データのバックアップ

たまったデータ、焼いてますか?

 DAWで音楽を制作した場合、マスターテープはそのセッションファイルと言うことになります。ちょっとしたトラックを重ねていけば1曲のサイズが3GBくらいいっちゃうことなんてよくある話で、ドラムとか録音すれば10GBなんてことにもなりかねません。最近のハードディスクは最低でも320GBくらいはありますが、100曲でいっぱいになるとなればさほど大きなサイズとも言えないのではないでしょうか。
 そこでもう使わないけど保存しておきたいデータは徐々にバックアップしてハードディスクから消していくという作業になりますが、みなさんはどうしているでしょうか?

ハードディスク

 バックアップなんてとらずにハードディスクが一杯になったら新しいハードディスクを買う! そんな人は結構多いです。最近のドライブは一昔前から比べると格段に信頼性も上がっていて、そのまま置いていても壊れることは少なくなりました。価格も安くなり、メガバイトあたりのコストは一番安いのが何を隠そうハードディスクです。でも飛んだ時はデータが全滅するリスクを背負っています。これはある意味賭けです。

DVD-R

 ごく一般的なのはDVD-Rに残すという方法です。4.7GBで100円もしないし、ドライブもMacやPCに付いているか、あとから買っても1万円台。書き込みも速い。これは使えるメディアです。
 しかし欠点もあります。まず長期保存に不安が残ること。もともと光に反応する有機的な色素がベースになっているため、光学メディアは保存の仕方が悪ければどんどん劣化していきます。たいしたデータじゃなければ問題ありませんが、確実に保存する方法としては心許ないメディアかもしれません。
 もう一つは大きさ。「1枚に4.7GBも入る」という言い方もできますが、「4.7GBしか入らない」という言い方もできます。1枚に数曲分のセッションしか入りませんのでアルバム1枚分を1枚に納めるのは無理で、データを複数枚に渡らせる上、DVD-Rが100枚にもなると結構な量になります。増えれば今度は欲しいデータを探すのに苦労します。

DDS

 データ専用の4mmDATテープカートリッジを使い、データをバックアップする規格で、DDS専用のドライブが必要になります。メディアの見た目はDATと全く同じなためコンパクトで比較的大容量のデータを収納できます。歴史も古く、磁気テープというメディアの性質に不安を持たれる方も多いかも知れませんが、案外安定していてDVD-Rなんかよりもむしろ信用できると思います。
 DDSには容量の小さい方からDDS1,DDS2,DDS3,DDS4,DDS5,DDS6と6種類あり、ドライブは上位互換になっていて、カートリッジの種類がそれぞれ違います(見た目は同じ)。
 問題はドライブ本体のコストで、DDS6のドライブを新品で買うと15万円とかしちゃいます。もともとサーバーで使われる業務用の規格なのでそうなっているのですが、実は中古になるととたんに安くなります。ネットオークションではDDS4の中古外付ドライブが6000円くらいです。世の中的には既に時代遅れと言われているDDS4ですが、僕はドライブとメディアのコストパフォーマンス(CP)からDDS4が今でも大本命だと思っています。メディア1本で20GB(非圧縮)とれて価格は安ければ800円くらい(カメラ量販店だと1300円くらい)。DDS5はメディアの価格はが倍ですが、容量は倍とはならず、36GB程度。ドライブは外付けの中古で15000円前後といったところでしょうか。DDS6は正直なところ、音楽で使うにはCP面からも躊躇します。
 難点はDDSドライブの接続フォーマットが基本的にSCSIだけだということです。最近USB2.0で動作するものも発売されましたが、中古では出回らないので実質的に使えません。今でもSCSIカードをPCに差している人なら問題はないでしょうが、今時SCSIを好きこのんで使う理由もほとんどなくなってきました。そこでSCSIをFireWireに変換してみようとする僕の試みについてちょっと書かせてください。

DDSでバックアップを取る方法(FireWire / IEEE1394編)

