歪曲談集

 アメリカから帰ってきた次の日から今日まで、まったく休みなしで働いている。今月は1年の中で一番忙しい月だ。先日ようやくPANGちゃんのアルバムのマスターを作り終えたけど、仕事は全然終わっていない。体はつらいけど、毎日が充実していて、仕事に対するストレスはまったくない。毎日楽しく仕事ができているのは本当に幸せなことだ。

 それでまったくブログを更新できていないために紹介がすっかり遅れてしまったんだけど、Shing02のアルバム「歪曲」にちなんで企画されている「歪曲談集」のページに僕のロングインタビューが載っている。赤裸々に僕の経歴を告白しているので(?)恥ずかしいけど興味のある人は読んでください。
 とはいっても42年も生きていれば全部を語ることなんて到底できない。このページのインタビューでも肝心な情報が抜け落ちている。僕の音楽のルーツの話でも、これを読めばKraftwerkばかり聴いているように思えてくるけど、実際はかなり違う。
 80年代の僕は大半をNurse With WoundDie Tödliche Dorisなどのノイジーな音楽を聴いて過ごしていた。The Hafler Trioが僕のヒーローだった。シンセサイザーに興味を持ったものの、テクノにのめり込んでいくことができなくて、むしろドイツのプログレなんかのほうが興味があった。なぜなら僕が求めているライフスタイルが衛生的でファッション的なものじゃなく、むしろカオティックで有機的な方向に向いていたので、シンセサイザーにもそういうイメージで面白い使い方がないか模索していた。
 僕自身は白人的なものも黒人的なものも許容できるけど、それはカオティックなものは白人にいいものがあり、有機的な要素は黒人音楽に優れた物があったからだ。そこにアジア、特に日本的な「わびさび」感を自分の音楽性に取り入れていきたいというのがジャンルを超えた僕の音楽観念で、その方向性はどういうわけか80年代から全く変わらずに今まで来ている。
 話を歪曲談集に戻そう。補足的な情報を少し。このインタビューの中にしばしば出てくるK君の話だけど、実はここ10年来、K君とは連絡をとっていない。たしかに彼とは親友であったけど、多分彼の方が僕とつきあうことが窮屈になってきたらしい。次第に連絡をしてこなくなった。僕が酒を飲まないことも彼とのつきあいに大きな影を落とした。僕は思い出したように時々CDやビデオを彼に家に送り付けていたけど、それに対する返事が来ることがなかった。
 僕は彼の携帯電話の番号もメールアドレスも知らない。そんなわけで今では彼とのつきあいがなくなってしまったのだ。
 彼とは中学生の頃に廃墟になった団地の一室に潜り込んでそこをスタジオにして音楽を作っていた時期があった。その頃はわけわからん音楽ばかり作って楽しかった。大人になってからも大阪市内にマンションを借りてスタジオにしていたけど、結局それは僕が「やめよう」と言い出して幕を閉じた。彼と本気で口論した最初で最後の機会だったけど、最後には彼が僕にあやまって解散となった。その後も互いに仲良くはしていたけど、彼は音楽以外のことに興味をもちはじめて僕とは接点がなくなっていった。
 そのときボーカルをしていたF君ともそれ以来会わなくなってしまった。その後彼は大きな交通事故に遭って生死をさまよい、久しぶりに僕の家を訪ねてきたときには、ちぎれかけた耳を縫い合わせた跡を僕に見せながら笑っていた。彼も今はどうしているのか全く知らない。
 しかしF君の幼なじみで紹介されたI君とは未だに年賀状のやりとりをしている。もう15年も会っていないのに。彼はいまでも音楽を愛しているようで、家族を持ち幸せに暮らしている。
 大阪にいる友達で未だにつきあいが続いているのはまつおかたかこという女性だけだ。彼女とは性別を超えた同志のような関係だ(僕は相手さえ抵抗がなければ女性であってもそういうつきあい方ができる)。年に1度くらい会い、あとはメールでちょこちょこ話しているくらいの仲だけど、途切れずに今でもつきあいが続いている。時々お土産の送り合いもする。そういうつかず離れずの関係ってそんなに悪い物じゃない。彼女は大阪でも有数のプロのイラストレーターで、「お絵かきさん」を自称している。芸術的才能を持った人。興味深い話も聞ける。ブログの十三の飲み会の話は彼女と会った時のものだ。とはいっても僕は酒を飲まないんだけど。
Facebooktwitterredditpinterestlinkedinmail

SXSW オースチン4日目5日目〜完結編

 いよいよオースチンともお別れの時が来てしまった。今までで一番眠れたのが今日だったけど、それでも6時間あまり。そもそも旅行に行くといつもこんな感じだ。みんなより早く起きてシャワーを浴びたが、鼻の頭にニキビができているのに気づいた。なんてこった。始終食べ続けた肉食生活によって蓄積された僕の体内の不純物がこんな場所に排出されようとしている…。

