モニタースピーカーの話

うちのスタジオのメイン・スピーカーは長年定番だったYamaha NS-10M STUDIO。これをCROWN DC300Aで鳴らしている。
アンプのボリュームはプロに改造してもらってバイパスするようにしてあるんだけど、通常モニターコントローラーでボリュームは調整してしまうのでこれで問題ない。古いアンプなので左右に独立したボリュームが付いているのも難点だし、ぴったりとバランスをあわせるにはこのほうが都合がいい。
長年アンプから出るハムノイズが気になっていたけど、電源のアースを浮かせたら普通に直ってしまった。もっと気づけば良かった。

NS-10Mについてはよく低音が出ないと言われていて、それがいやで敬遠している人も多いんだけど、慣れると不思議なものでこれが良かったりする。EQでいじればわかるけど35Hzあたりの低い音もすんなりと再生されている。決して切れているわけじゃなくてなだらかに下がっているだけなので、そのあたりが足りないとか多すぎるとかもNS-10Mで判断できる。ただローが出るスピーカーだとやっぱり低域の量感が全然違うので、確認のために別のスピーカーでも時々確認するけど、するとまた耳がリフレッシュされてNS-10Mで再生されるローの感じがつかみやすくなったりする。

どんな環境で聴いてもバランスを崩さない音というのが一番いいと僕は思っているので、ヘッドホンやラジカセなんかでもチェックするんだけどそろそろもっと小さなスピーカーでも聴いてみたいと思っていろいろ物色している。ただ、バランスのいい音というのはNS-10Mで聴いたときにすごくいい感じで聞こえる。これは不思議。ジェネレックとかKRKとかみんながよく使っているものも音自体は大好きなんだけど、結構だまされることが多くて、あれでミックスするとよそで聴いたときにイメージが違いすぎるから個人的にはあまり使わない。あいつらはすごく音のいいスピーカーで、ほんとすごいと思うんだけど僕の耳にはオーバースペックだ。実際よりいい音で鳴っている感じがする。馴れればまたあれはあれで仕事出来るようになるんだとは思う。ADAMとかも気になってるよ。

NS-10Mはほどよく地味で、いい音にしないといい音で聞こえてこない。ここが僕の好きなところ。しかもDC-300Aの相性がすごくいい。この組み合わせを最初に発見した人は本当に偉いと思う。先人の知恵だ。先日お客さんがDC300を持ち込んだんだけど、出てくるヒスノイズも音も結構違ってた。それもすごくよかったけど、個体差もあるかもしれない。結局は馴れの問題。
スピーカーケーブルも高いやつ、定番のやつ、いろいろ試した結果、ヴィンテージのWEのやつになった。多分60年代くらいのやつだと思うけど、細いわりにすごくバランスがよくて嘘みたいに音のつながりが最高。先入観がある人ほどこのケーブルのことを疑っている人もいるみたいだけど、僕はこれを耳だけで判断して決めた。なんでこんなに古くて細いケーブルがいい音がするのかは僕にもわからないけど、いい音なんだからこれいいよ、ってな感じで使ってる。ヴィンテージだから使ってますとか良いって言われているから使ってます、みたいなのは一番大嫌いなので、そういうのは信じてない。ただ、定番のものには良いものがあるのも確かだと思う。
プラグはオーディオテクニカのバナナプラグにしてあるけど、いいものがあったら他も試してみたい。

DC300Aに変えてから、まずこの音の良さにほれぼれした。76年くらいに作られた製品なんだけど、今でも最高の音を出している。当時60万円以上したんだもんね。いいはずだ。オーバーホールしてからさらに良くなった。
アンプに至るまでのケーブルは最初はBELDEN 8412を使っていた。これは僕のお気に入りのケーブルで、これもいろいろ試した結果。オーバーホールから戻ってきたらちょっと音の感じが良くなったんだけどちょっと音が変わった感じもあって、BELDEN 88760に変えた。これは見た目は違うんだけど8412とわりと傾向は似ていて、さらにシャキっとタイトになる感じも少しある。こっちのほうが今はよくなってこれを使っている。プラグはスイッチクラフトにした。スイッチクラフトがいいと言われている理由が最近ようやくわかってきた。プラグは結構音を変えてしまう要素なんだと思う。先日トモカのプラグに変えたらすごく明るくなった。それはそれでよかったけど、スイッチクラフトの方がナチュラルな感じがしたなあ。ハンダもそのうち凝ってみたいけど。今は普通に国産ものを使っている。
そう、88760はバランスで信号を転送しているんだけど、DC300Aの入力はアンバランス。最初は単純にコネクタで変換してやってみたりもしたけど、TASCAM LA40 MKIIで変換してみたら意外とよかった。たいして高くもない装置なんだけど、こんなものにモニターアウトを突っ込んでもすごくいい音で変換されるのには驚いた。優秀だね! これでいこう、と思った。左右のバランスの調整も簡単にできるし最高。アンプの直前までバランス送りになっているから、ケーブルの色があんまり付いていないのかもしれない。勝手な予想だけど。

