Red Bull Music Academyのサイトに僕がシンセの記事を連載しています。
当初は3連載で終了するはずでしたが、思いの外好評ということで、第4弾も書かせていただきました。第4弾はサンプラーの歴史です。もし興味があったら読んでみてください。結構マニアックな話かもしれませんが。
シンセ今と昔 : 80年代前半、デジタル、リズムマシン、そしてMIDIの誕生
Red Bull Music Academyのサイトに僕がシンセの記事を連載しています。
当初は3連載で終了するはずでしたが、思いの外好評ということで、第4弾も書かせていただきました。第4弾はサンプラーの歴史です。もし興味があったら読んでみてください。結構マニアックな話かもしれませんが。
シンセ今と昔 : 80年代前半、デジタル、リズムマシン、そしてMIDIの誕生
皆さんこんにちは。ここでは10月15日発売のサウンド&レコーディング・マガジン2012年11月号に掲載しているARTURIA MINIBRUTEで僕がデモンストレーションを披露させてもらったので、誌面では取り上げなかったもう少しマニアックな補足的説明を加えたいと思います。
正直なところソフトシンセのメーカーが作ったハードシンセなんてどうなの? という先入観もちょっとあったんですが、これがいざ触ってみるとこれがすごく良かったわけですよ。端的に言うと、モジュラーシンセのような音がするミニシンセって感じです。6万ちょっとで買えるようなんですが、最初に入ってきた在庫は全部すぐにはけちゃったくらい大人気で、すごく売れているらしいです。
DSI MophoとかMONO lancet、Doepfer Dark Energyあたりが競合ってことになると思うんですが、僕はこの3つも大好きで、特にMONO lancetはヴィンテージっぽいところもあるしよかったんですけど、MINIBRUTEは全然違うアプローチで攻めてます。しかもコストパフォーマンスがはんぱないですし、Mophoみたいに作った音をメモリできる機能が必要なければこれはとてもいいです。
1VCO+サブオシレーターという構成のシンセというのは往々にしてシンプルな音しか出ないもので、わりと敬遠している人もいるかもしれませんね。MINIBRUTEはオシレーターの段階でさまざまな倍音のコントロールが出来るパラメーターを用意することによって2VCOなみの分厚さを実現していて、ちょっと今までの1VCOシンセの概念を覆している感じです。1VCOでも物足りなさを感じません。ただ2VCOは2VCOにしかできないこともあるので同じにはならないんですが、この1VCO感はかなりイケているんじゃないでしょうか。
フィルターもいいですよ。詳細は記事を見て欲しいんですが、キレのいいかんじで、アナログらしいかんじがします。ヴィンテージっぽくはないんですが、非常にモダンなサウンドです。かっこいいです。ハイパスとかのききも音楽的です。さすがIRCAMを生んだフランスの感覚というか、変態っぽい感じがあって、ここはアメリカ人の感覚をふんだんに盛り込んだデイブ・スミスのシンセなんかと比べると開放感のベクトルがずいぶん違いますよ。
BruteFactorはKORG MS-20でよくやる、ヘッドホン端子から取り出した音でVCOをモジュレートするテクニックと同じ事をやっているみたいですね。ディストーションのようなきつめの倍音が生まれます。これがあることでこのシンセがとてもアグレッシヴなサウンドを出すシンセだという印象が強く残りますね。ほんわかした音色より、ギラギラした音のほうが面白いです。こういう音はモジュラー・シンセなんかでは作りやすいですが、コンパクトなシンセでは実現できる機種が殆どないので、このMinibruteの個性になっていると思います。
全体的なSNもよくて、音源部分はフルアナログのわりにクリーンな印象があります。どこにも古くささがなく、あいまいな部分がありません。
デモ曲についてですが、今回はリズム以外は全部Minibruteで作って欲しいという編集部さんからのリクエストがあったので、そういう条件で頑張りました。ポリシンセじゃないので、コードで考える曲はちょっとやめようとしたことと、2分くらいの短い曲の中で誌面で説明を入れた機能をひととおり確認できるようにしたかったので、こういう感じになっています。ただありきたりのテクノとかにするのはちょっと嫌だったので、普通じゃない感じにしようと。そしてすこしだけ80s風味は入れてダサかっこいい曲にしたらこんなかんじになっちゃったんです。だから何風みたいな感じはないと思います。しいていうならキャバレー・ヴォルテールみたいなオルタナティブ・ファンクなのかな?