 それはそうと、冷蔵庫に残っていた激マズのスポーツドリンク(わざとまずそうなのを買って飲んでいた)の残りも飲み干し、ゴミを捨てていく。

 飛行機の時間までは余裕があるけど、みんな何か食べてから空港へ行きたいと思っていたので早めに出発することにした。

 ホテルのドアを起きると照りつける強い日差しのもとで例の鳥がまた今日もけたたましく鳴いている。見た目はとてもかわいいんだけど鳴き方はアメリカンだ。

DSCN0594.JPGDSCN0598.JPG

 ホテル前のばかでかい幹線道路、35号線を南下して空港通りを左折し、まずは齋藤さんがレンタカーにガスを補充。もちろんセルフサービスなのだが、誰もお金をどこに入れるのかわからない。へんな所にドル札を突っ込もうとしていると、どこからともなく聞こえてくる声。「金は店の中で払ってくれ」。どうやら後ろにある店の中から店主が見ていたらしく、スピーカー越しに声が聞こえていたのだ。

 しばらくすると支払いを済ませた齋藤さんと中原さんが店の中から戻ってきた。「店のおじさん、すごくいい人でしたよ」。よかったよかった。これでレンタカーは無事返せる。

DSCN0608.JPG

 しばらく道路を走っていると、ボコボコにへこんだ車が僕たちを追い抜かしていく。完全に事故車だ(笑)。ボコボコの車を見るのは実はこれで2度目。あちこちにこういう車が走っているらしい。

 自動車もやたらにでかいDODGEやシェヴィー(シボレーの愛称)が多く、たまに走る日本車が繊細に見える。中にはリアの窓ガラスに白いマジックででかでかと「この車XXドルで売ります!電話番号XXXXXX」と書いてある車も走っている。後続車がそれ見て電話かけるんだろうか。とにかくドライバーは売れるまでは乗っていたいということなんだろう。合理的すぎ。

 道のあちこちでヒッチハイクをしている人や金を恵んで欲しいホームレスが段ボールに字を書いて交差点に立っている光景をよく見かけた。ホームレスは日本にもいるけど、あんなに積極的な行動をおこしているのは一度も見たことがない。そこの感覚もアメリカなのだ。一度だけ信号待ちの車からお金をもらっているホームレスを見た。あそこに1日中立っていればそれなりの成果はあるんだろう。

 そうこうしているうちに僕たちの目に飛び込んできたのが「JACK IN THE BOX」の看板。これがファーストフードの店だということは全員わかっていた。なぜなら以前夜中に腹が減って食べるところを探していたときに別のチェーン店を見つけて入ろうとしたら店が閉まっていたという悲しい出来事があったからだ。その晩ホテルに帰ってネットでメニューを見たらテリヤキボールみたいなご飯物が置いてあることも知っていたので、ぜひ試したかったのだ。

DSCN0602.JPGDSCN0604.JPGDSCN0605.JPGDSCN0606.JPG

 店内は日本のモスバーガーなんかと変わらない感じでいたって普通。清潔感もある。レジの女の子は歯の矯正をしたかわいいハイスクールのバイトさんという雰囲気。まさし君が例のテリヤキを頼んだので、僕はクリスピー・チキン・バーガーを注文。「コンボ」と呼ばれるドリンクとポテト付きにして、さらにうまそうななんとかベリー・スムージーも注文。「なんとか」の部分は難しい単語で忘れた。

 ドリンクは空のカップを渡されて隣にあるサーバーで自分で好きなドリンクを注ぐシステム。ところがドリンクは「レギュラー」を頼んだはずなのに来たカップがこのありさま。最初は間違ってきたと思ったが、どうやらこれがレギュラーらしい。オー・ホワッタ・テキサス・サイズ! 日本のLサイズよりも大きいカップに気後れしてかなり控えめな量のドリンクを注いだつもりだったけど、結局飲みきれなかった。自分の注いだ量が少なく見えたのはカップがでかずぎたからだった。

 ハンバーガーもなんとかスムージーも味はよかった。特にスムージーはおすすめ。フレッシュなベリーを使っているらしい。このあっさり感は十分日本でも通用する味だ。

 中原さんが気軽に頼んでしまったサラダがこれまた破壊的に巨大だった。これは日本では4名様お取り分け用サイズでしょ。みんな手伝って一生懸命サラダを食った。9dw、アメリカを食らう!

 食べ終わった頃にはどっぷりと「食べ疲れ」が出て、今度はとてつもない満腹感に襲われ始めた。空腹と満腹の振れ幅がでかすぎる。

 空港へはほどなく到着。空港に来たのがずいぶん前のような気もするが実は4日、実質3日しか経っていない。

 空港のセキュリティ・チェックは相変わらず厳しく、液体の持ち込みはきわめて限定的、X線には上着と帽子と靴まで脱がされて、裸足のまま金属探をくぐり抜ける。そしてまたしてもあの狭い飛行機に乗ってワシントンDCへ向かった。さよならオースチン!

