ROLAND
TR-808

当時の価格 150,000円
中古の相場 13〜18万円
発売年 1981-1984
発音ボイス数
MIDI / CV DIN
レア度 ★★★
ビギナー向き ★★★

info(at)proun.net

 通称「やおや」で知られるこのリズムマシーンは自分で自由自在にパターンが組めるプログラマブル・リズムマシーンとして世界でも最も早くに成功した製品のひとつです。2つのバンクにそれぞれ16種類のパターンが記憶でき、合計32種類パターンが使えます。1つあたりのパターンの分解能は16で、2つのパターンを組み合わせることで分解能32にすることもできます。
 出力はミックスアウトのほか、パラアウトが付いていて、そこから個別に取り出すことができます。サンプリング技術はまだ使われておらず、すべてアナログ的に合成した音のため実際のドラムとはかなり違った音がします。しかしその音の存在感は独特で、キックのアタック感の強さ、余韻のコントロールが可能な点などが重宝がられてきました。
 当初はドラムの代用品といった位置づけだったかもしれませんが、80年代に入ってそのエレクトロニックな質感をフルに活かし、数々のダンスミュージックが登場しました。特にヒップホップでブレイクしてからというもの、中古市場でも値段が急騰しました。
 初期のヒップホップもさることながら、この808を見事に使いこなしていた人たちは80年代に活躍したイギリスなどヨーロッパのニューウェーブ系アーティストです。90年代に入るとクラブ系のアーティストがこぞって使い始めました。

 追記。使い方ですが、リズムのプログラムは音の種類をダイアルで選び、小節単位(通常は1小節が16ステップ)で、発音したいタイミングのボタンを押していくというものです。これはその後のローランド、ボスのリズムマシーンに共通した組み方です。ただしTR-808は、そのパターンを使ってソングを組む場合、パターンを実際に走らせて、リアルタイムにパターンを手動で切り替えていったものを記憶させる方法をとります。このため、あらかじめ曲の構成を練り上げて、何番のパターンをどこに使うのかを紙に書いて決めておく必要があります。レコードモードにしてパターンを走らせ、パターンの切り替わるタイミングで実際にボタンを押すわけですが、少々切り替えのタイミングがずれてもマシンが修正してくれます。ただ、時間がかかるうえ、いったんソングを組んだあとに一部を修正するにもアタマから再生して修正箇所でボタンを押し変えるしかありません。何小節目から何小節目までをコピー/ペーストなんてできればいいのですが...。
 また作ったソングを外に出して保存する方法がありません。なんと刹那的なんでしょう。そんなことにブーブー文句を言う人は買ってはいけない機種です。

またタムとコンガは切り替えで同時に使えないなどいくつかの音色が同時に使用できないものがあるほか、「アクセント」はつまみで決めたぶんだけ通常よりも全体的に音が大きくなるだけで、特定の音だけに効果をかけることはできません。意外と制限が多いのですが、それでも代え難い魅力がこのマシンにはあります。

MIDI改造はKenton社のレトロフィット・キットで現在も可能なようですが国内での調達はちょっと不明です。これならPCの中でパターンが組めますけどね。

 さらに。最近このTR-808のレプリカモデルが発売されました。ドイツのacidlab社のmiamiという機種です。マイアミベースを意識? 実際に実機をいじりましたがなかなかいい音でした。たしかにTR-808。比べないと分からないくらい似てました。