スピーカースタンドはそんなに高くないやつを使っていて、インシュレーターも使ってない。インシュレーターは良いときもあるけど悪いときもある。とりあえずみたいな感じでインシュレーターを使うと案外良くないこともあるから僕はあまり信じてない。うちの環境ではなしのほうがいいと判断してなしにしている。ありも試した結果。10円玉みたいに薄いインシュレーターは好き。何万円もださなくてもそこら辺にあるもので効果的なインシュレーターになるものがあるかも。こういうのは値段じゃないと思う。
それよりもスピーカーの上にウェイトを乗っけてエンクロージャー自体を固定してやるほうがいい結果が出ることが多いので今はそうしてます。振動でずれないようにゴムを付けたウェイトを上に乗っけて。ただこれを頭ごなしに否定する人もいる。そんなの良くなるはずがないと。信じる信じないはアナタ次第ってとこかな。とりあえずみんなには聞いて判断して欲しい。何が正しいってのはないけど、先入観はたいてい不利な方向に働くなら無心でやってください。以上。

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DDPファイルからToastでオーディオCDが焼けるイメージファイルを作る【Mac編】

DDPをオーディオCDにして再生する方法は、これを偶然見た業界関係者からお褒めの言葉をいただきましたが、それなりに役に立ったのかなと感じてます。

ということで今度はDDPをToastで焼けるイメージファイルにする方法です。これはマスタリングずみのデータからクライアントが自分でCDRを焼いてサンプルを作りたいのだけれども、Toastで焼けないのかというリクエストからいろいろ試行錯誤してたどり着いたやり方で、こういうニーズがあるかどうかわかりませんがご紹介したいと思います。

たぶんほとんどの方はいったん焼いたCDRをマスターにして複製をToastで作っている、というパターンが多いかもしれません。もしくは冒頭のリンクにもありますとおり、DDPファイルを直接XLDでCDRに焼く方法がありますが、XLDはToastのように枚数を指定して複数枚を連続焼きする機能がありませんので、エンジニアでない方が作業するならToastのほうが楽ちんでしょう。それにCDRをマスターにしなくてすむので音質もよくなります。ここがキモですね。

ポイントはSDIIファイルにすること

DDPファイルをToastのイメージファイルにするには、まず現行バージョンのToast(10または11)がオーディオCDのイメージファイルとしているsd2fという拡張子を持ったSDII(Sound Designer 2)形式のファイルに変換する必要があります。10以前のバージョンではtoastという拡張子のイメージファイルになっていましたが、逆に現行バージョンでは扱えなくなっているようです。逆に言えば9以下のバージョンではこの方法は通用しないと思いますので要注意です(間違っていたらどなたかご指摘を!)。
実はこれもXLDを使います。

まずXLDでSDII形式のファイルを書き出させるには特別な拡張ファイルが必要です。オフィシャルサイトに行って、「Sd2f 出力プラグイン」というのをダウンロードしてください。 これをユーザーフォルダ内の~/Library/Application Support/XLD/PlugInsというディレクトリに入れます。それからXLDを立ち上げて下さい。

(↑最新バージョンでは標準でSDIIがサポートされました)

環境設定の「一般」タブで「出力フォーマット」からSound Designer IIが選べるようになっていると思いますので、これを選択。

 

 

XLDのSD2書き出し これで環境設定を閉じて、「開く」を選び、DDPデータの中からDDPMSというファイルを選択します。

今度はこんな画面が出てきます。

XLD画面左上から「一つのファイル(+cue)として保存)を選択します。これで「変換する」を押してください。
特別な設定をしていない限り、DDPMSと同じ場所に書き出された.cueファイルと.sd2fファイルの2つができていると思います。