 ワシントンDCのダラス空港に着いたのは夜の10時。ダラスの緯度は北海道よりも高いためか、結構肌寒い。暑がりの僕とアメリカ人は半袖だけど、まさし君と中原さんは長袖で子犬のように震えている。飛行機が寒かったらしい。

  ホテルまではタクシーで移動することになった。ドライバーはインド系のおじさん。数字の3を「トゥリ」と発音するあたりがインドっぽい。おじさんの若干荒い運転で一行は無事ホテルに到着した。

 チェックインを初めてまずはトラブル発生。予約の部屋の数が違っているらしい。マネージャーも出てきてすったもんだしたあげく、女性の中原さんを除いて残りの4人がツインの部屋1つに泊まることになった。エクストラ・ベッドを入れてもらうことになったけど、どうやら言葉がうまく伝わっていなかったらしく、再度リクエストしに行く。

 問題は食事で、ホテルの人に聞いてもこの時間では食べようにも開いている店がないらしい。タクシーに乗って”IHOP”に行くしかないらしい。

 実はこのIHOPがどんな店なのか、僕たちは理解していた。オースチンで宿泊したホテルのとなりにあって2日連続でそこへ行ったからだ。24時間営業のファミレスだが、間違っても雑炊セットは置いていない。肉だ。夜中の3時に行っても分厚いステーキが食える。

 でオースチンのIHOPの話を少し。ここの夜中にはエディ・マーフィーみたいなしゃべり方をする陽気な黒い兄ちゃんがいて、彼らは僕らが日本からきたことを知って、2回目には「コンニチワ!」と日本語で挨拶をしてぺこりと頭を下げた。その直後、自分で爆笑してやがる。あまりにもテンションが高いのでこっちまでつられて笑ってしまった。見た目と振る舞いからは想像できなかったが、どうやらアニメ(本人はアナミと発音していた)が好きらしく、日本へ行ってみたいらしい。僕たちから15時間飛行機に乗ったことと、運賃の高さをきいて「じゃもっとパンケーキを焼かなくっちゃ!」と小走りで去っていった。こいつ吉本新喜劇っぽい。

 話を戻すが結局タクシーに乗ってまでIHOPでまた肉を食べるかと思うと、もうこのままお菓子食って寝たい気持ちになってきた。というわけで夕食は抜き!

 ついでに5日目の話までしちゃおう。実はこの文章もアメリカから東京へ帰るユナイテッド803便の中で書いているのだ。座席は日本人でも狭く感じる。ここだけはアメリカンサイズではないのだ。それでも13時間はここに座っていなきゃいけない。ケツがもう早くもやられ始めている。

 ダラスは国際空港で、ホテルからは昼間はシャトルバスがあった。これはありがたい。途中車内から見える風景はテキサスとは若干違って緑が枯れた色をしている。ただだだっ広いのは同じ。

 空港ではまたいつものように靴を脱いでセキュリティ・チェックを受け、パスポートに紫外線をあてられて偽造かどうかチェックされ、ようやく中に入れた。これであとは帰るだけだ。

 それから13時間。成田に到着。空港のチェックはさすが日本、スムースだったが、やたらと報道関係者がいる。僕らと同じ飛行機に乗っていたらしい黒人の紳士が報道のカメラに囲まれて消えていった。

 昨日成田で飛行機が墜落した話はそのあと判明した。まったく知らなかった。帰りが昨日だったら名古屋におろされていたかもしれない。勤勉な日本人の必死の滑走路復旧作業によって1日違いで帰ってきた僕たちは事なきを得た。

 KIRIN 午後の紅茶を買って成田エクスプレスに乗る。あー日本に帰ってきたという感じ。夕方ではあるけれども、テキサスの空を見続けた目にはどことなくぼんやりとした空色に見える。やっぱりこれが見慣れた色だ。ポンコツの車も、字を書いた段ボールを持って立っているホームレスも、巨大なハンバーガーも、上半身裸で自転車乗っているやつも、棺桶みたいな牽引車を付けて走っている機材車も、全身タトゥーだらけのファンキーなお姉ちゃんも、エディ・マーフィーみたいなしゃべり方をするファミレスの店員も、フレディ・マーキュリーに激似の客室乗務員も、みーんな地球の裏側に行ってしまってここにはいない。彼らは僕らとは別に、そこでそれぞれの人生を歩んでいるんだ。また会おうアメリカ!

以上、ここまでが9dw@SXSWの一部始終です。この間、レコーディングとミックスが中断してずっと待ってくれていたアーティスト&関係者の皆さんにお詫びするとともに、貴重な体験の機会を与えてくれた齋藤さん、そして献身的なサポートをしてくれた同行の中原さん、そしてメンバーにも感謝したいと思います。最後に僕のファミリーにも感謝。明日から仕事頑張ります!

