村山槐多

 うー、ここ2ヶ月は正月の連休をのぞいてまったく休んでいない。家に帰ってくる時間はてっぺんを越えることも多い。でも今がんばんないとだめなんすよ。ふー。でも毎日充実してます。
 去年の7月に雑司ヶ谷霊園を散歩して村山槐多(かいた)の墓石を見つけた話をブログで書いたんだけど、今日はまたその槐多の話。
 槐多というのは横浜生まれの大正時代の画家・詩人で、22歳の若さで死んだ。田端や代々木に住んでいたこともあったらしい。奇行が目立ったことでも有名だった。自宅の壁には意味不明の文字が書き殴られ、障子の紙はすべてトイレ用に使ったためになくなり、窓から残飯を投げ捨てていた。オカリナを吹きながら道を歩いたというエピソードもある。そして年下の美少年に書いたラブレーが残されている。内容はこんなものだった。

美しいあなたに、こんな手紙を書けるか
と思ふと嬉しくて耐らない。
どうぞ読んで下さい。

白状しますれば僕は君が慕はしくて耐らない。

確に僕は君に戀して居ます。

少々滑稽だけど僕は君のことを考へるときつと眞赤になります。
ひとりではづかしくなる。
あなたはあなたのおもかげは絶えまなく僕の物思ひに上つて居る。
美しい物を見た時の聯想はきつと
あなたです。

僕は君が大好きで世界で一番美しいと思つて居る。

何となれば君はオープレー・ピアズレーと云ふ畫人の描く神経的な美人によく似て居るから。

そして僕はオープレーピアズレーが大好きだから。
あなたはほんとに御綺麗ですね。あなたはそして神経質ではありませんか。
どうか神経質になつて下さい。
君は多分私の様な粗野な百姓はおきらひでしやう。

僕だつて君の気に入る人間だとは思つて居ない。
しかし僕はいくら君が僕がきらひでも僕は君の事を思ひつづけますよ一生思つてあげます。

僕はあなたの精神にも肉体にも戀して居ます。
僕と友達になつて呉れないか。
僕は外面的には恐ろしく汚ないが、内心には
君の友人として恥づかしくない実質を有つて居ますよ。
僕の友人になつて僕に君に始終手紙を出したりする自由を許して呉れ給へ。
そうすればどんなに嬉しいでしやう。

あなたはいつまでも子供で居て下さい。僕だつて子供です
一生子供です。

僕は藝術をやるのです。二、三年のうちにはきつと僕の作つた芝居が劇場で演ぜられましやう。(少々怪しい)
その時には一番先にあなたに見て頂だきたい。
ですからその時あなたに招待状をあげる為には
君と早く友人になつて置かなければならないと思
つてこんな下らない事を書いたのだ。
僕は貧乏ですからあなたにささげる眞心
には偽はありませんよ。
僕はつくづく書きながらもあなたの綺麗さを思つて
居ます。
あなたはベルサイユ宮殿に住んでる人か
巴里人か 花火か 絵か 音樂か…何だか知らないが美しい。 ご返事をお閑な時に呉れたまへ
お閑な時でよろしく
      さよなら
稲生きよし様

村山槐多
 
ボードレールやランボーをこよなく愛した彼は詩の評価も高い。絵を描いていたのはわずか5年間だけで、作品の絶対数もかなり少ない。
 そんな彼の作品が渋谷区立松濤美術館でやっているというので、最終日に滑り込みで観に行った。地方に行かないと見れない作品が東京に集まっているので、これは見逃せなかった。スタジオから自転車で15分走っていった。
 槐多の絵はデッサンなど数点を生で見たことがあったけど、代表作となると画集でしかなかった。やはり実物は立体感があり、衝動的な筆遣いが手に取るようにわかって面白かった。
yubari.jpg彼の作品の中でも最も奇妙なもののひとつで、普段は信濃デッサン館にひっそりと飾られている「尿(ゆばり)する裸僧」はインパクト大だった。裸の坊さんが托鉢の中にシャーッと放尿しているという絵。ほんとシャーってかんじの放尿っぷり。彼が執拗にこだわったガランスというあかね色の絵の具がこれでもかというくらい厚塗りされており、とりわけ性器は厚塗りに厚塗りを重ねて強調されている。絵の具がそこだけ盛り上がっている。バックの山は女性器の象徴と評論家は言っているそうだ。
 この絵は彼の死後、60年にもわたって行方不明になっていたらしいが、ある人が追跡して発見した。いやはや何度見ても不思議な絵だ。
 この絵などは描きたいという衝動が先に立ちすぎてしまい、全体的に荒い筆致で、ある意味ヘタウマ的な要素が漂っているが、他のデッサンなどを見ると彼が非常に高度な描写力を持っていたことがわかる。ただ紙一重的な才能がもはや凡人の理解の範疇を超えていることは間違いない。そこが彼の魅力でもある。頭に紙風船をかぶった自画像とかもあるし。ちょっとシュールな表現もある。ヨーロッパの前衛芸術の影響もあるかもしれない。あるいはパンクか。彼のほとばしるアイデアや衝動は今見ても衝撃的だ。まさにアグレッシブで熱い。

唐招提寺

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みなさんあけましておめでとうございます。今年も頑張っていきますのでどうぞよろしく!
年末は大阪で9dwのライブがあったあと、名古屋と大阪で清春さんのライブのお仕事をしてそのまま休暇に突入。生駒へ行く用ができたので、1000年ぶりくらいのオーバーホールが10年越しで終了した天平時代の古い寺、奈良の唐招提寺へオーバーホール・チェックにいってきたわけです。
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3万点に及ぶ部材からなる金堂を創建以来初めて完全分解し、10年がかりで修復・組み直すという偉業を成し遂げた平成の大修理。どうすか、もうすっかり元の状態っすよ。
左の写真がその金堂。人は多かったけど、世界遺産っすよ。中国の高僧・鑑真さんが寺を造り、現在の金堂はそのお弟子さんでソグド人(白人系)の如宝が金堂を造ったといわれている。天平時代に外人さんのお坊さんが日本にいたなんて!(詳細はちょっと前にブログで書いた)。
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鴟尾(しび)は屋根の上にのっかっているしゃちほこみたいな瓦だけど、これまでは片方が天平時代のもので、もう片方が鎌倉時代のもの。今回の改修でどちらもはずされ、平成の鴟尾に交換されたがもう鳩がウンコかけてますぜ。
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 古い建物をばらしてもう一度組み直すのは、新築より何倍も大変らしい。しかし新しい部材は極力使わないのが職人魂ってもんだ。この金具の位置をずらすことになったって、穴はちゃんと別の木で埋めてまでオリジナルの木材にこだわっている。こういうのが随所にある。ちなみに金堂の中にいらっしゃる毘盧遮那仏は現存する最大の脱活乾漆像。そのおとなりが本当に手が1000本ある唯一の千手観音。こちらもオーバーホール。1000年の間に手が950本になっていた。これ、手を全部取って付け直したんだよねー。

しかし、今回の写真は30年前のビンテージレンズをニコンのデジタルカメラに付けて撮影したんだけど、やっぱり色がいいなあ。コクがある。