Author Archives: 林田 涼太
またデザイン変更。
丙午(ひのえうま)
石田徹也
以前から気になっていた画家がいて、いつか作品を見たいと思っていたのですが、東京でほとんど見る機会がなかった石田徹也。その個展が都内では初めて大々的に開かれるというので練馬区立美術館へ行ってきました。
デザイン変更
大琳派展
琳派、行ってきました。もちろん目玉は風神雷神図屏風。俵屋宗達が描いたものを100年後くらいに尾形光琳がカバー(?)し、それをまた酒井抱一がカバーしたという屏風絵で、つまり違う人が描いた同じものが3つあります。今回の上野で行われている大琳派展ではなんとその3つを同時に展示しているのです。一つでもなかなか本物が見れないのにこれは3つの違いを比較できる絶好の機会。
写真は俵屋宗達のオリジナル。実際に現物を見たのは今回が初めてだったけど、間近で見ると案外筆致が荒い。勢いで描いている感じ。だけど配色とかモチーフの配置が絶妙で、絵の構成自体は勢いで描いたとは思えなかった。すごく考えに考え抜かれたかんじ。なのに筆の運びが非常に勢いがあって、あるいみロック的なざっくり感がある。「オラー!」という意味のない気合いが絵から聞こえてくる感じ。これは国宝になってるのもわかるぶっ飛びの名作ですね。
この絵は京都の建仁寺が持っているのですが、宗達は京都の町絵師だったので京都に伝わったのです。ところが明治に入るまで宗達の評価はずっと低くて、おかげで目利きのアメリカ人に代表作の多くを買われてしまい、海外に流出しました。宗達の絵は斬新すぎるんです。宗達は町絵師でしたから発想が自由で、しきたりに縛られずにエクスペリメンタルな部分を持っている作品も多いですが、当時から一流の絵師としての評価を受けていたようです。なのに生没年は不明。
これは尾形光琳。宗達の絵をカバーしたわけですが、完コピかというとそうでもなく、色や顔の描き方をあえて微妙に変えています。左手の雷神は宗達は太鼓の輪を枠からはみ出すようにしていますが、光琳はそれでは安定感がないと思ったのか、もっと内側に寄せています。もともと宗達の作品は不安定なのがいいのに、そのへん光琳は違ったみたいです。改良しているところからすると、宗達の絵はいいけど完璧だとは思っていなかったってことでしょう? 自信もあったのかもしれませんよ。宗達リスペクトではあったんですけど。
光琳は実家が金持ちのボンボンで結構遊び人だったみたいですが、ボンボン特有の品の良さと都会的なセンスがあって、そこが今でも受けている所以です。ただ確かに絵もうまいんだけど、宗達のような何ものにも左右されない自由な気風という部分ではやや劣るし、後述する酒井抱一のような緻密な描写力も持っていません。だけど光るセンスがあって、感覚的にはすぐれたものを持っていたのがわかります。ぱっと見のキャッチーさもあります。洗練されているんです。
酒井抱一のは宗達のではなく、光琳の絵を見て描いたので宗達の孫コピーですね。より安定感を増した感じ。絵もうまい。色も鮮やかだけど、色遣いは光琳のほうが好きかな。タッチも軽やかで、なめらかな動きの見える描写というわけではなくて、むしろ形式化された風神雷神図のデザインを完璧に仕上げようと言う気持ちが絵からにじみ出ている。今は黒く酸化している銀泥混じりの雲も光琳はたっぷりとバランスよく入れている感じがするけど、抱一は重くなるのを嫌っているようにも見える。屏風の折り目をモチーフがまたぐように描いているのも宗達や光琳とは違う点。でも酒井抱一は絵がうまい。まじめに勉強してきた感じがします。植物を描いてもボタニカルアートみたいだし。こういう動的なモチーフはよくないかもしれないです。
結論。僕は俵屋宗達が3人の中で最も好きです。やや社交性のない、こもったセンスもあるけど、内なるパワーをめらめらと燃やしているような爆発力も秘めている、そういう表に見せないエネルギーを感じます。これは音楽の趣味とも共通しているところではあるけれど。
二月堂
9dwのライブが終わってからみんなとわかれて単独活動(許してみんな!)。今まで一度も行ったことのなかった正倉院展を観に奈良国立博物館へ行ってきました。世界にも例がないエクセレントコンディションで残る8世紀の品々。しかし人気ですね。人であふれかえっていました。
帰りに立ち寄ったひっそりとたたずむ二月堂からのワンショット。東大寺の大仏殿の屋根を眼下に奈良を一望できるすばらしい景色です。コンクリートジャングル(!?)東京の喧騒を忘れ、ぼーっと景色を眺めるのも悪くないです。帰りに横にある二月堂の休憩所でお水取りに使われたたいまつを観ながらセルフサービスのお茶をすすりました。自分でお椀をとってお茶入れて飲んで水道で洗ってまた元に戻すんですがタダなんですよね、そのゆるい空気感がすばらしい。
(撮影はニコンのコンデジだけど、そこそこ描写力あります)
桂米團治
オバマやりましたね。僕もオバマ応援してたんでよかったです。小浜市も喜んでますね(笑)。こないだのアメリカが計算できないっていう悪口とは反対の話になるんですが、アメリカは日本なんかより民主主義が生きている。よくも悪くも平等な国なんだなって思います。