で、cueのほうは捨てます。sd2fのほうだけToastで開いてみてください。お望みの結果が得られていると思います。

いろいろ試したわけではないので結果についての保証はありませんが、プリギャップとかも一応ちゃんと反映されているようです。

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真空管初心者

ついこないだから真空管のことをいろいろ調べ始めたら結構はまってきました。
それまで、あまり深入りする機会がないまま来ていたんですが、スタジオの機材が一時期不調なのをきっかけにいろいろ出てくる、深いい話が。
ところが日本語サイトで真空管の情報を扱っているサイトって本当に少ないんですよ。僕もシンセのサイトやってますからここはひとつ大きな態度で言わせてもらいたいんですが、日本では情報を持ってる人が赤の他人に情報をシェアするっていう考え方を面倒くさがる人が多すぎます。
確かにシェアしたところで、自分には何もメリットはないですよ。だけど誰かが一生懸命さがしていた情報かもしれないじゃないですか。誰かの役に立ってるならそれで良かったと思えたら僕はそれで十分やる意味ありますけどね。
そういう僕もインターネットから多大な恩恵を受けてますから恩返しですよ。情報とフェアに付き合えるし。
このままでいくと自分が真空管のデータベースとか数年後に作りそうな勢いです。誰か頑張って下さい!

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DDPデータをオーディオCDにして再生する方法【Mac版】

最近はCDのマスターをDDPという形式で工場に納品する事が多くなりました。DDPはCDの音を極力劣化させない納品形態として普及していて、マスタリング専用ソフトの中でもこのフォーマットで書き出せるものが増えてきました。
ところがこのDDPは一般的にはまだまだ知名度が低いし、レコード会社の中でもディレクター・レベルの方でないとDDPという言葉さえ聞いた事がない人もいるくらいです。
このDDPの取り扱いになれていない業界の方々は、インターネットなんかで転送されてきたDDPデータをなんとかして自分のパソコンで再生できないものかと四苦八苦することも多々あります。できればCD-Rに焼いて、実際の製品と同じようにCDプレーヤーで聴けたらいいのに、と多くの人がそう思っている事でしょう。

実はMacでこれを実現する方法があります。X Lossless Decoder、俗称XLDというソフトを使う方法です。
このソフトはドネーションウエア、つまり使って気に入ったら寄付してねというたぐいのソフトでありながら、非常に多彩なオーディオの変換機能を持っていて、しかも作者は日本人なのです。こんな優れたソフトをMacで開発しているなんてほんとありがたい話です。

left このXLDはDDPを構成するファイルのひとつであるDDPMSを直接Cueファイルのように開くことができ、そのままCD-RにオーディオCDとして焼いたり、mp3やWAVにエンコードしたり することができます。古いバージョンではオーディオCDに焼く段階で問題がありましたが、最新版では修正されています。頻繁に更新されているソフトで日々改良が加えられています。
インターフェイスはいたってシンプルで、ぱっと見はそんなにいろんなことができるようには見えないかもしれませんが、はっきり言ってこれはオーディオを扱う人にとっては必須アプリといっていいでしょう。ぜひ試して気に入ったら寄付してあげましょう!(僕も若干ですが寄付しました)

DDPからオーディオCDが焼けるのはMac版ではこのソフト以外では高価なマスタリングソフトだけしか知りません。ウインドウズでも同じ事をするには結構めんどくさいことをしなければいけないというのにMacで簡単にできるなんて感動です。
またオーディオCDからリッピングしなければいけない時にも”AccurateRipデータベースで整合性を確認する”モードがあり、通常のリッピングよりもより厳格に作業を行えます。これも使える機能です。

2014年3月7日追加:こんなソフトも安価であります。 http://hofa-plugins.de/pages/start_en/hofa-ddp-player-player-maker_en.php

DDPファイルからToastでオーディオCDが焼けるイメージファイルを作る【Mac編】

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NAMM

Shing02さんのブログに今年のNAMMショーの様子が映像でアップされています。

彼オリジナルの映像で楽器のこととかわからない人が見ても面白い、まさに
音のお祭り。
そして明日22日は9dwがまたしても新しいセットで「船上ライブ」を行います。
東京湾に浮かぶ船の上のイベントで、船の上でヴィンテージ・シンセがCV/GATEで鳴っているのもまた面白いかなと言うことで出演します。ドレスコードがあるって書いてるけど、出演者が一番汚い格好してるなんてことが…さすがにサンダルで行くのはやめます。寒いし。
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モニターケーブルとしてふさいわしいケーブルは?

