日本ではまったくなじみのない自転車ロードレースという競技は、山岳地帯を含む公道を自転車で走るというもので、ヨーロッパでは実はサッカー、F1に次いでメジャーなスポーツだ。
日本で流行らないのにはいくつかの理由があるけど、その一つは、公道をレースのために封鎖するのが難しいと言うこともある。マラソンくらいに注目度が高ければそれもできるけど。
もうひとつは自転車文化そのものが日本には根付いていないこと。ヨーロッパでは車道、歩道の他に自転車道のある地域は多いし、ない場合でも車道を走る自転車のことをウザがる自動車はヨーロッパには基本的にいないらしい。自動車も自転車もフェアな乗り物という意識が一般人の間に根ざしているようだ。
それでも日本は今自転車ブームらしい。100年以上の歴史を誇るツール・ド・フランスのようなレースも今は日本で生中継が見られる。スカパーなどで有名なスポーツ専門チャンネル「J SPORTS」が自転車ロードレースに力を入れてくれている。全ステージ、ハイビジョン生放送なんてやってるのだ。本国よりしっかり放送しているらしい。トラック競技は競輪以外はあまりテレビで目にしないけど、ロードレースは注目度は高い(僕はトラックも少しチェックしてるよ!)。
かつてツール・ド・フランスはNHKが放送権を買っていて、80年代にもNHKで放送されていた(ただし生中継ではなかった)。今でも総集編という形でほんのさわりだけ、2時間番組などを作ってツール・ド・フランスを放送している。
そこで観ていて気になるのが選手の呼び名がNHKとJ SPORTSではかなり違うこと。たとえばスイスのイケメン・ナショナル・チャンピオン、ファビアン・カンチェラーラ。雑誌や新聞が取り上げる場合も彼の名は「カンチェラーラ」だけど、NHKだけはなぜか「カンセララ」。カンセララ?なんだそれ。すごく違和感がある。もうひとり、ノルウェーが生んだ超絶スプリンターのトル・フースホフト。日本人には発音しづらい名前だけどNHKは彼の名前を「フショブト」と呼んでいる。アルファベットで書くとHushovdだけど、フショブトですか? なんでしょうそれ。実はJ SPORTSもちょっと前まで彼の名前を「ハスホフト」と呼んでいたことがある。なんでそんなに変わるのかわからないけど、J SPORTSはなるだけ現地の呼び方を踏襲しようとしているようだ。ちなみに自転車の世界の公用語は一応フランス語ということになっているのだけど、実際には自国の呼び方にならうことが多いのかも。
NHKはよくわからないけど、どことなく「民放のマネは死んでもやらない」と思っているかのように感じる。わざわざ民放の呼び方とカブらないような言い方を付けて独自性を持たせようとしているのだろうか? 大手通信社の呼び方にのっとっているという話もあるけど、国営放送である格上のNHKが民放ごときの考えた呼び名なんかに準ずるものか、と言っていたかどうかは定かではない。
しかしここにきてカンチェラーラを「カンセララ」と呼ぶことにさすがに違和感を感じているのかNHKも「カンチェララ」といい方を変えてきたらしい。もうそこまで言ってるんだったらカンチェラーラでいいじゃん、と思うんだけど。どうしても合わせたくないらしい。彼はスイス国籍だけど、カンチェラーラという名前はイタリア系だから、実際にはカンチェッラーラのほうがより正しいかもしれない。いずれにしてもツール・ド・フランスの表彰台に上ったときの司会者の呼び声は明らかに「カンチェッラーラ!」だったよ。間違ってもカンセララとは言ってなかった。
もひとついうならオーストラリアのロビー・マキュアンはマクユーイン。僕らファンは基本的にJ SPORTS観て盛り上がっているんだから、NHKも恥ずかしがらずに早くJ SPORTSの言い方に準じてくださいな。