ボーカルのピッチ修正のノウハウ

プロのエンジニアは誰でも独自のノウハウというものを日々の業務の中で構築していると思うし、横のつながりで、同業者同士の情報交換というものがあって、あれがいい、これがいいという話も日常的に行っている。アマチュアよりも生きた情報が多い環境にあるから、よりベターな方法も知っていると思う。
 一方で「これはこうするもの」というように、みんなが判で押したように同じ方法をとる、いわゆる「定番」というべき方法もたくさんあるんだけど、ルーチンになってしまうことほど恐ろしいものはない。
 今、ボーカルのピッチ修正といえばプロの多くはMelodyneを使っている人が多い。これは和音であっても修正ができたり、エディット画面がやたら大きくできるから使いやすいのかもしれないが、古参のAuto-Tuneなどは「古臭い」といういわれのないレッテルを押されている感もある。たしかに後発のMelodyneは性能もいいし、アルゴリズムも新しいけど、ピッチ修正ではMelodyneが最上級という考え方には必ずしも賛同できない。
 相変わらずAuto-Tuneを使っているユーザーも多いし(ショートカットが豊富だしね!)、いいところも沢山あるんだけど、僕はいろいろ使った上でWave Tuneを選択することが多い。
Waves Tuneのユーザーは業界全体を見通しても少数派だと思うけど、それはこのソフトの性能が悪いからではなく、単に定番にならなかっただけだと思う。
 このソフトをあえて使うのにはわけがあって歌の微妙なヨレ、シャクリの調整の自由度が高いのと、音色が素直だということ。Melodyneはガッツリとおなるけど僕にはちょっと音色の変化についていけないことがある( Version4は興味津々!)。
 もう一つWaves Tuneのいいところは、プラグインでありながらrewireでつないで、エディット画面上から再生のタイムライン位置を変更できる。再生のスタート箇所を移動させるのはDAW本体に戻らざるを得ないソフトが多い中、これはありがたい。
 マニュアルを読まない人はこの使い方を知っていない人も多いのであえて説明すると、1つ空のAuxトラックを作ってそこにWaves Rewireをインサートし、Waves Tuneとリンクを貼っておくと、Waves Tunesのエディット画面で指定したポイントで再生ストート位置が移動する。画面は正直小さくて不便なところもあるけど、再生位置を変えられるならそんなに使いづらいこともない(早くウインドウサイズを変更できるようになればいいのに!)。僕は1小節のプリロールを入れて、カーソル位置の1小節前から再生するようにして使っている。

Waves Tuneのノウハウ

 これは僕のメシの種でもあるんだけど、そんなセコいことを言って教えない、というつもりもないので、オススメの使い方をお教えします。

ポイント1 フォルマントはNon Formantで。

      フォルマントはピッチを大きく変えても声が不自然にならないようにするためのものだけど、入れないほうが音がいい。はずして問題なければなしにしておく。半音くらいのピッチ変更ならなしでも大抵は大丈夫。

ポイント2 デフォルト設定では使わない

 デフォルトではSPEED:15、Note Transition:120、Ratio : 100だけど、これではがっつり直りすぎていかにも直しました、ってかんじがする。好みもあると思うけど、僕のお気に入りの設定はSPEED : 34、Note Transition : 88、 Ratio :69。これで全選択してApplyしてから気になるところを手動で直していく。場合によってはRatio 0から始めることもある。マニュアル調整が多くなるけど、自然さではピカイチ。
 よく音の頭がフニャっとずれることがあるけど、その時はノート選択後、Note Transitionの数値を下げていく。

ポイント3 ダブルはダブル側を強めに直す

 同じことを2回歌って重ねることを「ダブル」と呼んでいて、ダブルのトラックにはよく「W」と書いてあるけど僕はそう書かない。というのもWはダブルではなく「ダブル・ユー」が語源なので。だから外国人はWとは書かない。日本人の勘違い。というわけで僕は海外でよく使われる略号のDBLをトラックに使う。
 それはともかく、僕はダブルトラックのピッチを修正する場合、メイントラックとのピッチのずれが完璧に治ってしまうと楽しくないので、メインをゆるめに、ダブルをきつめに直すことにしている。逆の場合がいいこともあるので一概にいえないけど、ダブル分はあくまでメインの「エフェクト」としてとらえることにしている。

