日本の自転車文化に一言。

スポーツ系自転車に乗ってかれこれ10年になろうとしてます。晴れていればとりあえず自転車で通勤してますが、僕の通勤距離は片道16.5km。往復で33kmです。家の場所をはっきり公表してないので詳細は書けませんが、だいたい新宿〜立川くらいの距離を毎日走っている計算です。 本気で走ればですが、だいたい片道45分でいけます。これは信号は無視しない、というルールでの最速で、危険を冒さないスピードでの限界値です。信号がなければ減速もないので多分35分を切れます。ドア・ツー・ドアなら電車よりも速いですね。

そんな距離を自転車で走ったことのない人はすごいですね!なんて言うんですが、そういう人がマラソン大会なんかに参加していたりするから変です。マラソンのほうが大変でしょw そもそもママチャリとロードバイクはスピードも消費するエネルギーもぜんぜん違う乗り物だということを殆どの人はわかっていないと思います。というか、自転車を文化とは考えない人が多い、というのが日本の現状です。 自転車文化の先端を行くヨーロッパでは都市ごとに自転車用レーンが整備されていて、自転車ごと乗れる電車がある場所もあります。都市そのものが自転車と自動車と歩行者が共存できるような構造になってるわけです。これは自転車の地位が日本より高いために実現していることだと思います。 自転車が発明されたのはイギリスですが、主にヨーロッパで普及してきました。今では北米も自転車はすごい人気です。日本では「自動車になれない貧乏な人が乗る乗り物」という意識を持っている人もいたりして、自転車というものは人力でこがなければいけない、まったくかったるい乗り物だという認識が一般的です。長距離をそんなもので移動するなんて考えにも及ばないのかもしれません。見えっ張りな人なら電動自転車じゃないとお金がないと思われるから恥ずかしいと思ってます。 自動車と同じ道を走れば明らかに自動車からは「格下」の扱いを受けます。自動車の走る道を自転車が使わせて頂いている、というわけです。 これはヨーロッパとは真逆の考え方です。そもそもヨーロッパでは自転車は「イケてる乗り物」という扱いを受けていますし、自動車のドライバも自転車乗りの存在を認めており、道も譲ってくれます。日本のように邪魔者扱いを受けていないというのです。思うに、ヨーロッパは馬の文化で、それが自転車に取って代わったわけですから、今でも乗馬の感覚で自転車を捉えているのかもしれません。「またがる」という機能も完全に馬ですもんね。 一方日本では都市の構造が「職住近接」的、つまり住んでいるところと仕事場が近接している街の作りになっていて、馬になんか乗らなくても歩いて済ませられるように街が作られています。その状態から一気に自動車が普及して道を走り始めたため、自転車がさほど普及しなかったのです。道路の問題が大きいです。 日本での自転車の特異性は「ママチャリ」にも現れています。ママチャリは日本にしか存在していないのですが、最近は海外に進出しているという話もありますけど、まだまだ日本独自の文化とも言えます。 自転車は人間工学的にいうと、ペダルに足を乗せた時にちょうど足が回りやすいようにサドルの高さを調整すれば、サドルは想像以上に高い位置に来て地面には足はつま先ぐらいしか付きません。この状態でハンドルを握れば自然に体は前傾姿勢になり、上半身の重みの半分は腕で支えるような形になります。 ところがママチャリはこのポジションをとりません。殆どの人が限界までサドルを下げ、ベタ足が地面につくようにセットします。シートポスト(サドルの下の棒)はほとんど顔を出しません。これでは膝が90度以上に曲がってかえって足が疲れやすくなるはずですが、そもそも近距離しか乗らないので大した違いはないのです。昼間に銀行にお使いに行くOLさんとかがこのポジションでよく乗ってますね。 上半身も当然垂直に立ちます。上半身の重みをすべてサドルで受け止めることになるのでサドルはフカフカのクッションにしないとケツが痛くなります。ですが、前傾姿勢になった時のような不安は解消されます。つまりママチャリポジションは合理性よりも安定感を優先したものであるということです。 このポジションは転びそうになってもすぐに地面に足がつくので安心感はありますが、やはり中長距離の走行には向いていません。とにかくケツが痛くなってしょうがありません。足の関節も痛くなってきます。サドルが低すぎると足の関節には負担がかかってしまうのです。 それでもこのポジションは日本で最も受けいられてきたのです。 ところが東京の街なかで時々見かける自転車に乗った欧米人の子供を見ると、かなり小さな子でもサドルは適正ポジションにしてあって、ちゃんと前傾姿勢です。ヘルメットもかぶっていて、自転車を完全にスポーツ的な意識で乗りこなしています。子供の頃からそういう意識で自転車と向き合うことを親から教わっているのでしょうかね。足も地面にはつま先しかつきませんから、信号で停まるときはサドルの前に降りています。完璧な自転車の乗り方です。 日本人にとって、自転車は馬に乗る感覚というより、座椅子に座っている感覚なのかもですね。これが正しいポジションが普及しなかった理由かもです(絶対異論はあると思います)。 政府も自転車に特別な注意を払ってこなかったので、適当に歩道を走っていますし、逆走も当たり前、メールを打ちながら無灯火で走ったりするやつもいます。マナーが悪いのは法律が野放し状態だったからです。 自転車は環境問題にもやさしいですし、自転車レーンと駐輪場が普及したら、都心では特にマイカー通勤する人が減少してCO2の排出量を確実に減らすことができるはずなのですが、自転車文化がそもそもそういう具合ですから望めそうもありません。谷垣元自民党総裁もロードバイク乗りですが、彼でさえ自転車の普及で実績を上げた形跡もほとんど見当たりません。いまさら何が変わるとも思いませんが、自転車にもっと関心を持ってくれる人が増えたらいいなと思います。