Facebooktwitterredditpinterestlinkedinmail

SXSW オースチン3日目

 3日目。東京で事前に聞いていた予報とは違って、今日もかんかん照りの晴れ。日本の気候とは違って、やっぱり乾燥しているのか、昨日の晩に開けたスナック菓子もまったく湿気っていない。窓からまたあの鳥の鳴き声が聞こえてくる。

 今日は夕方からWax Poeticsのスタッフたちから食事に誘われているという予定しかなかったことと、昨晩の本番の疲れからか、全員2度寝3度寝の応酬で、結局全員が外出できる準備ができた頃には4時になってしまっていた。

 僕はというと、全然寝られていないはずなのに3時間で目が覚めてしまった。「Don’t disturb」の札をドアにかけておかなかったためにベッドメイキングをするヒスパニック系の女性にたたき起こされてしまった。彼女も英語が苦手らしく、僕も彼女の言っていることが聞き取れない。「とにかく1時間待って」。やや不機嫌そうな表情で彼女は去っていった。結局それから眠れなくなって2日目のブログを完成させる羽目になったんだけど。

 で、4時からとはいっても、テキサスでは夜の8時くらいまでは外も明るいので結構うろうろできる。とりあえずリーダーの齋藤健介さんの友達のMilemarkerがSXSWに来ているというのでみんなで会いに行くことになった。

 街は本当に活気があって、あちこちからいろんな音楽が聞こえてくる。中には駐車場の入り口で演奏しているやつもいるし、ヒルトンホテルのロビーに入ってもそこでライブをやってる。本当に町中が音楽だらけ。

radioroom.JPG

 

 僕たちはそこでRadio Roomという所へ向かう。Milemarkerがそこでライブをやっているらしい。

 建物の中は開放的なスペースで、天井も高く、窓から外の景色が見えるような空間にステージが作られていて快適な空間。入り口はどこの会場もそうだけどIDのチェックと荷物検査が厳しく、フリーパスのリストバンドも不正に外して他人から譲られた形跡がないか調べられるところもあった。ただ一貫性がないというか、ガイドラインがないんだろうけど同じ場所でも人によって厳しさが違う(笑)そのへんは適当かも。

mikemarker.JPG

 Milemarkerの演奏はやっぱりCatuneのテイストにも通じるバイブスを感じた。狭いステージから会場を沸かせる。無事Milemarkerと齋藤さんが再会できたことで、次の予定へ。Wax Poeticsのスタッフの携帯に電話をかけようということになって、公衆電話を探すんだけど、これが意外にない! やっぱり携帯の普及率のせいか。とにかく1時間近くさまよってさんざん公衆電話を探したものの、見つからずに困り果てていた頃、ベースのまさし大将の持っているiPhoneがオースチンでも使えることがわかって(おいおい!)、無事合流できた。

 車に乗って食事に連れて行かれた場所は、初日にホテルを探してさまよっていた場所だったかもしれないちょっと離れた場所。だだっぴろい道路の脇に中古車屋やレストランなどが建ち並ぶ、ちょっとした商店街なのかな。店の名前は忘れたけど、雰囲気はオールド・アメリカンなかんじでよかった。店の真ん中に本物の木がはえていて、それがオブジェになってる。ウェイトレスのお姉ちゃんも若くて愛想がいい。食事もうまかった。

dennis.JPG

 みんな頼んだ物がことごとくビッグサイズで思わず笑える。「テキサスは特になんでもビッグなんだよ。食べ物も、車も、人間もね」といいながら、自分の頼んだばかでかいハンバーガーをナイフで真っ二つに切り、カメラにポーズをとるデニス。彼も含めてWax Poetixのみんなはブルックリンからやってきた。彼らもテキサスはなんでもでかいと感じているみたい。日本人の女の子の顔くらいもある大きさのハンバーガーも魅力的だったけど、僕はグリルポークを注文。「オー、サウンズ・ナイス!」。ばっちりアイラインをキメた細身のお姉ちゃんがおまえはいいものを注文してるぞと言わんばかりの口調でやや高い声を上げながら安物のボールペンで伝票に注文を書き込んでいく。まさし大将はよっぼど若く見られたのか、酒を注文すると「失礼だけどあなたおいくつかしら?」と聞かれた。「彼は29だよ」というとびっくりした顔をしながら「ごめんなさい! もっと若く見えたものだから」と照れ笑いをしながら去っていった。アメリカのお姉ちゃんらしい明るさと自信に満ちあふれた接客。

Roast.JPG

 始終ジョークを連発している明るいリチャード(彼は「僕のことをみんなスパイスと呼んでいる。君たちもそう呼んでくれ」というので、スパイスと呼ぶことにした。その言い方はかなりジョークっぽい。)は体型も体型だけど(笑)「俺は音楽と食べることが大好き」と豪語。僕らと同様、相当腹を空かせているらしく、「俺の胃が俺自身を食べ尽くそうとしているよ」と僕らだけじゃなく店の姉ちゃんにも主張していた。

 とにかく出てきた物はでかかったけど無事完食。食べるだけでも疲れた。食べ終わるとデニスから「今夜カニエ・ウエストを見にいくんだけど、一緒に見にいかないか」とお誘いを受け、みんなで行くことに。蟹江敬三ではなく、カニエ・ウェストですよ皆さん(オヤジ的)。なかなか見る機会もないけど、彼らの仲間がその現場に関わっているらしく、どうやら会場に入れてもらえるらしい。

spice_fader.JPG

 会場はこれまた空き地に作られた特設会場で、雑誌FADERの協賛か。ライトアップされた会場をスパイスがカメラに収めていた。チケットを手に入れられなかった人達がテントの隙間からライブを見ているような状態。人気の会場だ。

