写楽行ってきました。

 かなり強引なスケジュールではありましたが、時間を作って上野の東京国立博物館へ写楽を観に行ってきました。制作活動期間がわずか10ヶ月という幻の浮世絵師。その正体については以前さんざんブログで吠えましたので、今日は見た感想を少し。
 世界中に散らばった写楽の浮世絵は、発見されているもので149種類(近年ギリシャで発見された肉筆画とか含めるともう少し)、そのうち30ちょっとが1枚しかないそうです。28枚の大首絵で華々しくデビューした写楽はやはりそのデビュー作が大変売れたらしく、それぞれ平均15枚くらいが残存してるとか。基本的には役者絵、つまり歌舞伎役者のブロマイドばかり描いていて、今回の展示では所在がわからなかったり他の理由で借りられなかった数点を除いてほぼ全部が展示されていました。
 10ヶ月という短期間の割には多作で、作風が変わることから制作期間を4つにわけて1期〜4期と名付けられています。後半になればなるほど筆致の勢いがなくなり、残存枚数も少なくなると言うのが写楽の特徴です。
 面白いのがやはり1期で、皆さんもよーく知っている写楽の浮世絵はこの時期のものです。立ち姿全体を描かずに上半身だけをクローズアップで描く「大首絵」で、紙のサイズも大判、多色刷りですがなるだけ色数を減らす工夫がなされています。
 背景は描かず、雲母というガラス質の石の粉で作った黒キラのベタ刷り。黒いですが光に反射するときらきらと光る成分が入っています。これは当時蝋燭の火の中で芝居を見ていた情景をそのまま表現しているともいわれていますが、制作期間を短くするのにも役立っています。
 やっぱり実物は版画ですから微妙な凹凸があって非常にいいですね。雑誌や図録で見るのとは印象が違います。色を乗せずに版木の形だけ写し取る「カラ刷り」らしきものが施されているものもありました。展示では同時期に役者絵で活躍した歌川豊国と勝川春栄と写楽の3人をを比較するような形で出品されていました。同じ役者の同じ役柄を並べると、その視点の違いがわかって面白かったです。
 豊国はやっぱり絵がうまいってのもあるけど、デザインセンスがモダンで、ちょっと現代人に近いセンスを持ち合わせています。バランス感覚が合理的で新しく、全体的に古くささを感じません。近代的なのです。春栄はもっと個性的で泥臭く、動きの少ない絵を描きます。全体的にはちょっと古くさいかも。写楽はというとデフォルメがはなはだしいのに描こうとしているポイントはやたらリアル。言ってみれば似顔絵のような視点があるんですね。西洋では肖像画家として評価されているみたいですが、ある意味そうかな。全然きれいに描こうとしていないところがいいです。構図も斬新なので、近代になって芸術としての価値が高くなったのは当たり前と言えます。
 でもすごいなこれ、と思わせる作品と、なんかインパクトが薄い作品とのギャップが激しくて、写楽複数人説があるのもうなずけます。近年発見された肉筆画はさらに弱々しい筆致で、僕は個人的に肉筆画は奈良にある類似したやつも含めて贋作ではないかと勝手に考えているのですが、僕らが考えている以上に写楽の正体には複雑な事情がからんでいるのではないかと思います。
 ただ、写楽の作品をここまでたくさん見られる機会は今後もそんなにないかもしれません。興味のある人はぜひ言ってみてください。

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