シンセ今と昔 シンセの歴史を紹介する連載

Red Bull Music Academyのサイトに僕がシンセの記事を連載しています。 当初は3連載で終了するはずでしたが、思いの外好評ということで、第4弾も書かせていただきました。第4弾はサンプラーの歴史です。もし興味があったら読んでみてください。結構マニアックな話かもしれませんが。 シンセ今と昔: 60年代〜70年代のアナログシンセと音楽 シンセ今と昔 : 80年代前半、デジタル、リズムマシン、そしてMIDIの誕生 シンセ今と昔 : 80年代後半〜現代、デジタル・モデリング〜アナログの復活 シンセ今と昔 : 音を記録するメディア

ARTURIA MINIBRUTE

皆さんこんにちは。ここでは10月15日発売のサウンド&レコーディング・マガジン2012年11月号に掲載しているARTURIA MINIBRUTEで僕がデモンストレーションを披露させてもらったので、誌面では取り上げなかったもう少しマニアックな補足的説明を加えたいと思います。 正直なところソフトシンセのメーカーが作ったハードシンセなんてどうなの? という先入観もちょっとあったんですが、これがいざ触ってみるとこれがすごく良かったわけですよ。端的に言うと、モジュラーシンセのような音がするミニシンセって感じです。6万ちょっとで買えるようなんですが、最初に入ってきた在庫は全部すぐにはけちゃったくらい大人気で、すごく売れているらしいです。 DSI MophoとかMONO lancetDoepfer Dark Energyあたりが競合ってことになると思うんですが、僕はこの3つも大好きで、特にMONO lancetはヴィンテージっぽいところもあるしよかったんですけど、MINIBRUTEは全然違うアプローチで攻めてます。しかもコストパフォーマンスがはんぱないですし、Mophoみたいに作った音をメモリできる機能が必要なければこれはとてもいいです。 1VCO+サブオシレーターという構成のシンセというのは往々にしてシンプルな音しか出ないもので、わりと敬遠している人もいるかもしれませんね。MINIBRUTEはオシレーターの段階でさまざまな倍音のコントロールが出来るパラメーターを用意することによって2VCOなみの分厚さを実現していて、ちょっと今までの1VCOシンセの概念を覆している感じです。1VCOでも物足りなさを感じません。ただ2VCOは2VCOにしかできないこともあるので同じにはならないんですが、この1VCO感はかなりイケているんじゃないでしょうか。 フィルターもいいですよ。詳細は記事を見て欲しいんですが、キレのいいかんじで、アナログらしいかんじがします。ヴィンテージっぽくはないんですが、非常にモダンなサウンドです。かっこいいです。ハイパスとかのききも音楽的です。さすがIRCAMを生んだフランスの感覚というか、変態っぽい感じがあって、ここはアメリカ人の感覚をふんだんに盛り込んだデイブ・スミスのシンセなんかと比べると開放感のベクトルがずいぶん違いますよ。 BruteFactorはKORG MS-20でよくやる、ヘッドホン端子から取り出した音でVCOをモジュレートするテクニックと同じ事をやっているみたいですね。ディストーションのようなきつめの倍音が生まれます。これがあることでこのシンセがとてもアグレッシヴなサウンドを出すシンセだという印象が強く残りますね。ほんわかした音色より、ギラギラした音のほうが面白いです。こういう音はモジュラー・シンセなんかでは作りやすいですが、コンパクトなシンセでは実現できる機種が殆どないので、このMinibruteの個性になっていると思います。 全体的なSNもよくて、音源部分はフルアナログのわりにクリーンな印象があります。どこにも古くささがなく、あいまいな部分がありません。 デモ曲についてですが、今回はリズム以外は全部Minibruteで作って欲しいという編集部さんからのリクエストがあったので、そういう条件で頑張りました。ポリシンセじゃないので、コードで考える曲はちょっとやめようとしたことと、2分くらいの短い曲の中で誌面で説明を入れた機能をひととおり確認できるようにしたかったので、こういう感じになっています。ただありきたりのテクノとかにするのはちょっと嫌だったので、普通じゃない感じにしようと。そしてすこしだけ80s風味は入れてダサかっこいい曲にしたらこんなかんじになっちゃったんです。だから何風みたいな感じはないと思います。しいていうならキャバレー・ヴォルテールみたいなオルタナティブ・ファンクなのかな? ベースは2つの音色が絡み合ってフレーズを作っていて、片方の音色だけしょっちゅう動いている感じになっているので、それで不思議な感じが出てます。時々わざと調性から外れた音を入れるのは僕は大好きなんだけど、それを多用してます。 うわものは思いつくままに乗せていったのでそんなに深くは考えてないんですが、 音色はそれなりに吟味して作りにくそうな音をわざわざ選びました。シーケンサーで鳴らしながら鍵盤を押してベロシティでフィルタ動かしたり。 同じシンセ一台でやるとどうしても同じようなキャラクタになりがちなので結構難しいんですけど、あまりダークな曲を作るのも読者の皆さんにどうかなと思ったので、明るい感じにしちゃいましたがどうでしょうねえ? コメント欄あけときますからなんか感想とか質問とかあったらぜひ書き込んでください。 ちょっと思いついたことをばらばらに書いたので文章にまとまりがないですが、また時間があったら文章を更新します! あ、あと僕が関わっている9dwの音源もsoundcloudで公開しているものがありますからよかったら聴いてくださいね。

