僕の人生は何一つ予定されている物はなく、ただただ身に降りかかる現実の荒波にもまれながらやりたいことをやっているだけの日々を送っている。ただひとつだけ決まっていることがあるとするなら、僕が死んだ後に僕の骨は一心寺に入るということだけだ。
一心寺は大阪の通天閣がある新世界からほど近い、天王寺動物園の隣にある寺だ。ここは林田家の菩提寺というわけではなく(本家の菩提寺は堺市にある)、昔から墓を持たない「平民」が入る、庶民の寺なのだ(寺にはちゃんとお墓もあるけどね)。
一心寺には人骨でできた仏像がいくつもある。ミステリアスな場所としてテレビで紹介されることも多いが、行ってみると意外とオープンな雰囲気の寺だ。「天神山」という古典落語の舞台にもなっている。供養されるべき焼かれた骨が集まってくると、それを固めて仏像にし、寺にまつられる。だから仏像はどんどんふえていくのだ。
この人骨の中にはうちの爺ちゃんを始め、とにかく身内の骨のほとんどが入っている。みんなここにいるので、墓参りも簡単だ。だからきっと僕もここに入ることになる。
将来、僕がどんなに出世することがあってもそんなことは関係ない。所詮は平民の出、ここに帰って行くのだ。それが僕の人生の中の唯一の決定事項だ。