 巷ではあることないこと、いろいろ書かれているモニター・ケーブルですが、実際にいろはスタジオでいろいろ試聴した結果をご紹介したいと思います。ちゃんとした環境で比較していますので、それなりに客観性/説得力はあると思います。

 モニターケーブルはどれ一つとして同じ音がしません。ケーブルによってまるで違うんですが、リファレンスケーブルがそんなに違っていいのかと思ってしまいますよね。ごもっともです。しかし実際には完全にフラットなケーブルなんて1本ありませんでした。それでもいい、悪いはあるわけです。やはりケーブル選びは適当ではだめ、というのが結論です。スピーカーによって合う合わないがあると思います。そのへん、ここで書くことが何かの参考になればと思います。

Mogami 2549
 モガミのケーブルは比較的どれもフラットで好みですが、みなさんは4芯構造の2534をよく使われるみたいですね。僕にとって2534は音はいいのですが若干おとなしい感じがする印象があるので2549のほうが好みです。
 2549はモニターケーブルとして使うにはいささか地味な印象がありますが、いいケーブルだと思います。ガツンとくる派手さがありませんが、ピーキーな環境ではいい結果が出るかも。なにしろ値段が安いです。
Belden 1192A
 国産のケーブルに近いフラットな印象。スピード感があってちゃんとスピーカーを鳴らしてくれます。低域があばれず、中域の表現力がすばらしいです。ただ高域はやや地味。だから全体的には中域に密度が集まっているようなかんじがあります。打楽器のアタック感がちゃんと見えて、ボーカルのニュアンスが見えやすいですね。長く聴いても疲れませんが、全体的には面白くない音。でもミックスがしやすそうな音ですね。慣れてくるといいかも。ローがぼやけがちな環境ではいい結果がでると思います。高いポテンシャルを持っていてすすめられるけどベストといえるかどうかは微妙。でもFostex NF1Aでは中域のちょっと引っ込むスピーカーのクセを補完してくれました。
Belden 8412
 低域にクセがあるとかないとか、このケーブルは歴史が長いゆえにいろいろ言われていますが、どんな用途に使っても結構いいケーブルだと思います。たしかに8412のハデな方向へ転んでいくクセがあるのですが、それがむしろかっこいい。かっこよく音を聴かせてくれるから気持ちいいですね。中域のトランジェント感はやや抑えられてドンシャリ傾向はあります。低域はこのケーブルがベース用として使われることがあるのがよくわかるくらい、いい感じに出ます。1192Aのほうがモニターに向いているという意見をどこかで聴きましたが、一概にそうも言えないなというのが今回の試聴でわかりました。
Belden 88760
 真っ赤で心配になるくらい細いケーブルですが、実は8412の改良版といわれています。でもケーブルの構造はかなり8412と違います。8412より高いし。とはいえ音は実は意外と8412的です。それをもっとヌケをよくした感じ。広域が美しくてシンバルなどがいきいきと聞こえ、中高域の密度が高くていい音ですが、8412と比べると少しだけ派手かも。ローもしっかり出ますが、タイトにまとめあげる感じで、8412のように低域のうち放たれた開放感はさほどありません。モニター用として十分検討に値するケーブルですよ。
また機会があれば他のケーブルについても書きたいと思います。では。
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ハードディスクはとぶ。

 先日久々にハードディスクを飛ばした。つまり壊したってこと。使っている最中に電源が落ちる現象が起き、バスパワー(接続ポートから電源が供給されるタイプ)のポータブルハードディスクだったので、接触不良かなと思った。ケーブルをいったん外してつなぎ替えるとまた何事もなかったようにマウントするからやっぱりそうかと。その後ディスクチェックをしても問題なし。

