。Rolandからも同様の機能を持ったMD-8というインターフェイスが過去に発売されていましたが現在は生産されていません。
 またKenton社ではKADIと呼ばれる独自のインターフェイスによってDCBのようなコントロールをする物があります。KADIはシンセサイザー本体に「KADI改造」をほどこして基板を埋め込み、これをKADI対応インターフェイスに接続して独自にコントロールするものです。他社のものと互換性がないため普及はしていませんが、KADI改造は比較的安価で安定した性能を持っています。改造はキットになっており、電子工作の経験者なら比較的簡単に行えるようになっているのですが、本体に穴を開ける工作が必要で、そこまでやる人は意外と少ないです。


 話をモノフォニックに戻しますと、MIDI to CVコンバーターさえあればたいていのものはMIDIで動かせますが、問題はCVの方式です。世の中に出回っているアナログ・シンセサイザーの大半はOCT/V(1オクターブあがることにCVの電圧が1ボルトあがる方式)を採用しているのに対し、KORG MSシリーズなど一部のシンセサイザーではHz/V(1オクターブあがるごとに電圧が倍になる)を採用しています。このため、多くのMIDI to CVインターフェイスはOCT/Vのみをサポートしている場合が多いのです。Pro4でさえHz/Vはオプションのボードで対応していましたが、前述の現行機種PRO-200 MKIIと下位機種のPRO-SOLO MKIIでは標準で両方式のCVに対応しています。また最近は国内での取り扱いがあるかどうか分からないのですが、Doepfer MCV4という小型の製品もあります。これはOCT/V専用です。

わずか99ドルでMIDI改造できるキットを売っているサイトを見つけました。技術をお持ちの方はトライしてみるのもいいかもしれません。→Synhouse

Q.内蔵メモリの電池はどれくらいで交換しなければならないのですか?

 基本的に音色メモリのできるシンセサイザーには電源を切った後でも作った音色が消えないようにバックアップ電池を搭載しています。ヴィンテージ・シンセサイザーのほとんどが作った音をストアできるような気の利いた機能を持ち合わせていませんでしたが、Prophet 5, Jupiter 8, PPG Wave, Korg Polysix などの高級機種には少なからずメモリー機能を持っているものがあります。ただそのどれもが中をあけない限りバッテリー交換もできないうえに、バッテリーの消耗を表示する機能も持ち合わせていません。このため、定期的にバッテリー交換する必要があります。
 バッテリーを使った充電の方式には何種類かあるのですが、本体の電源を入れている間にこっそりと充電するニッカド式や、10年近く持つリチウムなどがポピュラーで、中には9V電池を使うものもあります。リチウム電池は持ちがよく、長年交換しなくてもいいのですが、値段はわりと高いもので、秋葉原で買っても2000円以上は余裕でします。しかもメーカーによっては特殊な物を使っている場合もあり、リペアマンに頼んだ方が無難です。バッテリーもソケットにはまっているだけなら交換も簡単ですが、基板に直付けされているものも多く、交換にははんだごてを使う必要のあるものもあります。
 ニッカドにも寿命があって、寿命はリチウムより短く時々通電する必要もあるなど何かとやっかいです。長い間寿命が来てもほったらかしておくと基板の上で液漏れを起こしてしまうこともあります。
 僕のPPGの場合は充電式電池を採用していたため、長い間通電していないとメモリが消えたり、寿命も短く不安定なので、リチウム電池と交換してもらいました。PPGではよくある話のようです。もちろんその場合は回路に若干の改造が必要になり、その分費用がかかります。かと思えばとてもポピュラーなCR2032のようなボタン電池が入っている機種もあります。これなら部品は安くてに入ります。
 とにかくリチウムが10年持つと言ってもヴィンテージ・シンセサイザーにとってはもはやとっくの昔にバッテリーの寿命が切れているわけです。インターネット・オークションで落としたものなどはリチウム電池の交換が必要な場合がしばしば見受けられるようです。基板の上で電池が液漏れを起こして朽ち果てているなんてトラブルもあります。

Q.TR-808やTB-303をMIDI機器と同期させることができますか?