Mopho Keyboard

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たまには老舗のシンセサイザーサイトらしい情報でも書いてみようかな(笑)
DSIから4月中旬にリリースされる予定のMophoのキーボード版。鍵盤がついているだけじゃなくてつまみがいっぱい増えていることのほうが画期的ですな。エンベロープをVCO、CVF、VCAごとに切り替えられる点や、オシレーターの波形がとても細かく選べる点、基本を押さえながらも少ないつまみで最大限のことをやらせようという工夫はさすがアナログシンセを知り尽くしたデイブ・スミスのなせる技。
 国内のメーカーがこのような魅力的なアナログ・シンセに手を出さなくなったのにはいくつかの理由があるんだけど、ひとつは安い値段でできないことと、故障したときのケアがややこしいこと。部品点数が増えるので製造も大変だし。
 しかも本物のアナログが持っている音の雰囲気よりもお手軽感を求めている人のほうが数としては圧倒的に多い。量を売らなければいけない大企業には手を出せない。
 とはいえシンセというものは結局のところスペックよりも出音の良さが最も重要だ。これは確信を持って言える! 多機能なほうがウケがいいのは分かっているけど、どんなに機能が少なくても音がいい製品は長く残っていく。しかし国内のメーカーにとっては残念ながら長く残る製品よりもすぐ売れる製品のほうが作りたいという現実がある。これはいたしかたないと思う。今ハードウエアは売れないから食べていくのに必死なのだ。そこを理解してあげなければならない。
 買い手側と作り手側の間にいつも感じる若干の温度差というものは、結局そこから来ているんだと思う。欲しいものを造ってくれていないような気がするのは技術力のせいじゃない。常に企業が生きてくための言い分が音楽というものの間にはさまっている。
 DSIもれっきとした企業ではあるけど規模は国内メーカーに比べると圧倒的に小さい。弱小ゆえに小回りがきくのかもしれないけど、いつも感じる「温度差」をあまり感じさせない製品をリリースしてくれている。つまり僕たちの欲しいものを作ってくれている感じがする。採算がとれているのかどうかは正直わからないんだけど、製品としては間違ったものはだしていない気がする。頑張って欲しいな。

Dave Smith Instrumentsから”TETRA”発売

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 TETRA(製品の表記はTETR4)はmophoの4ボイス版アナログ・シンセサイザー。カーチス社製のアナログフィルターを搭載し、4ボイスはマルチ・ティンバー。ユニゾンでも使えて独立出力も可。ボイスごとにアルペジエイターと16×4のステップシーケンサー付き。大きさからは考えられない充実したスペックだ。
 またボイスごとにDCOが2つとノイズジェネレーターが搭載されており、DCOにはそれぞれサブオシレーターも付いていて、しかもオーディオフィードバックループが効かせられる。これでフルアナログのオーディオ回路。かなりイケてます!

Kenton USB Solo

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本当に久しぶりにMIDI to CV コンバーターの新製品が出た。Kenton USB Solo。なんとUSBインターフェイス。PCとはUSB接続でMIDIを受け取る。V/OctとHz/Vはスイッチ切り替え、16bit DAコンバーターでCVを出力し、Sync24の出力もあって、たとえばCubaseとTR-808のシーケンスを同期させることもできる。反応速度も向上し、価格も130ポンド(約20,500円)とリーズナブル。おひとついかが?