Waves Tuneのバグ

 気をつけなければならないのは、セッションの途中でテンポチェンジ情報が入っていると、それ以降のWaves Tuneのタイムライン表示があやしくなる。このバグはどんなにバージョンアップしても直らないのであきらめている。

wavestune

以上、もしお役に立てればと。

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長らくブログを更新しなかった理由

実は今年の1月末から体調を壊し、2月6日あたりから入院するはめになってしまいました。そして3月下旬に退院。腸の病気だったのですが、点滴のために若干メスで足の付け根を切った以外は手術もせず、薬だけで治しました。
体重が15キロも減って退院直後は歩くのもままならず、どうなることかと思っていましたが、今では体重もいい感じに戻り、食事に多少気をつけて薬を飲んでいる以外は今までと変わらない生活を送っています。

 今思えば去年は自分にとってはあまり良くないことがいろいろあった年で、入院はその総決算ともいえたわけですが、退院後はもういいことずくめで仕事も順調にいっています。ブログを更新できなかったのは入院のせいもありましたけど、退院後の仕事が忙しくてやってなかったせいもあります。喪が明けたような感覚です。

 本来はあまり忙しいのは病気にもよくないので、なるだけ無理をしないようにしていますが、また仕事に復帰できて嬉しいです。いい仕事ができていると思います。オーバーに言うなら一度死にかけた、という経験を大事にしてこれからの人生を見つめ直していきたいと思っています!

そして皆さんにお伝えしておきたいのは、コルグから発売されたArp Odysseyの再生産モデル、そのオフィシャルサイトにいくつかコンテンツを提供させていただきました。ご興味のある方はぜひのぞいてみてください(今後もコンテンツは増えていくと思います)。

ARP ODYSSEY

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[Pro Tools Tips] ナッジの数値を変えるショートカットが効かない問題

ナッジの量をショートカットで変更するにはマックの場合command+option+プラス / マイナス・キーですが、この-(マイナス)だけ効かないというケースがまれにあります。これは突然なるものではなく、OSを新しくしたりした時に発生しますが、日本語ではこの対処法があまり見当たりませんのでご紹介します。

システム環境設定を開いて「アクセシビリティ」を選んでください。

「ズーム機能」を選択、「キーボードショートカットを使ってズーム」をオフにします。

たったこれだけ。ここで使われるショートカット(command+option+マイナス)とかぶっているのが原因です。

プラスはかぶってません。

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ツール・ド・フランス、今日で最後。

 今ちょうどパリのルーヴル美術館の前を走ってます。パリの街は選手を迎えるギャラリーで埋め尽くされています。フランスの人にとってこのスポーツは一大イベントなんだなと思いました。今年はフランス人がいっぱい活躍したしね!
 シャンゼリゼ通りの石畳を走り抜ける。凱旋門をくるりと回ってまたシャンゼリゼ通りを下り、コンコルド広場を通ってまたルーヴル美術館の近くに戻る周回コース。今日はツールのためにパリの一番賑やかな場所を道路封鎖してる。
 今年で引退を表明した42歳のフォイクトがアタック。デコボコの石畳の上を爆走する選手たち。感動的な今年のツールもあと50km足らずで終わりです。

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stillichimiya ニューアルバム「死んだらどうなる」

山梨でヒップホップ界を揺るがしかねない事案が発生しています。 stuillichimiya(スティルイチミヤ)がニューアルバム「死んだらどうなる」をひっさげて大暴れしております。

田我流が在籍しているクルーということでご存知の方も多いと思いますが、シャレの部分とシリアスな部分をたくみに混在させながら独自の作品を作っている彼らですが、映像作品のクオリティの高さでも定評があります。今回ニューアルバムに合わせて5日連続で公開された5つのCMを全部並べてみたのでぜひ見てください。BGMはアルバムに入っている曲です。
 ま、パロディなんですが、知ってる人が見たらニヤッとする作品ですね。

(マスタリングは僕が担当させてもらいました)

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proun.net、実は20周年。

 このヴィンテージ・シンセサイザーに関するサイトは、旧名teknoboとして1994年にスタートしました。当時はまだインターネット創成期で、あまりやっている人も多くなかった最新のインフラだったのですが、海外ではわずかにシンセサイザーの情報サイトを立ち上げている人がいました。
 でも日本ではまとまった情報を提供している人がほとんどいない状態の中、僕はインターネットからいただいた情報の恩返しのつもりでteknoboをはじめました。 続きを読む

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Visage Live at 高円寺Highに行ってきました。

  数少ない僕の仲間たちw 左からRIS掟ポルシェ花形ハヤシ、自分。 Steve Strangeはまったく期待を裏切らない人でした。ちょっと握手してもらったけど、写真は一緒に撮らなかった。 でもこの人達は見て分かる通り、いつもながら楽しい人達でした。 続きを読む

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