 ところが肝心のスタッフと連絡が取れず、どこにいるかもわからない状態で結局観るのをあきらめて帰ることに。Wax Poeticsのスタッフが僕たちにすごく気を遣ってしまう。で、違うイベントを見にいくことになった。車まで歩く途中、Wax Poeticsの名物ボス、アンドレが僕に近づいてきて「おまえは41だってきいたぞ。俺ももうすぐ40だ。俺たちの世代が一番音楽をよく知っているよな」と同世代としての共感を求めてきた。「もちろんだよ」。彼は組織の中で一番偉い人だけど、日本のように決して偉そうな態度は取らない。スタッフからも慕われていて、ギャグも連発する。周囲がほほえましくその光景を見ている。いい上司だなあ。どこからか聞こえてくるアニタ・ワードの”Ring My Bell”をちゃらけながら一緒に口ずさみ、車のある方へ歩いた。

Bun B.JPG

 次の会場はテキサス出身の人気アーティスト、Bun B(バン・ビー)。「彼はJAY-Zともやっている。とてもいいアーティストだよ。」とデニス。ラップもうまいし、トラックもとてもよくできている。耳の肥えたWaxPoeticsの連中がほめるのもわかる。まだまだ僕の知らないいいアーティストがいるんだな。地元では大人気らしく、何人もの彼のクルーが舞台に上ってうしろに並んでいる。日本では観られない光景にちょっと吹き出した。だって舞台に上がっているのにつまんなさそうな顔で彼のラップを聴いている姉ちゃんがいるんだから。決してサクラではなく演出にもなっていないリアルなクルー(笑)。

 夜もふけてくるとさすがにみんな疲れだして、ようやく帰ることになった。「今度はニューヨークにライブに来てよ。俺たちがサポートするから」ボスのアンドレの頼もしいお言葉。本気で言っているらしいことは目を見ればわかった。こりゃすごいぞ。駐車場で別れを惜しみながらハグで別れを告げた。

 帰り際にはあれだけ食べたはずなのにもうおなかがすいてしまい、みんなで24時間やってる薬局に入ってとりあえず飲み物をゲット。その薬局は薬局とは言っても半分コンビニというか、雑貨店ののり。ホテルの周辺にはコンビニなんてひとつもないからここで飲み物を買っておかないといけない。車を降りると駐車場でホームレスらしき黒人の男に金を恵んでくれとせがまれた。

 ひととおり買い物を済ませて店から僕らが出てくると、どうやら買い物の間にそのオヤジがどこかの姉ちゃんとけんかになっていて警察が来ていた。ばかでかいテキサスサイズの女警官にこっぴどくしかられてしょぼくれるオヤジ。それを横目で見ながら僕らはとなりのマクドナルドのドライブスルーでハンバーガーを買ってホテルに帰った。

 ホテルの部屋でちょっと早めの打ち上げ的会合を開き、次第に、そして自然にみんな就寝。さすがにいろんなことがあって今日は疲れた。

実はこの文章を書いているのはオースチンからワシントンDCダラスに向かう飛行機の中。つまり4日目です。3時間も乗るからこんなに細かく書いちゃいました。僕の隣に座っているネクタイを締めた白人の紳士とはまだ一度も喋っていない。彼は彼で聞いたこともないメーカーの分厚いノートPCを広げてなにやら仕事の書類を打っている。ノートPCまでテキサス・サイズなのか…。

最後に9dw@Scoot Innの写真が手に入ったので。僕はあえて隠れています(笑)

9dw_scoot.JPG

Facebooktwitterredditpinterestlinkedinmail

SXSW オースチン2日目結果報告

austin1.JPG 

オースチンの繁華街まではホテルからはそんなに遠くなかったです。今日はまずSXSWの拠点になっているコンベンション・センターへ、公式認定バンドとしての手続きをしに行きました。街は思った以上にこのイベントのために盛り上がっていて、街のあちこちから音楽が聞こえてきます。ヒップホップがかなり目立っていました。
 街を歩く人たちは東京と比べても段違いにバリエーション豊かで、みんないろんな格好をしているし、走っている車も個性的。なんか途中でセグウェイ乗っているわけわからん人も見たし。なんか街が面白いです。
sgway.JPG
 音楽関係の人間もあちこちで歩いていて、日本のバンドともいくつかすれ違いました。ジャパン・ナイトの人たちかな。
 とにかくホテルを出るのに時間がかかったのと、手続きにも時間がかかってしまい、気づけば3時を過ぎているのにまだ朝食にもありついていない! でもここはちょっと我慢して、とにかく今夜のステージの場所を確認するべく行ってみることにしました。
 場所はそのコンベンションセンターからほど近いところで、35号線の幹線道路を渡るとすぐ。貨物列車用の線路があり、突然殺風景な感じになるエリアがあるのですが、人が住んでいないぶん、あちこちに特設会場を作ってライブが行われていました。
 そこにあったのが今夜の9dwのステージとなるScoot Inn。
scoot.JPG
言ってみれば空き地に作られた囲いに近いような場所なのですが(笑)もう昼のバンドが始まっていて、外にがんがん音が漏れています。それがすごくいい感じ。完全に解放されたスペースなので、外からも柵越しにバンドの演奏が見えます。そんな場所。