 日本のラトック社が出しているFireRex1は僕の知る限り唯一の、UltraSCSI機器をFireWire接続させてくれる変換器です。発売から何年も経ちますがまだまだ現行機種で、古いSCSI機器を現代のMacやPCで動かすためにはなくてはならない装置です。
 これを使えばDDSドライブをSCSIのないMacintosh G4などで動作させることが可能ではないかということで、最近うちでもテストを始めました。
 基本的にDDS3までは50pinですが、DDS4以上は68pinのUltraWideSCSI仕様です。SCSIも上位互換規格のため、68pinを50pinに変換するアダプタさえあればUltraSCSI対応のFireRex1を使うことはできるはずです。
 しかしFireRex1を使うにはまずドライブが対応しているかどうか確認が必要です。対応表に乗ってない機種はだめかというとそういうわけでもなさそうですが、後述するとおり、何かときをつけなければならないこともあります。
 まずOSXもWIndowsXPでさえもOSでDDSドライブをサポートしていないため、ドライブを動かすためのソフトが必要です。Windowsではいくつか選択肢がありますが、Macだと選択肢はぐっと狭まります。事実上EMC Retrospect Backup 6.1が標準で、ラトックのサポートの方から教えてもらったBRU LE(ブルLE)for Mac OSXという手が若干残されている程度です。
 Retrospectは対応ドライブが非常に多く、インターフェイスも洗練されていますので何も問題が起きなければオススメできるソフトです。差分バックアップができるので、バックアップ後にセッションファイルに手を加えてオーディオトラックが増えたとしても、再度同じテープにバックアップすれば、増えたり変更した分だけバックアップしてくれます。
 BRU LEは若干価格が高く、インターフェイスもMacらしくないのですが、操作は簡単です(デモ版でしか使ったことがない)。
 DDSのもう一ついいところは、DVD-Rと違ってメディアの交換回数が少なくてすむので夜中に回しっぱなしで寝ることができるということです。バックアップが終了するとコンピュータを終了させることもソフトでできます。DDS4でだいたい120〜140MB/分くらいのスピードでバックアップがとれますので検証なしなら1本3時間程度。スピードの面ではDVD-Rに劣っているでしょうけど、ほったらかしにできるというのは魅力じゃありませんか?
 ちなみにDDS4はドライブ本体にファイルを圧縮するハードウエアエンジンを搭載していますが、本来であればこの機能を使うとファイルサイズが半分になり、1本に40GB分を記録できます。しかし残念なことにオーディオファイルはデータの性質上圧縮しても殆ど小さくならず、20GBのままです。
 話は戻ってFireRex1ですが、僕のテストでは時々不安定になることがあり、その問題の大半がFireWire400と800の混在であったことが判明しました(前日の記事を参照)。SCSIを使った方が安定しているようではありますが、FireWireでのテストもさらに重ねてまた報告したいと思います。

LTO(Ultrium)

 DDS4を中古で買えという話ついでにいうと、もうひとつ気になる規格があります。Ultrium(ウルトリウム)という名前で呼ばれている、これまたサーバーのバックアップ専用マシンの規格です。LTO1、LTO2、LTO3、LTO4とあるのですが、一昔前のLTO2でも1本のメディアに非圧縮で200GBも入り、メディアの価格も5000円程度です(LTO3なら400GBで1万円程度のカートリッジが使えます)。ランニングコストはDDS4やDVD-Rより上です。専用のテープカートリッジを使いますが、信頼性も非常に高く、安心してバックアップできます。
 問題はドライブが高いことです。しかしLTO2なら既に十分「型落ち」ですので、外付けドライブでも運が良ければ3万円程度で買える可能性もあります。ただしまたこれもSCSIなんです。DDS同様対策が必要です。ちなみにRetrospectはUltriumドライブにもかなり対応しています。興味があったら調べてみてください。

Blu-Ray

 最近DVD-HDに勝利したBlu-Rayですが、ドライブの価格が安い物で4〜5万円、メディアが1層で25GB記録でき、量販店で1500円程度です。ドライブがやや高めですが、ランニングコストはDDS4とさほど変わらず、ドライブの価格が下がってくればDDS4よりCPが高くなることは必至です。

以上、長々とバックアップのフォーマットについてふれてみましたが、なにげにDDS4は安くていいなというのが今のところの僕の結論です。ですが、1年もしない間に事態が変わる可能性はあります。それがこのバックアップ業界の宿命なのです。

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