 それが何回か続いてなんか調子悪いなあと思っていたら、遂に接続し直してもマウントしなくなった。ディスクチェックのソフトからもハードディスクが認識できない。逝ってしまった。
 実はまだ保証期間がきいていることに気づき、買ったビックカメラへ出した。
 数日後修理完了との電話があった。
 ところでビックカメラの修理カウンターはなぜかソフマップになっている。ソフマップってビックカメラになってるのか。とにかく壊れたハードディスクは新品になって帰ってきた。FireWire400のポートの付いた故障品は最新の800になっていた。
 ところが自宅に帰ってつないでみるとなんとその新品が早速故障。最初の10分はまともに動いていたのにマウントしなくなった。
 再度雨の中を修理センターに持って行ったら、店頭に在庫があったらそれを持って帰ってもらうという。なんだ、サービスいいじゃないか。ところが「この製品は生産完了品でして、メーカーに出さないとだめなんです」とのこと。
 それではしょうがないと、預かり票をもらって駅の方へ歩いていった。しかしよく考えてみるとFireWire800のやつはこないだまで店で売っていたことを思い出した。もしかしたらFireWire400の型番で在庫確認していたんじゃないか?
 携帯で問い合わせると案の定思った通りで、やはり在庫があるというのでまた取りに戻った。
 新しい店頭在庫は調子もいいし、書き込みも早い。よかったよかった。壊れたディスクの中身はさほどダメージのないデータだったけど、やっぱりバックアップは忘れちゃいけないなと思った。
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iLokが壊れるとこうなる。

2009年にiLokを壊してからはや13年。今度はiLokを紛失してしまうという大失態をおかしてしまったため、記事を書き直すことにした。

 ここに書かれていた記事もさすがに古くなったため、僕が経験した、あるいは知っていることで書き直すのだが、壊れた場合の対応については現在もさほど変わっていないはず。だけど実際に手続きをやったわけではないので間違いがあるかもしれないということはお伝えしておきます(自分で間違いに気づいた場合は修正します)

まずiLokトラブルの手続きには3種類ある。

1.壊れた
2.紛失
3.盗まれた

僕が経験したことのあるのは1と2だけなので、これについて書きます。
まず壊れたときと無くした時の違いってなんだということ。壊れてても別に新しいの買うんだからなくしたことにすればいいんじゃないのと思った人は大間違い。僕は旅行先でどっかにいってしまったわけだけど。

壊れた時

 壊れたらまずその壊れたキーを米国のPace本社で郵送することになる。バキバキに割れていてもかまわない。おそらくは中身をなんとかして見るというより実際のキーを持っているのかを確認するためかもしれない(想像)。以前郵送にかかった費用はEMSで1200円。今は若干違うのかも。でも追跡ができるやつで送ったほうがいいと思う。日本とアメリカの郵便事情は同じではない。
 本体を確認したらそのキーに入っていたライセンスをPaceがライセンスマネージャーのAvailable項目に復帰させてくれる。あとは新たに用意したiLokキーにそれをインストールするだけ。

なくした時

 紛失の場合は当然ながらiLokキーは送れない。しかしキーに入っていたライセンスはiLok/Pace社が復帰してくれないのだ。ここが大きな違い。キーの再発行の権限はそのライセンス発行者が持っている。修復の場合は再発行ではないってこと。ってわけで復活させたいプラグインのメーカー1社ずつに自分から連絡をとっていくことになる(おそらく盗まれた場合も同じことをする)。ちなみに手続きをするとあとからキーが出てきても復活はできないので要注意。そのキーを初期化して別のものを入れようなんてこともできない。キーの固有IDで弾かれる仕組みだ。
 まずライセンスを再発行してもらうにあたってRMAという手続きがiLokのウェブサイト上で必要で手続きが終わるとRMA番号が発行される。これが必要なメーカーもある(気にしてなさそうなメーカーもあった)。
あとで知ったことだが、僕がRMAの発行手続きをすると、対象になったプラグインメーカーに自動的に僕の情報が行くようになっているようで、気の利いたメーカーは向こうから先にメールを送ってきてくれた。これがメーカーによって対応が全然違ったのでプラグイン別に対応状況を書いておく。

Avid Pro Tools

アカウントにログインしたら専用の手続き画面があった。RMA番号やiLokアカウントを入力してどのライセンスを復活させたいかを選択。どうやらパーペチュアルは手数料無料で、アニュアル・アップグレード系の場合だけ4400円出してサポートコードを買わないといけないみたい(間違ってたら指摘してください)。
結果的に誰ともメールでやりとりはしてない(当然向こうからの連絡もなし)

Melodyne

速攻で向こうからメールが来た「復活させるライセンスはまたiLokを使いたい?それともオンラインでアクティベーションさせる?」「じゃあオンラインでお願いします」これで速攻復帰。そこからメールは何も来ないが対応が速い!

