下戸遺伝子

 自慢にもならないけど、僕は基本的に酒が全然飲めない人間なのです。「飲まない」と「飲めない」は全然違うわけですが、僕の場合は「飲めない」というタイプのほうだと思います。どういう感じかというと、ビールはコップ一杯がいいところ。基本的に苦いもの好きなのでビールの味は大好きだし、他の酒も大好きなので、結構飲めれば飲んでいたかも知れないけど、まー飲めないわけです。
 今から3万年ほど前に中国大陸のどこかでアルコール代謝物アセトアルデヒド(毒性強い)を酢酸に分解する酵素を作り出す遺伝子に突然変異が起きた人が生まれ、その遺伝子がどんどん広がっていきました。白人や黒人には見られない、モンゴロイド系民族だけに見られる酵素欠損型遺伝子は、中国内陸部では1〜2割の人が持っているそうです。僕もその遺伝子を持っているということです。先祖は遠いどこかで大陸につながっているということなんでしょうね。というか、日本人なら誰でも大陸に先祖を持っているんでしょうけど。
 日本ではこの酵素欠損型遺伝子を持っている人が一番多く分布しているのは関西地方で、そこから東西に離れれば離れるほどこの遺伝子を持っている人は少なくなっていくそうです(沖縄とか東北にはお酒の強い人が多いですよねー)。
 これは朝鮮半島や中国大陸から渡ってきた渡来人が支配していた大和朝廷が関西にあったことと深く関係しているらしく、つまりそのへんで「混血」がおこったわけです。北方民族だった弥生人の特徴を色濃く持った僕の体は(しかも関西出身で…)、もろにこの先祖を持つ典型と考えて良さそうです。渡来人との混血によって日本人の遺伝子にもこの「下戸遺伝子」が現れ、僕のようにアルコールを受け付けないかわいそうな人たちが生まれる羽目に…。
 ヤマタノオロチ伝説は大蛇に見立てた渡来人の襲来をヤマト民族が酒を飲ませて退治した話だという説がありますが、やっぱりヤマタノオロチも僕と同じ酵素欠損型遺伝子を持っていたんでしょうねー。

 ちょっと話はそれますが、邪馬台国の「邪馬台」って皆さんは学校で「ヤマタイ」と読むように教わりませんでしたか? でもこれを「ヤマト」と読む説は以前から多くあるんですよ。学校では教えてくれませんけど。
 邪馬台国の話の200年後ぐらいには「ヤマト」と名乗る場所が都市になっていたわけですから、これを「ヤマト」と読んで「何か関係があるのかなあ」と考えるのが普通と言えば普通でしょうけど、あえてこれを「ヤマト」と読んでこなかったところに過去の日本古代史の学者達の作為を感じます。これをヤマトと読んでしまうということは、要するに邪馬台国九州説が大きく後退することを意味するからです。
 「ヤマト」の「ヤマ」は山の意味で、「ト」は「瀬戸」の「戸」や河戸の「戸」と同じ意味だとする説があります。奈良以外に九州にも「山門」という古い地名があって、ここが邪馬台国の候補地にもなっているわけですが、山があるところに「ヤマト」という地名を付けて読んでいたのが当時のよくある習わしで、それが地名として残ったとするなら、九州にも奈良にもヤマトがあるのは特に不思議はないような気が僕個人としてはします。もちろん僕は大学に行ってこういうこと研究したんじゃなくってただ本を読んでいるだけなんですけどね。あんまり本気にしないでくださいよ、素人の言っていることを。
 でも日本語のルーツって面白いですよね。そこに一番興味があったりして。

追伸。
 僕が弥生人の特徴を色濃く持っていると書きましたが、現代の日本人はもともと日本に住んでいた縄文人と大陸から渡ってきた弥生人の混血なのですが、どちらかの特徴が色濃く出てしまう人も結構いるみたいです。僕がそれ。
 弥生人は元々北方民族で、寒い地方で暮らすために有利な特徴を備えています。身長は縄文人より高めだけど、顔の骨格は細長く目は一重で鼻も低く出っ張りが少ない醤油顔。歯が大きく前歯がシャベル状。耳垢は乾燥しているんだそうです。全部僕だ(笑)。手足も短いのは日本人の殆どの人が持っている特徴ですね。でも僕は天パで、これは弥生人の特徴じゃない。どっかから来た別の遺伝子でしょうか。
 一方縄文人は背はやや低め。顔面の骨格はがっしりしていて、毛深い。いわゆるソース顔で濃い顔。歯が小さく、耳垢は湿っています。今風な感覚で言えば縄文人のほうがモテるかも。遺伝学的には弥生人も縄文人もほぼ同じなんだそうですが、見た目が違う以上、何か違いはあるんでしょうね。優劣とかじゃなく。さてみなさんはどっちですか?

さらに追記。
 2001年のDNA調査によると、縄文人の直接的な祖先はバイカル湖畔に住むブリヤート人というモンゴロイド系の民族だった可能性が高いことがわかりました。これまで言われてきた、縄文人は南方系、弥生人は北方系という分け方は正しくなく、どちらも北東ユーラシアから入ってきたとするのが最新の結論。もちろんいろんなところから様々な民族が流入してきた日本においては祖先を一つに絞り込むこと自体ナンセンスだと言えると思いますが、ブリヤート人との共通点は意外というか、事実としてそれはあるんでしょうけど、ブリヤート人のDNAを受け継ぐ民族は中国や朝鮮半島にもたくさんいることでしょうから、特に驚くことではないのかも知れませんね。ちなみに耳垢が乾燥しているのもこのブリヤート人が持つ突然変異の遺伝子と関係があるのだそうです。しっかり僕が受け継がせていただいています。

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