最近ライブでラップトップ・コンピュータを持ち込む人が増えた。コンピュータから出す音でライブをやるという手法は、ここ5年で大きく変わったし、実用的なソフトウエアもそろってきている。
でも「コンピュータはよく止まる」という話を聞くし、実際にそういう問題に遭遇している人も少なくない。コンピュータは不安定なものという認識は僕も持っている。みんなどうにかならないのか、と思っているわけ。
僕は偉そうに言えるほどの専門家ではないけど、ライブでラップトップを走らせるという経験はそれなりに積んできたし、トラブルにも見舞われたことがある。そんな中から編み出したノウハウを少しばかり皆さんにお裾分けしたいと思う。
●なぜコンピュータはライブで止まるのか?
リハーサルまでは何ともなかったのに本番でなぜか止まる。そんな理不尽な現象がしばしば起こるのがラップトップだ。止まる原因にはいくつかあると思うが、その原因と対処法を列挙していく。
振動
ラップトップ最大の敵は「振動」だ。小規模のライブハウスや1000人クラスのキャパシティのホールでさえ、ステージの床が丈夫にできているところは案外少ない。バスドラムやベースの音でブルブルと床が震えるということはしょっちゅうある。そんな床に折りたたみ式のキーボードスタンドを立て、さらにその上にラップトップを置いていては、ミクロの視点ではまるでテーブルの上でぴょんぴょん飛び跳ねるボールのような動きをしている。
そもそもこのような振動のある状況でコンピュータは正常に動くようには設計されていない。ではコンピュータの何が振動に弱いのだろう? その最たるものはFireWire(IEEE1394)のプラグだ。USBコネクタにも同じようなリスクはあるが、とりわけFireWireのコネクタは振動に弱い。これは僕が何度もライブでラップトップを使って得た教訓だ。
FireWire400の6pinプラグ(写真)はごらんのように信号の流れる接点が内側に入り込んでいる。この点はUSBと変わりないが、周囲の金属部分を見ると、片側だけ角が取れている形をしている。これが上下左右にプラグが振動しやすくなっている原因ではないかと僕は考えている。特にプラグを縦に差し込むようになっている場合はより動きやすい。
コネクタは差し込みやすいように受け側がやや大きめの穴になっていて、しっかり差し込んだあとも手でケーブルを動かすとプラグがぐらぐらと動いているのがわかる。この不安定な接触部分に振動が加えられることでオーディオ・インターフェイスやハードディスクへとのコミュニケーションが一時的に途切れ、その後の処理が間に合わなくなってコンピュータが止まってしまうのだ。
次に対処方法だが、まずコネクタとプラグには「相性」があることを知らなければならない。同じように見えるプラグやコネクタには製造されたメーカーによって若干のサイズの違いがあり(本来それはまずいわけだけど)、それがライブで使用する際に問題になることがある。
いい結果が得られるのはオーディオ・インターフェイスやハードディスクを買ってくるときに付属してくるケーブルをそのまま使うこと。おまけのケーブルにはあまりいいものはないけど、メーカーの動作検証はこのケーブルを使って行われているはずだし、少なくとも外付け機器との相性は考えなくていいことが多い。
あえて別のケーブルを使用したい場合は、あまり積極的におすすめできる方法ではないけれども、実際にラップトップを走らせながらケーブルを少し動かして、動作がストップするかどうか確かめて欲しい。場合によっては大きなノイズが出ることもあるので再生音には気をつけよう。
またバスパワーを使っている場合はさらに振動には気をつけなければならない。そこでケーブル自体に振動対策を施してみよう。僕はプラグの金属部分の付け根から3mmくらいの幅で薄いテープを巻いて、コネクタとの「噛みの甘さ」を減らしている。テープを巻きすぎるとプラグが差し込めなくなるし、巻きが少なすぎると効果がなくなるので何度も試しながら適切な巻き加減を調べて欲しい。
次にライブでセッティングするときに、接点部分をガムテで固定してしまうと万全だ。MacBookの場合、FireWireの接点は本体の横になるけど、このプラグ部分とMacBook本体をまたぐようにガムテで貼ってしまうといい。オーディオ・インターフェイス側もガムテでとめる。
FireWireの説明は以上だけど、次にハードディスクの振動対策を考えよう。ハードディスクは連続的な振動が加えられた中ではまれにエラーが起きることがある。外付けのハードディスクがある場合は外付けに、そしてラップトップ本体内の内蔵ハードディスクもあるから、ラップトップ自体に振動対策をしなければならない。
一番手っ取り早い方法は「スポンジ」に乗っけてしまうこと。防振ゴムはキックやベースのようなおおざっぱな振動には十分機能しないことがある。スタンドの脚にかませるものとしては防振ゴムは有効だと思うが、ラップトップや外付けハードディスク下にはより柔らかいスポンジやウレタン系のものを敷くのがベストだ。ラップトップの入れ物になっている低反発のケースをそのまま敷いてもいいと思う。実際に爆音が出ている現場でラップトップ本体に指で触れ、止まるほどの振動が伝わっていないかをチェックするといいと思う。
またオーディオ・インターフェイスもスポンジにのっけておくと安心。とにかく全部に振動を与えないのがベストだ。
スポンジは都会に住んでいる人なら東急ハンズなどでいいものが売っている。値段もそんなに高くない。3〜4cmの厚みがあれば十分だと思う。
ソフトウエアの問題
9dwと7月に一緒にツアーを回ったサン・フランシスコのWindsurf。そのときの映像をYou Tubeで見つけた。彼らはアンビエントからシティポップまで(!)いろんな音楽を聴いている人で、話してもクレバーなナイスガイだった。音楽にそこが出ていると思う。
サンフランシスコには今でもヒッピー文化の残像を感じる。自由奔放な発想で音楽や芸術が生まれる場所だ。1960年代にミニマルミュージックがサンフランシスコから生まれたのはいい例かもしれない。いろんなものから解放されていくと、Windsurfのような音楽が自然発生してくるのかな。東京のミュージシャンと比べても開放感が違う気がする。