ベースは2つの音色が絡み合ってフレーズを作っていて、片方の音色だけしょっちゅう動いている感じになっているので、それで不思議な感じが出てます。時々わざと調性から外れた音を入れるのは僕は大好きなんだけど、それを多用してます。
うわものは思いつくままに乗せていったのでそんなに深くは考えてないんですが、 音色はそれなりに吟味して作りにくそうな音をわざわざ選びました。シーケンサーで鳴らしながら鍵盤を押してベロシティでフィルタ動かしたり。
同じシンセ一台でやるとどうしても同じようなキャラクタになりがちなので結構難しいんですけど、あまりダークな曲を作るのも読者の皆さんにどうかなと思ったので、明るい感じにしちゃいましたがどうでしょうねえ? コメント欄あけときますからなんか感想とか質問とかあったらぜひ書き込んでください。
ちょっと思いついたことをばらばらに書いたので文章にまとまりがないですが、また時間があったら文章を更新します!
あ、あと僕が関わっている9dwの音源もsoundcloudで公開しているものがありますからよかったら聴いてくださいね。
たまには老舗のシンセサイザーサイトらしい情報でも書いてみようかな(笑)
アナログ・シンセサイザーのメーカーとしてmoogと並び賞賛されているOberheimの生みの親、
トム・オーバーハイム氏の連載が日本語で読めます。
10年以上も前に池袋の楽器フェアの会場でご本人をお見かけしましたが、すぐ横でシンセサイザーをいじり回していた若者たちにもまったく気づかれることなく、代理店の人と話をしていました。すっごくいい人っぽい(笑)
80年代の中頃に数年間だけ製造されたドイツのPPG WAVEシリーズは当時はまだ新しい技術だったデジタル方式の音源を搭載したアナログとのハイブリッド・タイプのシンセサイザーでした。当時は200万円以上もする高級機だったこともあって、製造された台数もトータルで1000台ちょっと少量で、そのオペレーティング・システムも非常に手作り感のあるものでした。
メーカーの倒産後もPPG WAVEシリーズにはいくつかのバグに悩まされ続けましたが、オーナーはもはやその手の問題とは仲良く付き合っていくしかないものと諦めていたものです。
ところがPPGの倒産から20年近くの年月を経た今、ここにきてそのオペレーティング・システムをバージョンアップさせようと言うプロジェクトが始まっています。ドイツのHermann Seib氏の書いた新しいオペレーティング・システムはウィーンに拠点を置くVirtual Musicから発売されており、これまでのバグの修正はもとより、これまでになかった新機能の追加もおこなわれています。
従来のPPG WAVEシリーズの最終ROMバージョンはv6.0でしたが、現在Virtual Musicから発売されているものはv8.3。MIDIを搭載したWAVE2.2用、WAVE2.3用、EVU用のものがあります。最近これの2.3用のものを買ってみましたのでちょっとレポートしてみます。
日本からの購入には申込書をファックスする必要がありましたが、クレジットカードも使えるので問題なく取引ができました(オンラインではできないらしく、それがやや面倒くさい)。ファックスのあと受け付けたというメールが届いて、申込みから1週間ほどするとB5くらいのクッション封筒が送られてきました。中に入っていたのがROM4個と薄いマニュアル1冊のみ。ROMも外国らしく、ほぼむき出しに近い状態で入っていました。これでマニュアルどおりにROMを差し替えればオペレーティング・システムがニュー・バージョンにアップグレードされるというわけです。
まずこのv8.3と従来のv6.0との違いについてご紹介します。
PPGのウェーブテーブルの13番のうち、2つの波形が壊れていたというあってはならないようなバグが修正されました。WaveにMIDIを搭載する際にそのコードで上書きされてしまっていたことが理由らしいですが、コードを最適化することによって全体の容量を小さくし、問題を修正するためのスペースを作ったようです。
Waveシリーズではひとつの音に対してひとつのウェーブテーブルしか使えないのをどうにかしようと、「アッパーウェーブ」と呼ばれるウェーブテーブル領域を用意していました。ところがこのアッパーウェーブは電源を単純に入れただけだと変な音が出るだけでまったく使い物にならなかったのです。ROMのアップグレードなしにこの問題を解決するには、まずウェーブテーブルの30番を選んでから実際のプログラムをロードする必要がありましたが、この初期化の問題を修正しました。