 TR-808やTB-303など、MIDI以前に発売されたリズムマシーンやシーケンサーにはたいてい「DIN SYNC(ディンシンク)」と呼ばれる外部同期用の端子が用意されています。この接続ポートはMIDIのものとまったく同じ形(DIN 5pin)をしていますが、ほかのMIDI機器をこことつないでも動きません。
DIN SYNCとMIDIの同期信号(MIDI CLOCK)との間にはそのままでは互換性がありません。中を流れている信号は全く別物です。
 このDIN SYNCしか付いていない古い機材を今時のMIDI搭載の装置と同期させるためには「MIDI to DIN」のコンバーターを買う必要があります。これはMIDI機器から送信される同期信号(MIDI CLOCK)をDIN SYNCのINPUTへ突っ込める信号に変換してくれる変換器です。日本でも手に入りやすいものとしてはKenton PRO-KADIやPRO-2000 MKII、PRO-SOLO MKII、Doepfer MSY2(写真)など数は少なくともコンバータが何種類かあります。これを使ってMIDI CLOCKをDIN SYNCへ変換し、TR-808などをテンポに同期させることができます(PRO-KADIは24のみ対応)。www.dinsync.comというサイトでも多機能な自作製品が販売されています。また既に生産中止されていますが、国産KORGからKMS-30という優秀なコンバーターが出ていました。中古で探せるならこれも選択肢としてあります。
 ややこしいことに、DIN SYNCの同期信号にはいくつかの種類があります。よく使われるものは24と48というタイプで、Roland製品は24、Korg製品は48というふうに、メーカーによって採用している方式が違います。海外製品には96など他のものも結構あります。正しく同期するためにはコンバーターを適切に設定する必要があります(たいていスイッチで切り替えるだけです)。
 なおDIN SYNCで使われるケーブルはMIDIとコネクター形状が同じであればMIDIケーブルが流用できます。
 規格についてろくに勉強していない僕のような人間にも手軽に使えるのがこのDIN SYNCですが、経験的なものからいわせていただくとDIN SYNCは結構同期がはずれます(ずれるってことです)。MIDIクロックもインターフェイスによっては同期がはずれたり、ずれたまま付いてきたり、同期のタイミングが微妙に揺れたりすることを何度も経験しましたが、DIN SYNCはもっと大胆にずれてしまうことが過去にありました。回路自体の不安定要素が原因だったのかもしれませんが、あまり信用できないシンク方法だったという印象が今も強く残っています。とはいってもこれしか付いていないものが多いわけですから使うしかないというのが現実なのです。ともかく同期には常に慎重になったほうがいいでしょう。コネクター接点のクリーニングにも気を遣った方がいいです。びびらせるようなことを書きましたがたいていは心配なく同期してくれると思います。
 ちなみにDIN SYNCもMIDI CLOCKもソングポジション(曲中の位置情報)を持たない信号ですので、曲の途中から同期させることが出来ません。常に曲のアタマから同期をスタートさせる必要があります。また同期させる場合は曲のアタマに同期が正しく整合するまでの時間稼ぎのために何小節か余白をもうけておくのが常套手段です(特に最初の1〜2小節、特に第一音目はテンポが揺れますので無音部分が最低でも2小節は必要。できれば4小節くらいいれておきましょう)。
 余談になりますが、以前Sequencial CircuitsのDrumTraksというドラムマシンを同期させるのに苦労した経験があります。このマシンにはMIDIが付いていましたが、MIDI CLOCKの送受信ができず、同期をDIN SYNCに頼らざるを得なかったのですが、なんとその端子がPHONEなのです(Linnも同じ)。これは初期のサンプリングドラムマシンによくみられます。クロックが入ってくると動き出すという単純なもので、DIN 5pinで扱われるSTART/STOP用の信号が別経路で送信されるような複雑な動きはしていません。現在はCLOCK端子を持ったインターフェイスもずいぶんと増えました。
 たまたまDIN SYNCからクロックとSTART/STOPの信号を取り出し、DrumTraks用の同期信号に変換するための回路図が何かの雑誌に掲載されていて、それをもとに自作しました。それが何かを間違ったのか信号のレベルが大きすぎて、信号音が微妙にオーディオ信号側に漏れるという問題があったのですが、無事にこれで同期することができた記憶があります。
 最後にDrumTraksについてですが、試したことはないものの、インターフェイスなしでPCのシーケンサーソフトと同期させる方法がこのサイトで紹介されています。

