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EG
Envelope Generator
あらためて説明するなら、シンセサイザーで使われる信号には2種類の信号があります。1つは「コントロール信号」= CVやGATEで、これは電池から出ているような単純な「電気」のことです。この信号はもちろんスピーカーをつなげても音として聞こえるようなものではありません。あくまで装置の動きをコントロールするための信号として扱われます。もうひとつは「オーディオ信号」です。これはVCOから発せられるオシレーターが作り出した耳に聞こえる電気信号で、VCOからVCF、VCAへと流れていく「音」そのものです。これはアンプさえ通せばスピーカーから直接音として聞くことができます。
 EGはコントロール信号であるGATEを受け取り、VCO/VCF/VCAなどをコントロールするためのCVを作り出します。いずれにしてもオーディオ信号を直接取り扱うことはありません。
 EGについてはもう少し詳しくお話ししようと思います。端的に言えば、EGはGATEによって得た鍵盤などのON/OFFのタイミング情報を元に、自動的かつ時間的に変化する電圧カーブを生み出すのが本来の役割です。
 もっとわかりやすくいえば、鍵盤を押した瞬間にEGは動き始め、鍵盤を押し続けている間に決められた電圧変化を起こします。そして鍵盤を放したタイミングからまた新たな電圧カーブが生まれるようにできています。
 この電圧カーブを何に利用するかはユーザーの自由ですが、通常はVCAに送られるのが一般的です。コンパクトなシンセサイザーの場合はVCAとVCFにあらかじめ送られている場合が多く、VCOにも送り込んでいるものもよくあります。
 またEGの作り出す電圧カーブは、ピアノやギターなどの音が持っている自然の物理特性に近い性質を持っていて、音楽的な音を作るのに役に立ちます。
EGのエンベロープ・カーブ(といいます)にはいくつか種類がありますが、ごく一般的に使われるのがADSRタイプというものです。左の図がそれですが、へんな形をした赤い線がさきほどまで説明していた「電圧カーブ=エンベロープ」の変化を表しています。EGからはこんな形の電気信号を出す、ということです。
赤い線は左から右へ時間軸が書かれていて、縦軸が電圧の高さです。
ADSRタイプのEGには通常4つのつまみが付いています。それぞれA、D、S、Rといわれていますが、この4つのつまみで赤い線になっている電圧カーブの形を個別に調整します。4つのうち3つは「時間の長さ」を調整する物で、1つだけ「電圧の高さ」を調整するためのものです。3つと1つはまったくちがうものですが、通常はまるで同じ物のような顔をしてつまみが4つお行儀良く並んでいます(ページ上の写真をご覧下さい)。
ADSRはそれぞれATTACK TIME, DECAY TIME, SUSTAIN LEVEL, RELEASE TIMEというものを意味しています。(これ以降はEGをVCAに接続したとして説明を始めます。意味がわからなくても大丈夫です。)
  • A Attack Time(アタック・タイム)
    アタック・タイムは音の立ち上がりにかかる時間を調整するつまみです。鍵盤を押した瞬間に、キーボードからはGATE信号が発せられ、「鍵盤が押されたよ」ということがEGに伝わります。このGATEを受け取った瞬間に「よっしゃ」といいながら小気味よくEGが発してくれる一番最初の電圧カーブがこのATTACKの部分です。0からスタートしたエンベロープ電圧はシンセサイザーが各自設定している電圧の「最大値」までATTACK TIMEで設定した時間をかけて上っていきます。
    これが「音の立ち上がり」の部分に関する時間の設定になりますが、アタックが早ければ「カツン!」という固い音に、遅ければ「フウォー」という柔らかい音に聞こえます。
    短いアタックと長いアタック
    何度か鍵盤を押しながらアタックを遅くしていった場合。

  • D Decay Time(ディケイ・タイム)
    ディケイとは「減衰」と訳せます。最大値まで上りきったアタックのレベルは次にディケイで設定した時間をかけて、この後に説明が出てくる「サスティンレベル」まで「減衰」します。これは、世の中にある楽器のほとんどが、音の出始め部分に強いアクセントがあって、そのあと次第に減衰していくという物理的な現象をシミュレートしています。Sustainが最大値であればDecayはどんな量になっていおうと意味がなくなります。
    短いディケイと長いディケイ
    何度か鍵盤を押しながらディケイをだんだん長くしていく(若干わかりにくい?)。

  • S Susutain Level(サスティン・レベル)
    サスティン・レベルは基本的に鍵盤を押している間に「持続」する音のレベルを調整するものです。サスティン・レベルをあげれば音は大きな音のまま持続しますし、下げれば小さな音のまま持続します。ただし、音の出始めにはアタック・タイムとディケイ・タイムがはいりますから、サスティン・レベルのレベルで持続するのはそれが終わった後からです。アタック・タイムが終わって音の大きさが最大の10までいくと、今度はディケイで設定した時間を使ってこのサスティン・レベルまでレベルが落ちてきます(ただしこの間鍵盤を押し続けていたとしてです)。ディケイ・タイムが完全に終わってサスティン・レベルに落ちついた音は、それ以降鍵盤が押されている間ずっとそのサスティン・レベルを保ち続けることになります(だからサスティン・タイムというものはありません。鍵盤を押し続けていた時間からアタック・タイムとディケイ・タイムを引いた時間がサスティンタイムになります)。そしてGATE信号から鍵盤が放されたことを知ると(つまり鍵盤から手を離すと)ようやく次のプロセスに入ります。
    でかいサスティンと小さいサスティン

    何度か鍵盤を押しながらサスティンをだんだん大きくしていった。

  • R Release Time(リリース・タイム)
    リリース・タイムはサスティン・レベルから最小レベル(0)までレベルが落ちる時間を調整するつまみです。サスティンが鍵盤を放した時点で終わっているので、リリース・タイムはすでに鍵盤を放した後の処理、ということになります。ピアノなどの音は鍵盤から手を離したあとも幾分か余韻が残ります。この余韻を表現するためにリリース・タイムは設定されます。
    短いリリースと長いリリース
    鍵盤を素早く離すと最初はパツっと切れるが、だんだん余韻が伸びていく様子。

以上で基本的なADSRについての説明は終わりました。EGはたしかにADSRが主流ですが、AR、ADR、DAR(DはDelay Time)、Hold Timeの付いたADSHR、デジタルだともっと複雑なカーブの作れる物もありますので、機会があればそのあたりの情報も追加したいと思います。

まとめ

  • 電気信号にはコントロール信号と耳に聞こえるオーディオ信号がある。
  • EGで一般的なのはADSR方式
  • ADSRのうちADRの3つは時間を調整するつまみだが、Sだけは信号のレベルを調整するもの

では今度は「モジュレーター」と呼ばれる各種回路について説明します。ここをクリックしてください。

機能の説明

MANUAL GATE
このボタンを押すとそれがトリガーとなってエンベロープカーブが出力される。

ATTACK TIME / DECAY TIME / SUSTAIN LEVEL / RELEASE TIME
説明は本文を参照。

EXT GATE
下のスイッチでEXTを選んだときにここの端子に入れたGATE信号を元にエンベロープが発生。GATE+TRIGとGATEは裏パネルを通してキーボードから入ってくるので、接続は不要。

ENV OUT
エンベロープカーブの出力。同じものが2つ出せるほか、逆相の信号が1つ取り出せる。これはちょっと凝った機種によくある仕様。