sonnox

向こうからメールが来た。だがプラグイン1種につき10ポンドの手数料をもらうと。もうひとつのキーにライセンスを1個うつしてあったからもういいやってことで頼まなかった。

XILS 5000

こちらからメール。やっぱりiLokから連絡は来ていたもよう。中の人いわく「よくわからないんだけど、iLokがフルタイムのライセンスを発行してくれるのかな。そうじゃなかったら僕が発行するから言ってね」全然わかっていないがここのメーカーの中の人は融通のきくナイスガイなのだ。 他にもいろいろあったがざっとこんなかんじ。 Zero Down Time  これは壊したり無くしたりしてもすぐに一時的なライセンスを発行してくれるサービスで30ドル。なくしてからでも入れるがデポジット期間の1週間は何も発行してくれない。すぐにでもほしいという人は追加100ドルで即時発行。ただし返品不可(しないと思うけど)。
 臨時発行のライセンスは半月ぐらい有効なのでその間にメーカー連絡するなり本社へ郵送するなりをやってしまおうって感じ。
 あと決済の最後の方で新しいiLokをうちから買うかって聞かれますが、日本で買ったほうが安上がりなのでそれNOを選びましょう。
あと無くした状況を書く項目が合ったので僕の場合はI lost my key while traveling.とだけ書きました。 以上がiLok復活のやりとりの全て。以下は2009年の時に壊れたキー修復にかかった費用です(現在は料金や修理手続きが変わっている可能性があります) Pace特急料金 100ドルゼロ・ダウンタイム 30ドルライセンス修理費 39.95ドルEMS送料 1200円  トラブルを避けるために:USBの抜き差しに耐えられる回数は1500回

  USBは簡単に抜き差しができる便利な規格だが、実はジャックとプラグにはどんなものにも抜き差しに耐久性がある。USB規格の公式なものだと1500回程度しか耐えられないということだ。意外と弱い。おそらく初期のiLokもこれくらいの耐久性しかなかった可能性もある。その後8倍の12500回まで耐えられるものが登場したが、iLok2にはこうした高耐久性の部品が使われているものと思われる。3は当然もっと耐久性が高い。
 ただひとつ言えることは、トラブルを避けるためにもひんぱんにiLokを抜き差しして使う人はこの問題を真剣に考える必要がある。手っ取り早い方法は、10cm程度のUSB延長ケーブルに付けたままiLok2を使うことだ。抜き差しは延長ケーブルで行い、延長ケーブルとiLokは常に接続したまま持ち歩くようにする。
 もうひとつは、特に挿した瞬間に流れる異常電流、とりわけハブの電力不足によってiLok内の回路が壊れる危険性もある。USBハブに挿す時はなるだけバスパワーに気を使うべきだ(はっきりとはいえないが、これらしい問題でiLokを壊した人が昔いた。今のキーは対策が打たれていると思うけど)。とにかくiLokが壊れると英語で何度もメールを送ったり、金を払ったり、大変だよってお話でした。
ilok復活の手続きはこちらから

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iTunesのエンコードで最適な設定は?

 iTunesのエンコードの設定、とりわけAACを選ぶべきかmp3を選ぶべきかについて書かれているサイトを検索すると結構あるんですね。みなさんいろいろ実験をされているようです。

 あるサイトでは実際にソフトウエアで計測した周波数のグラフをもとにどちらがいいかみたいな事をやっておられて、科学的な結論を出しています。
 ただ、それ自体を批判する訳ではないのですが、所詮音楽というものは人間の耳の感覚に心地いいか悪いかであって、周波数特性がいいか悪いかではないという事は、長年サウンドエンジニアをやってきて思うところです。どう考えてもスペックの低い機材の方が音がよく聞こえる事もありますし、やっぱり高い機材は違うなと思う事もあります。結局耳で判断するしかない訳です。
 そういいつつも長年僕はストリーミング・オーディオの世界に深く足を踏み入れないまま今まで来てしまい、どのエンコードが優れているかという話は人の噂や先ほど話をしたサイトなどの情報をほぼ鵜呑みにしていて、いうなれば適当にやってきたわけです。そこで今回実際に自分で試聴テストをやってみましたのでみなさんに報告したいと思います。意外な結果が出ましたよ!
 まず実験方法として、 MacBook Core2Duo 2.4GHzでiTunes 8.0.2を使い、CDから同じ曲をAAC / mp3でそれぞれ128kbps、192kbps(計4種)の設定で取り込んで、そのファイルをiTunesで再生して聴き比べました。音はMacからそこそこいいオーディオ装置へラインで出してモニターしました。
試聴に使った曲はDepeche Modeのアルバム”Playing The Angel”に収録されている”A Pain That I’m Used”で、これはメローなAメロとガツンと来るサビからできていてダイナミックレンジの感じを見るのにももってこいでした。じゃいよいよレポート。