トム・オーバーハイム

 アナログ・シンセサイザーのメーカーとしてmoogと並び賞賛されているOberheimの生みの親、
トム・オーバーハイム氏の連載が日本語で読めます。
 10年以上も前に池袋の楽器フェアの会場でご本人をお見かけしましたが、すぐ横でシンセサイザーをいじり回していた若者たちにもまったく気づかれることなく、代理店の人と話をしていました。すっごくいい人っぽい(笑)

PPG WAVE System Upgradeについて

 80年代の中頃に数年間だけ製造されたドイツのPPG WAVEシリーズは当時はまだ新しい技術だったデジタル方式の音源を搭載したアナログとのハイブリッド・タイプのシンセサイザーでした。当時は200万円以上もする高級機だったこともあって、製造された台数もトータルで1000台ちょっと少量で、そのオペレーティング・システムも非常に手作り感のあるものでした。
 メーカーの倒産後もPPG WAVEシリーズにはいくつかのバグに悩まされ続けましたが、オーナーはもはやその手の問題とは仲良く付き合っていくしかないものと諦めていたものです。
 ところがPPGの倒産から20年近くの年月を経た今、ここにきてそのオペレーティング・システムをバージョンアップさせようと言うプロジェクトが始まっています。ドイツのHermann Seib氏の書いた新しいオペレーティング・システムはウィーンに拠点を置くVirtual Musicから発売されており、これまでのバグの修正はもとより、これまでになかった新機能の追加もおこなわれています。

 従来のPPG WAVEシリーズの最終ROMバージョンはv6.0でしたが、現在Virtual Musicから発売されているものはv8.3。MIDIを搭載したWAVE2.2用、WAVE2.3用、EVU用のものがあります。最近これの2.3用のものを買ってみましたのでちょっとレポートしてみます。

 日本からの購入には申込書をファックスする必要がありましたが、クレジットカードも使えるので問題なく取引ができました(オンラインではできないらしく、それがやや面倒くさい)。ファックスのあと受け付けたというメールが届いて、申込みから1週間ほどするとB5くらいのクッション封筒が送られてきました。中に入っていたのがROM4個と薄いマニュアル1冊のみ。ROMも外国らしく、ほぼむき出しに近い状態で入っていました。これでマニュアルどおりにROMを差し替えればオペレーティング・システムがニュー・バージョンにアップグレードされるというわけです。

 まずこのv8.3と従来のv6.0との違いについてご紹介します。

●Wavetable 13のバグの修正

  PPGのウェーブテーブルの13番のうち、2つの波形が壊れていたというあってはならないようなバグが修正されました。WaveにMIDIを搭載する際にそのコードで上書きされてしまっていたことが理由らしいですが、コードを最適化することによって全体の容量を小さくし、問題を修正するためのスペースを作ったようです。

●Wave2.3のアッパーウェーブの初期化の問題を修正

  Waveシリーズではひとつの音に対してひとつのウェーブテーブルしか使えないのをどうにかしようと、「アッパーウェーブ」と呼ばれるウェーブテーブル領域を用意していました。ところがこのアッパーウェーブは電源を単純に入れただけだと変な音が出るだけでまったく使い物にならなかったのです。ROMのアップグレードなしにこの問題を解決するには、まずウェーブテーブルの30番を選んでから実際のプログラムをロードする必要がありましたが、この初期化の問題を修正しました。

●Wave 2.3を2.2モードで使った際のアルペジエイターの問題を修正

  2.3はディスプレイの”2.3″という数字の”3″にカーソルを合わせて2をタイプすると2.2モードに切り替わりますが、この際にアルペジエイターを使うとでたらめな音が出ていた問題を修正しました。

