EMSといえばこのAKSが代表選手でしょう。アタッシュケースのフタにあたる部分にプリントタイプの鍵盤が付いています。スピーカーやCVコントロールが可能なスプリングリバーブも内蔵され、オーディオの出力はステレオです。なんと個性的なんでしょうか。
パッチコードを使わず、マトリックス・ピン・ボードでパッチングを行うのはEMSのお家芸ですね。
3VCOで、VCO1はサイン波と鋸歯波、VCO2と3は鋸歯波と矩形波が出せます。VCO3はminimoogのようにLFOに切り替えることが可能ですが、全VCOがLFOに使えるほどの低いレンジまでピッチが可変します。
ノイズ・ジェネレーターはピンク・ノイズからホワイトノイズまでのカラーを連続的に調整可能です。
フィルターは初期モデルが-18dB/octタイプ、後期モデルが-24dB/octタイプで、自己発振します。
エンベロープはADSRと「トラペゾイド」といわれる特殊なタイプのものがついており、これはエンベロープをリピートしてLFOのように繰り返すもののようです(それも単純にではなく)。このトラペゾイド・ジェネレーターのリプロダクション・モデルが現在ではAnalog Systems社からRS-510E EMS SYNTHI Trapezoid Generatorの名前で販売されています。
リングモジュレーターも内蔵されています。
256ステップのデジタルシーケンサーが内蔵されていますが、改造の加えられていないオリジナルのAKSでは外部シーケンサーからのコントロールはやっかいです。CVの入力はありますが、GATEはキーボード用ソケットの5番目のピンから取り出さなければなりません。
定番の改造はコントロール・アウトプット・チャンネルの2番をつぶして5番のピンをここへ内部接続する方法だそうです。
さらにそれができたとしてもCVは0.25V/Oct、または0.33V/Octというこれまた特殊な規格のCVを使っていますので、MIDI to CVコンバーターなどの出力側に調整が必要になるでしょう。より小さな電圧に対してセンシティブにピッチが変化するため、1v/octタイプよりピッチを正確に合わせるのは多少難しくなるかもしれません。しばしばAKSが「ピュイ〜ン!」と飛ばし系サウンドに使われるだけでお茶を濁されるその要因はどうやらここにあります。
|