AAC / mp3 128kbpsでの試聴比較
 これはかなり明らかな差が出ました。結論から言うとほとんどの人がmp3の勝ちというでしょうね。AACではハイはmp3よりも出ている成分があり、ハイハットなどがちゃんと聞こえますが、同時に低音も引っ込み、ボーカルも小さく聞こえるため、ハイ上がりながらもやや地味に聞こえました。またAACは広がりを重視した感じでmp3は真ん中にちょっと定位が寄った印象があるのですが、どちらにしてもこの品質では位相がかなり乱れた感じに聞こえますので広がっているAACのほうが逆にへんな部分が強調されて心地よくないのです。
 ハードウエア的なスペックで見るとこのビットレートではmp3のほうが高域がのびているという報告がありますが、聴いた印象ではAACのほうがハイが若干強調されて聞こえます。ただハイミッドが引っ込んでいるのでフラットな印象がAACにはなく、素直さに欠けます。あとAACは静かな音になるとずいぶんおとなしい音になってしまいました。つまりAACは全体的に地味です。

AAC / mp3 192kbpsでの試聴比較
 128kbpsに比べると2つの差は随分小さくなりました。そこそこ耳に自信のある人でないと聞き分けられないかもしれません。しかしシビアなレベルでそれを言うなら、はっきりとした差が出ました。
 AACは128kbpsの時にあったような低音の引っ込み感がなくなりますね。不思議な事に。全体的にフラットな印象です。ただ全体的にはmp3に比べると地味。mp3はサビのガツンとくる感じがちゃんと出るのですが、AACはのっぺりとした地味な印象が拭えません。おとなしいAメロはより暗い印象が出るものの悪くはありません、しかしサビにきても上がりきらずに終わる印象があります。表現が地味なんですね。mp3もAACも定位感もそこそこ再現されているのですが、やっぱり特有のざらつきは若干あります。
 クラシックのようなソースで試せばAAC 192kbpsはありかもしれませんが、オリジナルのCDの音質の印象を崩さないのはmp3のほうでした。
結論。iTunesでは128でも192でもAACよりmp3のほうが好印象ということになりました。192ならAACもありですが、明るいソースでは落ちた感じになると思います。
それと128と192の差ですが、思ったほど違いはないんですね。もっと差が出ると思ってましたが、音質にさほどこだわりがないなら128もありかなと思いました。だらだらと長文を書きつつも、これって聴き比べないと気にならないくらいの違いしかないな、と感じているのも事実です。ただ僕は、まるでスーパーの新鮮なマグロの刺身に防腐剤の匂いが付いてしまったような感覚をmp3に感じてしまうのです。どんなにオリジナルに近いと言われても、ほんんの少しだけ付いてしまった「デジタル臭さ」がどこまでもぬぐい去れず、結局それが気になって落ち着いてお刺身が食べられないのです。それは流し聴きなら僕でもまったく問題ないレベルですが、そこは音楽を聴くスタイルによって判断が分かれてくるかなと思います。とりあえず僕と同じような人はなるべくもっとハイビットレートでエンコードしておくべきだと思います。
以上の結果は僕の耳で確かめた印象ですので、実験の状況次第では少し違う結果が出る事もあり得ます。ただ当面はmp3でやってみようという方向性が自分自身で確かめる事ができたので僕的には意味のある実験になりました。みなさんにも参考になれば幸いです。
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KB Covers for Pro Tools

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ちょっと前にMacBookを買ってポータブルなPro Tools環境を手に入れていたのですが、ショートカットがキーボードに書いてあったらいいのになと思って探してみるとこんなにいいものがありました。今月に入ってJISバージョンが出たので買っちゃいました。Pro Tools用のショートカットが消えにくい印刷でシリコンのゴムに書いてあるキーボードカバーです。汚れも防げるし、しっとりとキーに張り付いている感じで、タッチ感も損なっていません。結構いいですよ。
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