話題は変わって落語の世界の話。先月、桂小米朝が5代目桂米團治を襲名しました。彼は上方落語では初の人間国宝になった桂米朝の長男です。
先日その襲名披露の様子がテレビでやっていました。米團治といえば米朝の師匠の名前でもある大名跡。この名前を継承できるのはそれなりの実力が必要ってものです。それを長男が継ぐことになってさぞ米朝師匠も喜んでいることでしょう。
米朝師匠は東西を問わず落語界での頂点に立つ人。5代目柳家小さんが亡くなったので人間国宝が一人になったし、米團治襲名の際には東京からも三遊亭圓歌や林家正藏も来てました。
本来米朝の一番弟子は月亭可朝でしたが、月亭という名前を無理矢理継ぐことになって桂一門から外されましたので、米朝に何かがあると枝雀が一門を引っ張っていく存在でした。ところが僕も大ファンだった枝雀が自殺してしまい、米朝師匠も相当ショックを受けていたそうです。
ファンの間では枝雀なきあと、吉朝(きっちょう)が師匠の芸風を最も継承している実力者といわれていたようですが、その吉朝も若くして病死。
残されたのはザコビッチことざこば師匠です。彼は今出身地の西成に寄席を作ろうとしているそうですが、さこば師匠は若いときから米朝師匠からかわいがられていたこともあり、やしきたかじん曰く「米朝の名前はざこばにやってもいい」と…。
今は桂一門のトップが米朝、その後をざこば、さらにそのあとに枝雀の1番弟子の南光がいることになりますが、米朝の名前を継ぐのは小米朝ではないと誰もが思っていたところに米團治の襲名話が出てきたので、それはそれでよかったのかなと思います。
反知性主義
日本人はアメリカの文化に対して相当な関心とコンプレックスをもってきたと思いますが、だからといってアメリカの実情を理解しているかというと、半分もわかっていないような気がするんですよね。
アメリカはヨーロッパの開拓者の寄り集まり国家から始まったことは誰でも知っていると思いますが、彼らは当初からキリスト教を中心に価値観を共有してきたわけすよね。それが今のアメリカにも脈々と受け継がれているわけです。
キリスト教の中でも「福音(ふくいん)主義」というのがあって、これはつまり聖書に書いてあることを忠実に守っていくという聖書原理主義なんだそうですが、アメリカの多くの人はこの福音主義的な世界観を信じていると言われています。ブッシュも福音派の協力を得て大統領になったといわれていて、彼らの支持者は圧倒的に保守派で、現在の生活を変えたくない人たちなわけです。
そんな彼らの中には「反知性主義」というのがあるそうですよ。なんですかそれ。僕もいろいろ調べて言ってることなんで間違いがあったら教えてほしいんですが、つまりそれは「無知こそ善」と考えるものらしいんです。人間は聖書に書いてあることを信じて実践していれば、自ら余計なことを考えることはないってことです。その根底には民主主義と平等主義があるそうです。つまり、一人でもアタマのいいやつがいるとそいつが権利を牛耳って不平等が起こるでしょ、それはアタマのいいやつがいるってことがよくないってことですよ(!?)。でね、そんなわけで福音主義者の多くがあまり積極的に勉強してこなかったらしいんですね。知識を付けることに罪悪感を持つ…うそのような本当の話。
アメリカ人てあまり暗算とかできないって話きいたことありませんか? 受け取るおつりが少なくなるように小銭を入れて支払うなんてことはアメリカではあまりやんないそうですよ。
識字率95%というアメリカでは暗算ができないことなんか普通らしいです。とある在米期間の長い方のネットの書き込みによると、アメリカの学校では暗算が速くできるということに価値を見いだしていないそうです。だから暗算は学校では教えない。だからみんなできないんだそうです。もちろん一生懸命勉強していい大学に行くような、日本人なんかよりも優秀な人もたくさんいるわけですが、一般的な人たちの基礎的な教育レベルは日本人が考えている以上に低いのかもしれません。最近「アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない」という本が出ました。まだ読んでませんがこういう問題のことが書かれているそうです。
でね、そんな人がサブプライムローン組んでマイホームを買ったんですよね。毎年金利が上がっていって、10年後に支払額がどうなっているかとか、どれくらい利子が付くのかとか、どれだけわかってローンを組んだかはかなり怪しいところじゃないですか。そもそも低所得者にローンを組んでもそれだけじゃ破綻なんかしないわけです。払えなくなったから破綻したんですよ。みんな「だんだん支払額が大きくなって払えなくなった。ひどすぎる!」とか被害者みたいなこと言ってますけど、それちょっと違くないすか?(笑)ご利用は計画的にね! お願いします。
トム・オーバーハイム
アナログ・シンセサイザーのメーカーとしてmoogと並び賞賛されているOberheimの生みの親、
トム・オーバーハイム氏の連載が日本語で読めます。
10年以上も前に池袋の楽器フェアの会場でご本人をお見かけしましたが、すぐ横でシンセサイザーをいじり回していた若者たちにもまったく気づかれることなく、代理店の人と話をしていました。すっごくいい人っぽい(笑)