scoot inn panorama.jpg

これはそのパノラマ写真で、右手の暗くなっているところがステージ。昼間の明るいステージ写真(リハ風景)が下。
scootstage.JPG
とにかくステージの位置が確認できたところで昼食に。幹線道路を走って店を探しているとなんか嘘みたいにイケてないデニーズがあったので入りました。
dennys.JPG
 デニーズという名前ではあっても、メニューは日本のとずいぶん違っていて、まさに肉・イモの世界。味はおいしかったけど結構体の酸性濃度が上がりました。
 アメリカのレストランはみんなチップ制で、支払金額の15〜20%をお店の人にあげるのですが、その感覚がまだぎこちない感じ。勝手がわかっていません。
 とにかく信じられないくらいの大きさの肉がはさまった巨大ハンバーガーに食らいつき、ちょっと早めの現場入りをすることに。Scoot Innへ戻るとちょうど僕らを呼んでくれたWax Poeticsのスタッフも到着したところで、そこで初顔合わせ。スタッフはみんないい人ばかりだった。
 今日はまったくのリハなし。夜8時を回ったところでようやくあたりも薄暗くなり、お客さんもどんどん増えてきました。僕らはというと時差ぼけでちょっと眠そうな顔をしていて(笑)それをみたWax Poeticsの人が僕らにテキーラをおごってくれた(笑)
すみません、僕飲めないんですけど。でもちょっと飲んだ。結構うまかったな。
 演奏が始まったのは夜中の1時。大丈夫なのかな、こんな時間に爆音出して。外に丸聞こえですよ。でも始まった(写真は僕が撮っていないので後日アップします)。
 演奏は日本のライブでやっているものとほぼ同じ内容でしたが、ぶっつけ本番なのにお客さんの尋常でない盛り上がり方にやっている我々もテンションが上がりました。
 演奏終了後はなんと予想外のアンコール! ちゃんと用意してなかったBlack Coffeeをやって無事終了しました。ステージを終わると知らない人たちが我々に近づいてきて握手と絶賛のコメント。Wax Poeticsのボスもファッキン・アメイジング・9dw!を連呼してました(笑)正直本場のアメリカでこんなに受けるとはメンバーの誰もが想像できないくらい、オーディエンスの反応はダイレクトででかかったです。ほんと、遠いところまで来た甲斐がありました。
 続きはまたのちほど。思ったほど寝れないで困っている林田でした。
Facebooktwitterredditpinterestlinkedinmail

SXSW オースチン2日目

今テキサスのオースチンのホテルにいます!

どうやらアメリカは連休らしく、飛行機の予約の関係でワシントンDCを経由してオースチン入りするという快挙に出ました。
DSCN0407.JPG
写真はそのとき乗った飛行機で、一列が4人しか乗れない小さなジェット機。もうこの飛行機乗る前に成田から13時間も飛行機乗っていたからみんなぐったりしていたけど、とりあえず入国審査の黒人の兄ちゃんが音楽好きで「なんだ、おまえはギターかドラムかベースか」みたいな質問でささやかに盛り上がってパスできたことで結構ほっとしている瞬間でした。
 オースチンはあちこちにSXSWの看板があがっていて、街のあちこちから爆音のバンドの音が外に漏れ出している状態。
 なのに僕たちは目的のホテルの場所が見つからず、町中をレンタカーでさまようはめになりました。結局ホテルに着いたのがこっちの時間で夜中の2時。
 今日はその2日めですが、夜25時からライブの本番なので、それに向けていろいろ動きます。ではまた明日!
hotel2.jpg
Facebooktwitterredditpinterestlinkedinmail

9dw、SXSWへ行ってきます!

最新の情報によれば、僕たち9dwが演奏するのはテキサス州オースチンにある

Scoot Inn
で、現地時間の20日の1:00(25:00?)からってことです。
きっと皆さんにも楽しい土産話ができることと思います。
出発は明日。24日の夕方に戻ってきますので関係者のみなさんにもいろいろ
ご迷惑かけますがよろしくお願いします!
行ってきます!
Facebooktwitterredditpinterestlinkedinmail

9dw、SXSWに出演。

9dwで鍵盤を弾きに、今月の19日〜24日まで、アメリカ・テキサス州のオースチンへ行ってきます! SXSWに呼ばれたらしく、そんなら行ってみるかというわけで出演してきます。

ビザもアメリカ大使館に取りに行って、ちゃんと出ましたから!
行く前にもう一回くらいブログを更新したいなー。現在多忙につきこんなところで。
追記。米国向けフライヤー。
9dw
Facebooktwitterredditpinterestlinkedinmail

iTunesのエンコードで最適な設定は?

 iTunesのエンコードの設定、とりわけAACを選ぶべきかmp3を選ぶべきかについて書かれているサイトを検索すると結構あるんですね。みなさんいろいろ実験をされているようです。