2.3はディスプレイの”2.3″という数字の”3″にカーソルを合わせて2をタイプすると2.2モードに切り替わりますが、この際にアルペジエイターを使うとでたらめな音が出ていた問題を修正しました。
これによって内部のプログラムをMIDI SysExではき出させることが可能になりました。カセット・インターフェイスの設定において、CASS 6でSend All Data、CASS 7でSend All Program Data、CASS 8でSend All DRS Dataができます。
またPPG BusをMIDI経由でエミュレーション可能になったことで、現在開発を進められているWaveterm CやSoundDiverなどのアプリケーションとの接続によってウェーブテーブルの書き換えがMIDI経由でできることも現実に近づいてきました(MIDIインプリメンテーション・チャートが付いていますのであとはプログラム次第です)。
これはすごいことです。これまでMIDIを使うとなんだかノリが変わると感じていた人には朗報です。プログラムを最適化することで実現しました。
これまでモジュレーション・ホイールの位置はプログラムと一緒に保存されていましたが、どの辺に位置しているのかをあとで数値で確認する方法はありませんでした。v8.3ではディスプレイの空きスペースに数値でリアルタイムで表示されるようになりました。これがつくことで我が家ののWave2.3はモジュレーション・ホイールを上げても数値のMAXまで出し切っていなかったことが発覚しました(これはいずれ直さなくては!)。
1つ1つにシリアル番号をふっているみたいです。
ざっとマニュアルに紹介されている主な変更点を列挙してみましたが、僕もまだ全ての機能を試していないので詳細はこのくらいにしておきます。
さてインストールですが、これはPPGのパネルをあけて、中から基盤を取りだし、ROM抜きの工具でROMをソケットからはずし、新しいROMに差し替えるという作業をやります。抜かなければいけないROMは4つですが、これにほかのROMが隣接していてROM抜き工具のツメの先が入る隙間がなく、なかなか苦労しました。工具の先の引っかけるツメ部分の長さはメーカーによってまちまちですが、PPGにはなるだけ短いものを選ぶべきだと思います。ちなみにうちにあるのはツメが3mmで、これだと工具を全開にしてツメの片側だけを斜めからROMの隙間に潜り込ませないと入りませんでした。
送料含めても1万円しないくらいでお手持ちのWaveがこんなによくなるなら買わなきゃ損!って感じです。みなさんもぜひトライしてみてください。ROM交換にはリスクがつきものですがおすすめします。
AKAI MPCシリーズはかのLinn Drumの生みの親であるロジャー・リンがデザインしたMPC60からスタートした、ドラム・サンプラー型ワークステーションですが、ソフトシンセが主流の世の中に、これだけ健闘しているのは賞賛に値します。それだけ使いやすいということなんでしょうね。
MPC-2000のサウンドはややレンジが狭くヌケの悪さは気になるけれども最新機種はそのあたりもずいぶん改善されてきました。古いものがいいという人もいます。
ところがこのMPCシリーズ、同期というものが非常に苦手らしく、スタジオでいろんなトラブルに見舞われることがあります。個体差なのか、ファームウエアのバージョンのせいなのか、うまくいく時といかない時があったりしてやっかいです。たいていのトラブルは同期したときのMIDIの揺れ、あるいは同期がひっかからないという問題です。経験的に感じ得たトラブルシューティングを箇条書きします。
MPCシリーズにはMIDI INが2つありますが、MTC(MIDI TIMECODE)で同期させるときは”MIDI IN 2″に差したほうがスムースにいくことが多い気がする。
SMPTEオプションが付いているならMTCよりそっちで同期させたほうが正確。
MIDI CLOCKでの同期は手軽だけどやめたほうが無難(ノリがかわってしまう)。
同期を取りながら録音する場合、助走するために曲のアタマに4小節くらいの空白を付けること(2小節くらいあれば同期はなんとかついてくるけれども、3小節目のアタマあたりが若干ずれてしまうことがある。それもケース・バイ・ケース)。
MPC-2000ユーザーはタイムコードのオフセットの設定方法を知らない人が多いですが、Song Screen→NOWフィールド→[Open Window]で設定画面が出ます。
同期のスレーブにするときにはプレイボタンを押す必要はありません。
うまくいくときは何の問題もなかったりするんですが、何か僕も知らない情報があれば知らせていただければと思います。