●フットスイッチでプログラムを切り替える際に0から77までを順に切り替えるよう変更


●シーケンサーのパラメーターTIMCOR:0で1/64ノートにクオンタイズされるように変更


●アルペジエイターSEQM:25がマニュアル通りに動作するように修正


●MIDIシステムエクスルーシヴの送信に対応

  これによって内部のプログラムをMIDI SysExではき出させることが可能になりました。カセット・インターフェイスの設定において、CASS 6でSend All Data、CASS 7でSend All Program Data、CASS 8でSend All DRS Dataができます。
 またPPG BusをMIDI経由でエミュレーション可能になったことで、現在開発を進められているWaveterm CやSoundDiverなどのアプリケーションとの接続によってウェーブテーブルの書き換えがMIDI経由でできることも現実に近づいてきました(MIDIインプリメンテーション・チャートが付いていますのであとはプログラム次第です)。

●MIDI受信のプロセス・スピードが向上

  これはすごいことです。これまでMIDIを使うとなんだかノリが変わると感じていた人には朗報です。プログラムを最適化することで実現しました。

●モジュレーション・ホイールの位置が数値でディスプレイに表示されるようになった

  これまでモジュレーション・ホイールの位置はプログラムと一緒に保存されていましたが、どの辺に位置しているのかをあとで数値で確認する方法はありませんでした。v8.3ではディスプレイの空きスペースに数値でリアルタイムで表示されるようになりました。これがつくことで我が家ののWave2.3はモジュレーション・ホイールを上げても数値のMAXまで出し切っていなかったことが発覚しました(これはいずれ直さなくては!)。

●電源を立ちあげたときにオペレーティング・システムのバージョンとシリアル番号を表示

 1つ1つにシリアル番号をふっているみたいです。

ざっとマニュアルに紹介されている主な変更点を列挙してみましたが、僕もまだ全ての機能を試していないので詳細はこのくらいにしておきます。

 さてインストールですが、これはPPGのパネルをあけて、中から基盤を取りだし、ROM抜きの工具でROMをソケットからはずし、新しいROMに差し替えるという作業をやります。抜かなければいけないROMは4つですが、これにほかのROMが隣接していてROM抜き工具のツメの先が入る隙間がなく、なかなか苦労しました。工具の先の引っかけるツメ部分の長さはメーカーによってまちまちですが、PPGにはなるだけ短いものを選ぶべきだと思います。ちなみにうちにあるのはツメが3mmで、これだと工具を全開にしてツメの片側だけを斜めからROMの隙間に潜り込ませないと入りませんでした。

 送料含めても1万円しないくらいでお手持ちのWaveがこんなによくなるなら買わなきゃ損!って感じです。みなさんもぜひトライしてみてください。ROM交換にはリスクがつきものですがおすすめします。

AKAI MPCシリーズの外部同期

AKAI MPCシリーズはかのLinn Drumの生みの親であるロジャー・リンがデザインしたMPC60からスタートした、ドラム・サンプラー型ワークステーションですが、ソフトシンセが主流の世の中に、これだけ健闘しているのは賞賛に値します。それだけ使いやすいということなんでしょうね。
 MPC-2000のサウンドはややレンジが狭くヌケの悪さは気になるけれども最新機種はそのあたりもずいぶん改善されてきました。古いものがいいという人もいます。
 ところがこのMPCシリーズ、同期というものが非常に苦手らしく、スタジオでいろんなトラブルに見舞われることがあります。個体差なのか、ファームウエアのバージョンのせいなのか、うまくいく時といかない時があったりしてやっかいです。たいていのトラブルは同期したときのMIDIの揺れ、あるいは同期がひっかからないという問題です。経験的に感じ得たトラブルシューティングを箇条書きします。

MPCシリーズにはMIDI INが2つありますが、MTC(MIDI TIMECODE)で同期させるときは”MIDI IN 2″に差したほうがスムースにいくことが多い気がする。

SMPTEオプションが付いているならMTCよりそっちで同期させたほうが正確。

MIDI CLOCKでの同期は手軽だけどやめたほうが無難(ノリがかわってしまう)。

同期を取りながら録音する場合、助走するために曲のアタマに4小節くらいの空白を付けること(2小節くらいあれば同期はなんとかついてくるけれども、3小節目のアタマあたりが若干ずれてしまうことがある。それもケース・バイ・ケース)。

MPC-2000ユーザーはタイムコードのオフセットの設定方法を知らない人が多いですが、Song Screen→NOWフィールド→[Open Window]で設定画面が出ます。

同期のスレーブにするときにはプレイボタンを押す必要はありません。
うまくいくときは何の問題もなかったりするんですが、何か僕も知らない情報があれば知らせていただければと思います。