 あるサイトでは実際にソフトウエアで計測した周波数のグラフをもとにどちらがいいかみたいな事をやっておられて、科学的な結論を出しています。
 ただ、それ自体を批判する訳ではないのですが、所詮音楽というものは人間の耳の感覚に心地いいか悪いかであって、周波数特性がいいか悪いかではないという事は、長年サウンドエンジニアをやってきて思うところです。どう考えてもスペックの低い機材の方が音がよく聞こえる事もありますし、やっぱり高い機材は違うなと思う事もあります。結局耳で判断するしかない訳です。
 そういいつつも長年僕はストリーミング・オーディオの世界に深く足を踏み入れないまま今まで来てしまい、どのエンコードが優れているかという話は人の噂や先ほど話をしたサイトなどの情報をほぼ鵜呑みにしていて、いうなれば適当にやってきたわけです。そこで今回実際に自分で試聴テストをやってみましたのでみなさんに報告したいと思います。意外な結果が出ましたよ!
 まず実験方法として、 MacBook Core2Duo 2.4GHzでiTunes 8.0.2を使い、CDから同じ曲をAAC / mp3でそれぞれ128kbps、192kbps(計4種)の設定で取り込んで、そのファイルをiTunesで再生して聴き比べました。音はMacからそこそこいいオーディオ装置へラインで出してモニターしました。
試聴に使った曲はDepeche Modeのアルバム”Playing The Angel”に収録されている”A Pain That I’m Used”で、これはメローなAメロとガツンと来るサビからできていてダイナミックレンジの感じを見るのにももってこいでした。じゃいよいよレポート。

AAC / mp3 128kbpsでの試聴比較
 これはかなり明らかな差が出ました。結論から言うとほとんどの人がmp3の勝ちというでしょうね。AACではハイはmp3よりも出ている成分があり、ハイハットなどがちゃんと聞こえますが、同時に低音も引っ込み、ボーカルも小さく聞こえるため、ハイ上がりながらもやや地味に聞こえました。またAACは広がりを重視した感じでmp3は真ん中にちょっと定位が寄った印象があるのですが、どちらにしてもこの品質では位相がかなり乱れた感じに聞こえますので広がっているAACのほうが逆にへんな部分が強調されて心地よくないのです。
 ハードウエア的なスペックで見るとこのビットレートではmp3のほうが高域がのびているという報告がありますが、聴いた印象ではAACのほうがハイが若干強調されて聞こえます。ただハイミッドが引っ込んでいるのでフラットな印象がAACにはなく、素直さに欠けます。あとAACは静かな音になるとずいぶんおとなしい音になってしまいました。つまりAACは全体的に地味です。

AAC / mp3 192kbpsでの試聴比較
 128kbpsに比べると2つの差は随分小さくなりました。そこそこ耳に自信のある人でないと聞き分けられないかもしれません。しかしシビアなレベルでそれを言うなら、はっきりとした差が出ました。
 AACは128kbpsの時にあったような低音の引っ込み感がなくなりますね。不思議な事に。全体的にフラットな印象です。ただ全体的にはmp3に比べると地味。mp3はサビのガツンとくる感じがちゃんと出るのですが、AACはのっぺりとした地味な印象が拭えません。おとなしいAメロはより暗い印象が出るものの悪くはありません、しかしサビにきても上がりきらずに終わる印象があります。表現が地味なんですね。mp3もAACも定位感もそこそこ再現されているのですが、やっぱり特有のざらつきは若干あります。
 クラシックのようなソースで試せばAAC 192kbpsはありかもしれませんが、オリジナルのCDの音質の印象を崩さないのはmp3のほうでした。
結論。iTunesでは128でも192でもAACよりmp3のほうが好印象ということになりました。192ならAACもありですが、明るいソースでは落ちた感じになると思います。
それと128と192の差ですが、思ったほど違いはないんですね。もっと差が出ると思ってましたが、音質にさほどこだわりがないなら128もありかなと思いました。だらだらと長文を書きつつも、これって聴き比べないと気にならないくらいの違いしかないな、と感じているのも事実です。ただ僕は、まるでスーパーの新鮮なマグロの刺身に防腐剤の匂いが付いてしまったような感覚をmp3に感じてしまうのです。どんなにオリジナルに近いと言われても、ほんんの少しだけ付いてしまった「デジタル臭さ」がどこまでもぬぐい去れず、結局それが気になって落ち着いてお刺身が食べられないのです。それは流し聴きなら僕でもまったく問題ないレベルですが、そこは音楽を聴くスタイルによって判断が分かれてくるかなと思います。とりあえず僕と同じような人はなるべくもっとハイビットレートでエンコードしておくべきだと思います。
以上の結果は僕の耳で確かめた印象ですので、実験の状況次第では少し違う結果が出る事もあり得ます。ただ当面はmp3でやってみようという方向性が自分自身で確かめる事ができたので僕的には意味のある実験になりました。みなさんにも参考になれば幸いです。
Facebooktwitterredditpinterestlinkedinmail