Q.シンセサイザーを運び出したいのですが、適当な輸送手段が見つかりません。

A. これは自動車がなくても生活の出来る場所にお住まいで、自動車を持っていない僕のような方限定の情報です。
 大手の宅配業者に集荷を依頼すると「荷物は何ですか?」ときかれます。その際「シンセサイザーです」といえば、電話に出た年輩の女性はたいていとてつもない装置を想像してしまい、「そういったものは運べないんですよ」と断られてしまうこともよくあります。ところが同じ会社でも人によってこの対応は違っていて、結局のところ、シンセサイザーを扱ってくれるかどうかといったはっきりとしたガイドラインがないためにいい加減な応対ですまされてしまうものです。
 遠くへ運ぶ場合、自家用車で自分で運ぶ以外は運送会社に依頼せざるを得ませんが、経験上、どちらかといえば個人宅配としてはマイナーな業者(無名というわけではなく)の方が仕事を受けてくれ、値段も若干安いような気がします。いずれにしても大きな荷物ですからそれなりに費用はかかり、フライトケースに入ったPPGで3000〜5000円はかかったことがあります。
 一方、東京都内のように、タクシーでも動けるような距離であれば、ワゴンタクシーを手配するより安価で安心な方法があります。それは「赤帽」です。じつは僕も仕事でよく赤帽さんを利用して、機材をあちこちのスタジオに運んでいましたが、自分自身も同乗させてくれるほか、荷物の積み下ろしも当然手伝ってくれますのでタクシーなんかより全然便利です。意外と知られていませんが、プロのエンジニア、ミュージシャンでも安価で駐車場の心配もないこの赤帽を利用している人は多く、僕の利用する赤帽さんの会社(フランチャイズだからいろんな営業所がある)も都内の音楽関係者がよく利用しているようです。
(ちなみに僕の場合は都内16kmの距離を4500円くらいで運んでくれます。過去に日本中の赤帽を仕切っているフリーダイアルに電話して出てきた年配の女性に見積もりをとらせたら、何を勘違いしたのかかなりトンチンカンな高い値段を出してきました。そういうことはよくあるみたいなので、とりあえずサービスの良さそうなところを何軒か見積もってもらって赤帽でなくても安くやってくれるところを探すべきです。僕のお願いしている赤帽さんは結構使えるんですけどね)。
 この情報は僕個人が知っている範囲で書いたものですので、もしかするともっといい方法があるかもしれません。そういう情報をご存じの方はぜひメールでお知らせください。よろしくお願いします。

Q.楽器屋さんが店内で使っている、天井と床でポールを突っ張らせるタイプのキーボードスタンドはどこのメーカーのものですか?

A. 楽器屋さんでは見るのに、インターネットで探しても全然出てこないと思っている方は多いのではないでしょうか。あれはイタリアのManfrotto(マンフロット)社のAutopole(オートポール)という製品です。マンフロットは楽器の世界よりもカメラのプロ用三脚メーカーとして有名で、オートポールもどちらかといえば写真撮影スタジオのバックのロール紙をぶら下げるポールとして普及しています。
 天井と床で突っ張らせたポールを軸に、いろんなものが渡せるよう、オプション金具がたくさん出ており、その中で楽器を乗せられるスタンドのオプションがあったわけです。「あった」という過去形なのは、実はオートポールは現行商品であるにもかかわらず、現在では楽器用のオプションの製造をやめってしまっているわけです。今から10年ほど前まで、マンフロットの楽器スタンドの代理店はコルグがやっていましたが現在はやめており、オートポールの柱だけが東急ハンズや写真材料店の三脚売り場で時折見かける程度になってしまいました。
 しかし生産中止とはいえ、垂直にキーボードを乗せられるのは狭い部屋の中でも非常にありがたいわけで、よその製品で同じようなものがないこともあって、中古で探している人も多いと思います(しかしなかなか出回りません)。
 構成は以下の通りです。

型番
当時の定価
説明
076
1?,???
パイプ経40/45mm 長さ150〜270cm
032
17,900
パイプ経40/45mm 長さ210〜370cm
JB-135
8,000
スタンドをとめるための黒い板(2枚組)
KSH
13,000
76鍵盤用スタンド
KSHW
17,000
88鍵盤用スタンド
KSR
2,000
鍵盤を乗せる部分のプラスチック
035
5,500
鍵盤をポールに固定するクランプ

現在、オートポールの太さは下部が45mmで、ミニオートポールが35mmです。このミニオートポールであれば、よく中古で見かける同社の2段あるいは3段のキーボードスタンド(横から見ると3角形にポールが組まれるタイプ)と直径が同じため、それからはずしたキーボード台になるパーツがそのまま取り付けられそうです。このスタンドは9000円くらいで中古で入手できます。まだ試してはいませんが、オートポールも中古で探せばかなり安価な突っ張りキーボードスタンドができそうです。ちなみにオートポールの中古は楽器店で探しても殆ど手に入りません。これはプロ用の写真機材を扱っているお店で探せます。

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