アンドレ・セラーノ

 セラーノはニューヨーク出身のフォトグラファーで、僕が知ったのは18年くらい前。「攻め」の写真をたくさん発表していますが、ほとんどの人がセラーノの話をするとドン引きしてしまいますが今日はあえてその話を。
 彼の出世作は大量に水槽に貯めた自分の小便にキリスト像を沈めた”Piss Christ”。厳格なカトリックの家に生まれ育った彼が、こともあろうに小便にキリスト様を沈めるとは何たる事を! 
 しかし水槽越しに撮影されたその像は、小便の黄色いフィルターを通り、さらにその小便に含まれている濁った成分と気泡に包まれ、なんとも幻想的に神々しく光り輝いているのです。
 彼はその作品を撮影するためにアトリエの隅に置いた水槽に延々と小便を貯めたそうで、それは日を増すごとに異臭を放っていたとか。その作品の非道徳さがついに非難を浴び、彼は奨学金を失ってしまいました。
 その後発表した小便と血と牛乳と精液で描いたモンドリアンのオマージュも秀逸。単純な色の対比だけで写真を構成したシンプルな作品ですが、その先にモンドリアンが透けて見えるのがなんとも彼らしいのです。
 そして彼は本物のKKKにコンタクトを取り、ポートレイトをも撮影しています。それだけをきけば単純になるほどって感じですが、実は彼はホンジュラスとアフリカ系キューバ人のハーフで黒人。「あのすみません、KKKさんですか? 僕黒人なんですけどあなたの写真撮らせてください…」こんなやりとりでしょうか。ずいぶん時間をかけて交渉したそうですが、仕上がった作品はファインダーを通して黒人ににらみを利かす三角頭巾の差別主義者。その目たるや、本物の憎しみがにじんでおりました。
 あと「セックスの歴史」シリーズもすごかった。馬のチンチンを握りしめる裸体の女性や、おばあさんのおっぱいを吸っている男性とか、様々な変態プレイをポートレイト風におさめた一連の作品は、見る人が見ればただのマニア向けエロ本のよう。日本には写真集もまともに入ってきていません。
 そして昨年発表された最新作は題して「SHIT」。そう、ウンコの写真です! 昨年の海外で行われたギャラリーの様子がYOU TUBEにアップされていましたのでぜひ見てください。
よく見るとある作品のタイトルに”Mother’s Shit”ってのが…「あ、お母さん? 久しぶり。ちょっと悪いんだけどさあ、お母さんのウンコ撮らせてくれない?」こんなかんじでいったんでしょうか。いやあこれはすごい。見渡す限り巨大に引き延ばされた生々しいウンコの数々! まるで食欲を失ってしまいました。でも目の付けどころがさすがセラーノ。参りました。しかしこの写真、誰が買うんでしょうねえ。いつもそれが気になる。

Facebooktwitterredditpinterestlinkedinmail

元興寺(がんごうじ)

gangoji.jpg 奈良の奈良公園の横にある猿沢池の奥に「奈良町」と呼ばれる古い町並みがあります。ここは元興寺というとても古い寺の敷地を利用してできたんだそうですが、正月にこの元興寺へ行ってきました。

 元興寺は仏教伝来からさほど経っていない588年、に蘇我馬子によって創建された「飛鳥寺」を前身としていて、当初は奈良公園のあたりからはかなり距離がある飛鳥(現在の奈良県明日香村)にありました。平城京遷都にともなって現在の地へ移されたそうです。日本書紀が書かれた時代ですね。そりゃ古いわ。
 薬師寺ももとはやはり藤原京にあったものをまんま遷都にともなって今の場所に移されたそうですが、当時の権力者はみんな寺をひっくるめて街ごと引っ越していたのですね。薬師寺の仏像は7日かけて飛鳥から移動させたなんて言い伝えもあります。
 で、その元興寺も今では小さな寺になっていて(理由は知りませんが、廃仏毀釈のせいかな?)、こじんまりとしながらもなかなか風情のあるお寺として密かな人気があるようです。つっても興福寺のように見応えのある仏像なんかがあるわけではないのです。でもお堂は国宝になっているし、寺が世界遺産に指定されているのもほんと、すごいです。
 ご本尊は真言宗ということで、かなり古い曼荼羅。靴を脱いで本堂へあがったのですが、冷蔵庫の中のように冷えた内部ではひんやりとした畳が非常に体にこたえ、ゆっくりと見れませんでした。本当に寒かったなあ。
 上の写真は僕が撮影してきた国宝・曼荼羅堂の屋根。瓦に若干色の違いがあるのは何度も痛んだ瓦を入れ替えているからだそうです。中でもちょっと赤い色をした瓦は天平時代からのものなんだそうで、そんな古い瓦がよく今も使えたもんだなと感心。
gangoji2.jpg
敷地には浮図田(ふとでん)という仏塔がたくさん並んでいて、結構見応えありました。素朴な感じで。
そんなに見学客も少ないのでなんかのんびりしている感じなんですよね。観光客でひしめいている東大寺なんかにはない落ち着いた雰囲気があって、素敵です。
 奈良には何度も行っているというのに初めて行った元興寺でした。紅葉の時季はもっときれいだそうなので、ぜひまた行ってみたいです。
Facebooktwitterredditpinterestlinkedinmail